Jypsi (ジプシー) 「Jypsi」

　メジャーArista Nashvilleから、Dixie Chicksなどで知られるBlake Chanceyのプロデュースで、本国でもまずはダウンロード・オンリーでデビューしたJypsi(だから、まだ日本ではCDは売っていません)。１６歳から２６歳までの３人姉妹と男一人の４人兄弟です。まずは、その風変わりというかカントリー・フィールドの常識からすると過激ともいえるファッションで目を引きます。たいがいのカントリー・シンガーのようなカジュアル系ではなく、オートクチュール風だのサイケデリック風だのの派手なファションでキメ込んでいるのです。その彼らの繰り出すサウンドは、３姉妹Lillie Mae、Amber-Dawn、Scarlettによるツイン・フィドルとマンドリンをフィーチャーしたルーツ志向でアコースティック感タップリのポップ・カントリー。プリミティブな編成ではあるものの、ソリッドなエレクトリック・ギターも加わって、ルックス共々なかなかに華やかな質感で、２１世紀のチョッピリとがったグッドなカントリー・サウンドを展開してくれています。メインストリーム・カントリーが時に”産業的”になってる事に対する、アンチテーゼ。こんな若手に頑張って欲しいですね。

　

　ここに収められた１１曲、楽しさと勢いに満ちて、楽曲も変化に富んでおりダレるところがありません。その中でも一番の聴きモノは、ミディアム・スローの"I Don't Love You Like That"でしょう。Jypsiらしい華やかなアコースティック・サウンドが凝縮された逸品です。Lillie Maeのリード・ボーカルが、適度な憂いを帯びつつもカントリー的な粘り腰が少なく、哀愁を帯びたメロディをサラリと歌いこなします。ケイジャン風フィドルがフィーチャされた"Shame on Me"もナイス。姉妹が主体のハーモニーが小粋でスムースなところもJypsiサウンドのポイントでしょう。"Stray Dogs and Alley Cats "は珍しくFrankがリード・ボーカル、軽くフレッシュな歌声を聴かせてくれます。アニマルズで有名な"House of the Rising Sun"では、コーラスもブルーグラス風になり幾分ルーツ志向が強まりますが、けして重すぎずシットリとした、彼らの個性を出し切ったカバーと思います。ラストは、Dixie Chicksがライブでやっていたような、パワー・ブルーグラス・インスト"Kandi Kitchen"。Jypsiの根っこには、きっちりブルーグラスが横たわっている事が披露されてアルバムは幕を閉じます。

　彼らにカバーしたい曲を尋ねると、こんな答えが。Frank「デル・シャノンの"Runaway"かフランク・シナトラの"In the Wee Small House of the Morning"かな」　Lillie Mae「それ綺麗な曲よね、それと、(シナトラの)"I Get Along Without You Very Well"ね」　う～ん、なかなか一筋縄ではいかないカントリー・グループ、今後が楽しみです。

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