ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Tift Merritt(ティフト・メリット) 「Another Country」

2008-05-19 | カントリー(女性)
 これは実にナチュラルで手作り間溢れる、Tift Merrittの素晴らしくジェントルなアコースティック・ミュージック集です。チャートを賑わすようなメインストリーム系の聴き手に媚びる音ではないので、だからややもすると淡白な印象をもたれがちかもしれませんが、聴きこむほどにジワジワと魅力が伝わってくるもの。彼女の声は透き通ったソプラノ・ボイスで、とても繊細で内省的ながら、ジャケットのイメージのような暖かみを感じます。

 

 木漏れ日のように快適なギター・アンサンブルのイントロでスタートする"Something to Me"がまず印象的、アルバム全体のカラーを予告します。その飾り気のないサウンドと、ささやくような歌声のマッチングが見事で、とてもストレス・フリーな空気を提供してくれるのです。より素朴な小品"Hopes Too High""Keep You Happy"はその極地。このアルバムの製作前はパリに滞在していたようで、そう言われてみれば、少しフレンチ風のアンニュイなテイストも感じるような。彼女自身もパリでの滞在の影響が大きかったことを語っていて、タイトル曲のピアノ・バラード"Another Country"や、フランス語で歌われる"Mille Tendresses"、そしてパーソナルな心情を歌う、コーラスのメロディがグッドなミディアム"I Know What I'm Looking for Now"あたりによくに現れているようです。メロディと言えば、同じくミディアムの"Broken"なども、なかなかにキャッチーでキュートなメロディで印象に残る曲の一つです。良いメロディ・センスを持ってますね。

 

 このレコード・レーベルFantasyは、かつてメンフィス・ソウルの伝説的レーベル、スタックスの名作群をリイシューしていた会社との印象が私には強いんです。なるほどTiftの前作「Tambourine」ではその手のサウンドをフィーチャーしていて、今作でもジャンプ・ナンバー"Tell Me Something True"などにその名残を見る事が出来ます。ここでは小気味良いホーン・セクションがフィーチャーされ、往時のソウル・サウンドを忠実に再現。スローの"Morning Is My Destination"もタメのあるドラムとゴスペル調のキーボードをフィーチャーしたダウン・ホームなソウル・バラード。そのソプラノ・ボイスには深く沈みこむ魂を感じます。アルバム全体を通じて、Charlie Sexton(懐かしい!80年代のニュー・ウェイブ・ロッカー。"Beat's So Lonely"がヒット)が抑制を効かせた滋味に溢れたギターを聴かせてくれているのが、オールド・ロック・ファンにはちょっとした発見です。唯一例外が"My Heart Is Free"で、ここでは適度に歪んだエモーショナルなギター・サウンドが展開しています。

 
 Charlie Sexton

 1975年テキサス州はHouston生まれ。しかし幼い頃にノース・カロライナ州に移住し、今に到ります。父は若い頃フォーク・ミュージックで活動していた人で、その父からハーモニーを学びました。この世代なので、パンクやインディー・ロックに興味を持ちつつも、アコースティックを基調とするアーティスト、特にジョニ・ミッチェルに影響を受けます。さらに、エミルー・ハリスを聴いた事により、よりルーツ志向を深めていくのです。ノース・カロライナでのバンド活動で徐々にローカル・レベルの認知度が上がって行き、 Sugar Hillレーベルとの契約が失敗に終る不運もあったものの、最終的にLost Highwayと契約。これは2000年の Merlefest Music Festivalでのソングライター・コンテストで優勝した事が功を奏したようです。今回の「Another Country」も含め、3枚のアルバムをリリースしており、批評家筋からは常に安定した賞賛を獲得しています。

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