ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Mark Chesnutt(マーク・チェスナット) ~ 祝!Country Gold来日

2007-09-16 | カントリー(男性)
 熊本でのカントリー・ゴールド(10月21日、会場は恒例の阿蘇アスペクタ)が近づいてきました。今年のHeadlinerは90年代のカントリー・ヒーロー、そして今も真のホンキー・トンク・スタイル ~ロカビリーやロックンロールの起源となった、エレクトリック・ギターとドラムをバックに据えたシンプルなバンド形態のカントリー・ミュージック~ を大切に守り、現在まで絶え間なくアルバムをリリースし続けるたくましい生命力と変わらぬカントリー・ヴォイスが感動的なマーク・チェスナット(Mark Chesnutt)です。確かにもうヒット・チャートの最前線に出る人ではありませんが、この音楽スタイルがカントリー・ミュージックの基本プラットフォームとして今も、そして変わらず生き続けるものであり、Markの歌声を求めている根強いファン層が確実に存在しているという事が彼の活動を通じて理解できます。チャーリー・永谷さん、ご苦労も多いと思いますが、いつも絶妙なアーティストを呼んでいただいて、本当にありがたいです。でも、熊本で日曜夜、今年も行けない・・・・2000年、Bradを見たっきりです。

 
 「Almost Goodbye」

 Markがデビューした1990年といえばニュー・トラディショナル/ホンキー・トンク・リバイバルの最盛期。Billy Ray Cyrus(カッコ良かった"Achy, Breaky Heart")の出現はもう少し先でビートが強調され出す前の、カントリーらしいカントリーが当たり前に聴けた時代。私は3rd アルバム「Almost Goodbye」のチョッとモダンな雰囲気のストレート・カントリー"It Sure Is Monday"や、カントリーらしいシンプルなコーラスが粋な"Woman Sensuous Woman"あたりからMarkを知りましたが、その前の2枚「Too Cold at Home」、「Longnecks & Short Stories」が、今から見ると奇跡のような、ミニマムでシンプルで密度の濃い現代版ホンキー・トンク・カントリーが満載の名盤なのです。

  
 「Too Cold at Home」          「Longnecks & Short Stories」

 まず取り上げたいのは、デビューアルバム「Too Cold at Home」からのNo.1ヒット"Brother Jukebox"。カントリーのカッコ良さを痛烈に感じたミディアムで、聴いたとたんフェイバリット・ソングになりました。こちらも名シンガーであるKeith Whitleyと競作になりましたが、Mark盤の方がキレがあるかな。タイトル曲"Too Cold at Home"は、最近ホントに聴ける機会の減った極上のストレート・カントリー・バラード。コレでアルバムの幕が開くのです。ディープ&サザン・ソウルもそうだったのですが、カントリーもキメはバラードなのです。バックの編成は必要最低限の構成なのに、フィドルやペダル・スティールが良いと、何でこんなに深く豊かになるんでしょう。このアルバムではGarth Brooksが大ヒットさせた"Friends in Low Places"もやっています。Garthのがヒネリとパンチを効かせて彼のサウンドにしてしまったのに対し、Markのは実にオーソドックスで、らしいです。そして、セカンドの「Longnecks & Short Stories」。こちらも前作を踏襲し見事なバラード"Old Country "(嗚呼!)でスタート。ストリングスが適度に入って、よりスケールが大きくなっています。そして同じくバラードの"I'll Think Of Something "が名曲、エモーショナルに盛り上がるリード・ギターがアクセントになっています。こういうロンサム感漂い心にしみて来る曲がヒットするのが、カントリーの良いところですね。また、"Bubba Shot The Jukebox "はノベルティなリズム・ナンバーで、これも彼の代表曲。

 
 「I Don't Want to Miss a Thing」


 そんなトラディショナルなMarkも、モロにクロスオーバーの洗礼を受た事がありました。1999年に、映画「アルマゲドン」のテーマ曲"I Don't Want to Miss a Thing"、そうエアロスミス(Aerosmith)がSteven Tylerの熱唱で大ヒットさせたアノ曲を取り上げ、この年のアルバムのタイトル曲にもなったのです。最初は信じられず、そこまで売れたいかMark!なんて思いました。しかし聴いてみると、しっかりMarkらしいカントリー・シンギングを貫いていて、アルバムの方もストレート・カントリー基調で上々のクォリティだったのが救いでした。"I Don't Want to Miss a Thing"はカントリーはもちろん1位、そしてポップでも17位まで行っています(いずれもビルボード)。

