ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

ジョシュ・アボット・バンド Josh Abbott Band - The Highway Kind

2021-10-16 | Texas・RedDirt テキサス・レッドダート レビューまとめ

 

目下のところ、テキサスのカントリー・チャートで、"Real Damn Good"がヒット中のジョシュ・アボット・バンド。この春頃にも"Settle Me Down"がNo1になっていて、丁度10年ほど前に「She's Like Texas」を取り上げて以来久々にその名に触れて、昨年11月リリースのこの通算6作目を聴いたのですが、とても気に入っています。伝統的なカントリー・スタイルのバンドではないのですが、メインストリームではなかなか聴けなくなった、骨太なアメリカ南部サウンドを聴かせてくれる、良い感じに熟成したバンドになっていました。

 

 

2010年の「She's Like Texas」をご紹介した時には全く無名であまり気に留めてなかったのですが、そのアルバムにはケイシー・マスグレイヴスが "Oh, Tonight"でデュエット参加していたのが今から見れば最大の話題でした。ケイシーは2013年に「Same Trailer Different Park」でメジャー・デビューする以前のテキサス・ローカル時代で、溌剌とした歌声を聴かせてくれてます。続く2012年「Small Town Family Dream」はなかなかのチャート成績を上げ、ビルボード・カントリー・アルバムで5位、そしてビルボード200で15位まで到達します。

 

 

さらに2015年の「Front Row Seat」も商業的に健闘し、ビルボード・カントリーで9位に。ここでの話題曲は、今年めでたくグランド・オール・オープリーのレギュラー・メンバーになり、さらにCMAアワードのボーカル賞やアルバム賞にノミネートもされたカーリー・ピアーズがデュエット参加した"Wasn't That Drunk"。カーリーもメジャー・デビュー前でした。ジョシュ・アボット・バンドと共演した女性シンガーはなぜか大物になるのです・・・またこの頃、バンドは全米ネットのTV番組に初めて出演しています。2017年には「Until My Voice Goes Out」をリリースし、カントリー・アルバムで22位でした。ジョシュ・アボット・バンドは2017年のラスベガス銃撃事件のコンサートで演奏していた事でも知られています。

 

 

本作のレコーディングは、テキサス州エルパソの有名スタジオ、ソニック・ランチ(Sonic Ranch)。リーダーのジョシュは、゛本当に初めての、真のバンドとしてのアルバム体験だったよ゛と語ります。゛このアルバムは、(2020年から)7年前に創れたら良かったのに、と思えるものだよ。ここでの作品は生き生きしていて、僕の人生が今どこにあるかを反映するために厳選したものさ。幸せで満たされて祝福されているんだ。ラブ・ソングから友情についての歌や、バラードから炸裂するアップ・テンポまで、このアルバムには全てが有るよ゛2014年に前妻と離婚しましたが、その後再婚し、既に二人の子供に恵まれた現状を反映しているという事でしょう。

 

 

リード・シングルの“Little More You”や"Where I Wanna Be"あたりでは、南部らしいダウンホームでヘヴィなビートで押すものの、メロディアスなところが好印象で、このメロディ・センスやそれを表現する角のとれたソウル・ボイスがジョシュの個性と言えます。"24-7-365"では更にスピード・アップし、メインストリーム・カントリーではなかなか味わえないアーシ―な熱さが感じられます。ここでは艶やかなギター・サウンドは一切聴かれません。その一方で、"The Luckiest"のようなほっこりしたカントリー・ソングもあり、幸せな響きに溢れています。ラストはアコースティックな"Old Men & Rain"でしっとりと締めくくられます。

 

 

本作はメインストリームでのチャート上の動きはなかったようですが、テキサスでは冒頭で書いた通り変わらない人気を維持しているようで、テキサスのローカル・シーンにこういうアーティストがいる事にアメリカン・ミュージックの奥深さを感じ、頼もしい限りです。もう少しルックスが洗練されていれば(失礼!)、もっと広く知られるアーティストになったかも、等と思うくらい有能なアーティストだと思います。



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