ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Jason Eady ジェイソン・エディ - When The Money's All Gone

2009-12-13 | カントリー(男性)
 たまたまネットのストリーミングでキャッチしたアコースティック・バラード"Maybe I'll Stay A While"の素晴らしさで、心に引っかかったジェイソン・エディをご紹介します。メインストリーム・シーンとは無縁でも、独自の素晴らしい音楽文化を形成している事で知られるテキサスの、全くのローカル・シンガーと言って良いでしょう。その、ゴスペルを中心としたアメリカ南部音楽を消化しきった深い音作りと、ジェイソン自身の温かく人間味あふれるバリトンボイスは、アメリカのローカルシーンの素晴らしさを改めて感じさせてくれ、アメリカン・ミュージックの底知れぬ層の厚さを教えてくれます。

                    

 カントリーのみならず、ブラック寄りのブルース、サザン・ソウル・ミュージックの影響も大の人のようで、そこらを本物感あふれるギター・アンサンブルで聴かせるのが、ここでの彼の個性。その歌声のチョッぴりぶっきらぼうな節回しからも、ブラック・フリークらしさが感じられます。「サザン・ソウル、白人が歌ったらカントリー」って言葉がありますが、確かにそんなイメージも感じさせるナンバーも聴けますね。そしてもちろん、そのルーツであるゴスペルへの愛情が深い事は容易に想像されるわけで、アルバム・ジャケットの片田舎の寂しげなモノクロ写真に写る電柱は、”十字架”を意識している筈です。

 オープニングのシャッフル、"God Fearing Blues"からゴスペル色が濃厚、オルガン風キーボードやエモーショナルなクワイア・コーラスが、ジェイソンの軽やかなバリトンを盛り立てます。ブルース・ハープも入って、実にダウンホームな音世界。終盤、一旦曲はブレイクし、エンディングはテンポアップのゴスペル・ストンプで締めてくれます。タイトルがゴスペルそのものの"Judgment Day"、曲調はブルージーなジャンプ・ナンバーです。コクのあるギター・ストロークを中心に、バンジョーやアコーディオンも加わって、ガッチリと一体感に満ちたバンド・サウンドが迫力。タイトル曲の"When The Money's All Gone"は、ギター・サウンドがよりソリッドでタイトになるブルース・ロック。ジェイソンのボーカルが泥臭く迫り、同じくテキサスの伝説的ブルースマン、ライトニン・ホプキンスのよう。



 "Cry Pretty" (Kevin Welchがコーラスで客演しています)

 やはり聴きモノはスロー・ナンバーですね。プロデューサーで自身のレコードも多数リリースしているKevin Welchの元に集まったミュージシャンによる、深みと洞察力にあふれた素晴らしい演奏に引き込まれます。サザン・ソウル風のディープなスロー"Cry Pretty"は心に訴えかける佳曲。隙間のあるバンド・アンサンブルを彩る、甘さと強さの同居したソウル・ギターのフレーズと、憂いに満ちたジェイソンのボーカルが、文字通り泣かせてくれます。一方、ゴスペル・スロー的な" Everything's Gonna Be Fine"は、ピアノの美しい響きと、粘着力のあるワイルドなギター・コードのミックスが、ユッタリと大きいグルーブを生み出している、私お気に入りのナンバーです。

                    

 生粋のカントリー・ファンにお勧めは、やはり"Maybe I'll Stay A While"。かつて分かれた女性を思い返しながら何年もさすらいの人生を送り、少し疲れた主人公が、しばしの休息を望む気持ちが歌われます。アコースティック・ギターの爪弾きとハンド・ドラム、ベースを主体としたひっそりとしたサウンドと、ジェイソンのため息のような柔らかい歌声が心に染みる逸品です。ここでも所々で聴ける気の利いたアコーディオンのフレーズが、このシンプルなナンバーに唯一無二の質感を与えています。本当に素晴らしい。一つ前の"Promises in Pieces"も豊かにこだまするペダル・スティールやフィドルの響きがのどかに郷愁をさそうカントリー・ソング。これらアルバム終盤の2曲には、テキサスの良心が凝縮されており、聴き手に至福の時を提供してくれるのです。

 ●こちらのジェイソンのHPで全曲聴けます


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