★2021年の新作「 Country Again: Side A」を取り上げました★
トーマス・レットの「Life Changes」に続く、2019年の4作
目。早くに公表されていたイメージ画像やジャケットから、落
ち着いた感じになるのかしら、と思いきや、そこはクロスオー
バーも狙えるスター。弾むようなポップ・ソングがたっぷり
詰まっています。
ただし、前作「Life Changes」とはまた違ったイメージが冒
頭から展開、彼お得意のR&B的グルーブがフィーチャされて
いるのです。オープニングの"Up"は、ホーン・セクションが
アクセントを付ける、サザン・ソウル~コンテンポラリー・
ゴスペル調で華やかに景気づけます。”落ち込んだ事が無かっ
たら、決して良くなることもないよ(落ち込んでもへこたれ
ないで・・・)”と、おなじみの軽やかなテナー・ボイスで歌
われる歌詞もゴスペル的です。
続く"Don't Threaten Me with a Good Time"は、リトル・
ビッグ・タウンをゲストに迎え、さらにテンポ・アップ。リ
ズムはよりソウルフルにウネリます。"Blessed"は、ズバリ、
ここでもホーンがサウンドの要となる3連のサザン・ソウル・
バラード。トーマスの歌声も曲が進むにつれエモーショナル
になり、ブレイクではファルセットも聴かせてくれます。こ
れらの、カラッと明るく少し緩めな南部サウンドに、80年代
のマラコ・レーベル(Z・Z・ヒル、ジョニー・テイラー等)の
音が思い出されました。
サザン・ソウル風はこのあたりまでで、以降は"VHS"のよう
な、幾分アーバンなブラコン(ブラック・コンテンポラリー、
今使うのかな?)風やAOR調ポップ曲が並びます。そんな
中で、ケルシー・バレリーニをゲストに迎えたタイトル曲
"Center Point Road"はハイライトですね。ボレロっぽいリ
ズム・パターンを基調とするスロー・バラードで、トーマス
が少年期を過ごしたナッシュビルの通りの名前をモチーフに、
もう戻れないかつての青春の日々への回想がドラマチックに
歌われます。
そして対極のハイライトというべきが、素朴なカントリー・
ソングの"That Old Truck"。タイトルからして、ずばり、カ
ントリー・ソング定番中の定番テーマであり、南部人共有の
シンボル・イメージです。”その中で育ち、その中で立ち往生
したんだ・・・その中で失恋し、そして恋にも落ちた・・・
僕は自分が誰なのかを学んだんだ、その古いトラックの中で"
シンプルなメロディと穏やかなギター・サウンド、そして想
定通りのストーリーの流れ。そんな中ににじみ出る歌い手の個
性を楽しむのがカントリーです。トーマス待望のカントリー・
ソングといえますね。ブラッド・ペイズリーをさらにまろやか
にしたような、心地よいテナー・ボイスが堪能できます。
CMA Fest 2019でJon Pardiと“Beer Can’t Fix”を共演。
クロージングの"Almost"も、長年のカントリー・ファンとし
ては、親しみやすい(幾分アリーナ向きの)カントリー曲で
す。この「Center Point Road」は、R&Bフリークのトーマ
スなりに、アメリカ南部音楽の様々な要素をショーケースしよ
うとしたアルバムと言えるのではないでしょうか。彼がさらに
その地位を高める為の、具体的に言うと、CMAアワードの男性
ボーカリスト賞を獲得するための、重要なステップとなる作品
となるでしょう。
"Remember You Young" のビデオ
若手の中で光っていてビッグスターになると思っていましたがヒットが続かなかったです。
"That Ain't My Truck"