 
  「Savin' the Honky Tonk」

 しかし、チャート上の彼の人気もこのアタリまで、Deccaを追われた後、Columbiaで1枚出した後、マイナー・レーベルVivaton!へ。しかし、そこでMarkが自身のルーツであり本当にやりたいホンキー・トンク・スタイルに専念する事を決意。そしてそれが好盤、タイトルからも凄い意気込みが伝わってくる2004年の「Savin' the Honky Tonk」に成果として現れます。売れ線を狙っていないのでキャッチーでポップな曲こそありませんが、親しみやすいシンプルなメロディと徹底的にソリッドなホンキー・トンク・サウンドのオンパレード。Markの歌声は生気にあふれ、伸び伸びとリラックスしています。歌詞のテーマについても徹底していて、ホンキー・トンク(酒場)そのものや、ウイスキーやビールを主題にした他、心の痛みやどうしても付きまとう人の悪事など、伝統的なカントリーのテーマを多く取り上げているようです。Big & RichのMuzikMafia系列の動きとは反対方向からの、メイン・ストリーム・カントリーへのMarkからの強力なアンチテーゼと言えるでしょう。良いシンガー、良いミュージシャンが良い状態でプレイすれば、いつの時代でもヴィヴィッドなグッド・ミュージックを奏でられる事がシンプルなホンキー・トンク・スタイルの強みであり、だからこそこのスタイルは、そしてカントリー・ミュージックは永遠なのだと思います。最新曲"Rollin with the Flow"も適度にストリングスが配されたメロウなカントリー・バラードで良いですよ。

 

 1963年、テキサスはBeaumont生まれ。彼も多くの同世代のアーティストと同様、Merle Haggard、George Jones、Hank Williams、そして忘れてはいけないElvis Presleyに影響を受けましたが、最も大きかったのは、かつてデビューも夢ではないくらいの実力を持っていた父親の存在でした。父は、アドバイスはもちろん、要所要所で資金的な援助をするなど、かつて自分も見た夢を追う息子に有形無形のサポートをしてくれました。結局、この父の資金援助によりレコーディングした"Too Cold at Home"をきっかけにブレイクし、スター街道を走り始めたのですが、残念ながらその父はデビューの1年後亡くなってしまいました。1993年のCMA Horizon Awardを受賞し姿を、Markは父に見せたかったんではないかと思います。

 Markの来日は、トラディショナル・スタイルが根強い人気を持つ我が国では大歓迎されるでしょう。そして、1990年代始めの本当に良い時期にカントリーを知った私にとっても大変うれしい事です。毎年11月にあるNHK総合での放送を楽しみに待つ事にします。それにしても、そろそろ1時間半くらいの時間枠に拡大してくれんかなぁ。

 MarkのMySpaseはコチラ → http://www.myspace.com/officialmarkchesnutt


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9 コメント

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Maxis Tagebuch (M.M.)
2007-09-16 22:27:37
はじめまして!検索でこのブログを偶然見つけました。
Mark Chesnuttは僕も好きです。前に日本人ペダルスチール・プレーヤーがメンバーの一員でしたが、今もいるんでしょうかね?
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Slim 山口さん (bigbird307)
2007-09-17 11:58:03
コメント有難うございます。

Slim 山口さんですね。このページでリンクさせていただいてるMySpaceのページで見れる、最近のものと思われるNashville Palaceでの映像では、はっきりと山口さんの姿が確認できます。

チャーリー・永谷&キャノンボールの創世期のメンバーという事で、そのコネが今回のMark来日に繋がったのでしょうかね。

これからもよろしくお願いいたします。
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カントリーゴールド楽しみです (yy harley)
2007-09-19 11:19:02
こんちは、ハーレーです。初めての訪問ですが、宜しく。

マーク・チェスナットを生で見たのは、1999年11月・テキサスのビリーボブスでした。
8年ぶりの再会です。(向こうは会ったことも知らないでしょうけどね)
でもその日、スリム山口さんとは記念写真を撮りましたが・・・(これも覚えていてくれてるかどうか?)

