静かな年末年始に合わせてでもないですけれども、昨年暮れから折
に触れてよく聴いていた、ベテラン、メアリー・チェイピン・カ
ーペンターのとても穏やかな最新作です。今はヒット・チャート
とは無縁の存在となっていますが、90年代初頭の全盛期以降、30
年にわたり着実にアルバムをリリースし続けていて、根強い人気
を維持している事がうれしいです。
全盛期は、92年と93年にCMAアワードの女性ボーカル賞を2年連
続で勝ち取る程のメジャーな人気を誇りましが、その当時から今
に至るまで、彼女のフォーキーで深い陰影に富むカントリー・タ
ッチのマイルドな音楽は他に類例がなく、彼女の音が求められ続
けるのも頷けます。今のメインストリーム・カントリーには、と
ても期待できそうにない奇特なサウンドなのです。10年ほど前に
このブログでも「The Age of Miracles」を取り上げていて、そこ
ではプロフィールも紹介しております。
このアルバムは、バンド・メンバー共々、イギリスのバースにお
もむき、その地のピーター・ガブリエル(元ジェネシス等々)の
スタジオで、ほぼライブ録音したそうです。そのせいか、音がな
んとなくドライで味わいがあります。曲想的には"Secret Keepers"
のようなフォーク・ロック、"Old D-35"のフォーキーなスロー、
トランプ陣営のリンジー・グラハム議員の偽善をテーマにした
”American Stooge”の粘っこいパブ・ロック等々ほぼ全盛期と変わ
らないんですが、年輪を重ねた味わい・優しみが増しています。
そんな音世界の中、"All Broken Hearts Break Differently"のように、
希望をあきらめない前向きなメッセージが歌われています。ラス
トの"Between The Dirt And The Stars"でジワリと盛り上がるギタ
ーなど、バックの演奏も聴きモノです。
それにしても、この人の音楽が広く受け入れられていた90年代と
はつくづく良い時代だったのだと思います。このフォーキーなカ
ントリー・スタイルの先駆者としては、やはり大ファンだった80~
90年代のナンシー・グリフィスが思い当たります。"Between The Dirt
and the Stars"で、ストーンズの"Wild Horses"のことが歌われてい
たので思い出したのですが、実はこの二人が共演したAustin City
Limitsの古いライブがYoutubeで見れて興味深いです。
もう一組はIndigo Girls
曲はナンシーが「Stone Country」という、90年代の主流カントリー・
アーティストがローリング・ストーンズのヒット曲をカバーするという
企画アルバム(ビートルズ版もあった)に収録した"No Expectations"。
ブリティッシュ・ロックの音を艶やかな王道アメリカン・サウンドで
焼き直してもピンと来ませんでしたが、ナンシーの"No Expectations"
だけは別格。そもそも選曲からして絶妙で、しかもバラードをアップ
テンポに改作。ライブとスタジオ盤を両方貼り付けておきますので、
よろしかったらどうぞ。
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