カントリーミュージック好き→リスナーでは物足りない→カントリーダンス踊ろォ→本場米国でも踊っちゃォ~!
てなことで、カントリーダンスのカップルダンスを主宰しています。

マーク・チェスナットみたいなトラディショナルでホンキートンクスタイルのミュージシャンは最高ですね、大好きです。
CGでどんな曲を歌ってくれるでしょうか、今から楽しみです。

ところで、CG2000年のブラッド・ペイズリー、私も行ってました。
ブラッドは2003年の時も行きました。
今はブラッド・ペイズリーの大Fanです。

Y&YのHPにも「お気に入りCD」にマーク・チェスナットを初め色々な歌手を紹介しています。(ダンス向けにね)
   ↓
http://www.geocities.jp/yoshidat1320/1favoriteCD.html

今後とも、宜しく!
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カントリーゴールド (bigbird307)
2007-09-21 00:37:36
ご訪問、有難うございます。

私も知人に誘われて何度か踊った事があります。
楽しいのですが、なかなか続かなくて・・・
私ももっとカントリー・ゴールドに行かないと
いけないんですが。来年はきっと!

HP拝見させていただきました。
トラディショナルを中心に、良いCDを紹介されて
いますね。私のお気に入りも幾つかありました。

これからもよろしくお願いいたします。

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キャノンボール最強メンバー! (htcountry)
2007-09-25 12:25:26
もう31年前の話ですが チャーリー&キャノンボールの20周年記念のライヴが福岡でありました。
その時のメンバーが僕にとっては最強メンバーだと思ってます ケニー、バック、スリムにジムだったと思います 
まだカントリーミュージックに足を突っ込んで3年位の頃でしたがキャノンボールは既に伝説と化してましたね 同じ年にグットタイムチャーリーがオープンしだんですねぇ
今は中々行けないんですが行けばゆっくりお話できるのは幸せな事です
今年はチャーリーの元にスリム、ケニー、バックが揃うので何かのサプライズがあるのではと期待してるん
ですよ
スリムもその後アメリカに渡り御存知のマーク・チェスナットのバンドに入りましたね 凱旋は遅い位ですよ しかしそのスリムも14~5年経った頃始めてアメリカ人の心に通じる音が出せるようになった!っていってるそうですよ 
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キャノンボール最強メンバー! (bigbird307)
2007-09-26 01:07:50
htcountryさん、貴重なエピソード、有難うござい
ます。チャーリーさん&キャノンボールとツーカー
なんですね!

私のカントリーの師匠から、「キャノンボールは
メッチャうまかったんやでぇ」とよく聞かされま
した。しかし、やはり本場で認められるには時間
がかかるんですね。カントリーはそれくらい深い。

この関西にもいいバンドがいます。最近あまり生で
聴きに行ってないんで、またボチボチ出歩きたいで
す。

またよろしくお願いいたします。
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イヤイヤとんでもない! (htcountry)
2007-09-26 10:57:45
ツーカーなんてとんでもない事ですよ!
チャーリーさんの人柄ですよ1度でも「Good Time Charlie」へ足を運ぶと分かりますよ(笑い)
チャーリーさんはキャノンボールが東南アジアの米軍キャプ回り時代の話を良く聴かせてくれます
荒んだ戦地の兵士達の酒場で演奏してきたそうですよそこら辺りが他の日本の同じカントリー歌手との違いでしょうか?
彼より歌の上手い方は沢山居られるんでしょうが、やはりチャーリーと彼の居る「Good Time Charlie」は大好きな場所ですよ
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Country Gold良かったです。 (Rice The Bforest)
2007-10-23 00:21:44
初めてです、お邪魔します。
Mark Chesnutt本当に良かったですよ。
大好きなBrother Jukeboxやってくれました。
本人と写真撮らせてもらいましたが、物静かな
Good Texanでした。
 じっくり聞かせる魅力に何時も賑やかなCountry Dancerも聞き入ってました。
 興奮すると言うよりは何か体に歌が染みこんで行く様な、、、ああこれがCountry Musicだと思いました。
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Country Gold良かったです (bigbird307)
2007-10-23 23:48:03
Rice The Bforestさん、訪問有難うございます。

日曜日、大阪も良い天気で、今熊本でやってるんだ
なぁと、気もそぞろでした。

やっぱりBrother Jukeboxやってくれましたか。生で
聴きたかったです。あのキレと深みのあるカントリー
・ボイスがアスペクタに響き渡ったのでしょうね。
NHKの放送を待ちます。

また、よろしくお願いいたします。
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