ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

モーガン・ウォレン Morgan Wallen - Dangerous:The Double Album【レビュー】~ ビルボードで19曲がチャートイン

2021-01-16 | Morgan Wallen モーガン・ウォレン レビューまとめ

7月、モーガンがナッシュビルの大観衆の前で歌いました

 

サブタイトルとして、特に"The Double Album"と銘打たれた、

ガン・ウォレンのセカンドにして30曲収録の大作アルバム「デン

ジャラス:ザ・ダブル・アルバム」です。既にリード・シングルと

して"More Than My Hometown"や"7 Summers"カントリー・

チャートでナンバー1ヒットとなり期待・人気が高まっていた中、

2曲のボーナス・トラック収録特別盤販売するターゲット

に対抗してか、ウォルマートが発売日より前にCDを陳列して販売

するという゛リーク゛騒ぎもあり、アメリ本国は早速話題に

事欠かないようです。

 

 

レギュラー盤では15曲づつに分けられた2枚組は、昨年の情報記事

ご紹介したモーガンの言葉の通り、「If I Know Me」で聴かせた

アメリカン・ロック調からブルージーなナンバーに留まらず、モダ

ンなグルーブのミディアム、ムーディなスローやアコースティック

なカントリー・バラードまで見事にバラエティに富んでいて、今カ

ントリーミュージックと呼べる全てをカバーしたと言っても言い過

ぎではないです。しかも、それぞれどこかしらにフックがあり一定

のクオリティを保っています。モーガンも振り返って語っています。

゛大変な作業だったけれども、その甲斐はあったよ゛

 

少し長い"Short Film"です。

 

モーガンと言えば、昨年はナッシュビルでの逮捕騒ぎや、密パーテ

ィ映像の流出で『SNL』出演が一旦キャンセルされる(最終的に出

)等のお騒がせが有りましたが、ここで聴ける音楽製作に関して

は決して自身の名声に思い上がったり、勢いに任せるようなことは

無く、とても丁寧に、緻密にアルバムをデザインしている風に感じ

取れます。そして、ネオ・トラディショナルな志向をほのかに忍ば

せる事でアルバムに強い芯を創っているようです。(なお、プロフ

ィールは「If I Know Me」の記事に記載しました)

 

 

アルバムはしっとりしたピアノ・チューンでスタートします。こ

れまでのモーガンのイメージからすると意表を突くような“Sand

In My Boots”。おそらく曲中で主人公の喩えとしても出てくる、

イーグルスの"Desperado"に着想を得たと思いますが、どこかス

ティーブン・フォスターの"Hard Times Come Again No More"あ

りのパーラー・ソングの雰囲気もあり、なんとなく南部ルーツ

を感じてしまいました。歌の内容はテネシー州の東西の男女がお

互いの言葉や習慣の違いを探りあう様が歌われているようです。

そしてこの曲以降、前半ほとんどをスロー~ミディアム系のナン

バーが続いていきます。「If I Know Me」は多くがリズム・ナンバ

ーだったので、ここでモーガンの新たな一面、幅広いタレントを

聴き手は認識できるのです。

 

 

“Wasted On You”や“Warning”のようにR&B風のリズム・ループが

フィーチャーされたり、少しペースを上げた“Neon Eyes”でモダン

なイメージを出す一方、アコースティック楽器のアンサンブルが

印象的な“More Surprised Than Me”や、文字通りアウトロー・カン

トリーの “Outlaw”、“Whiskey’d My Way”辺りでカントリー・ルー

ツへの気配りも怠りません。ジェイソン・イズベルの"Cover Me

Up"はドスの効いたソウル・ボイスでより重厚になってます。懐

が深い。とにかく、モーガン自身の塩っ辛い歌声で一貫したイメ

ージが保たれます。 

 

 

ディスク1でハイライトの一つと言えるのが、クリス・ステイプル

トンがデュエットしたダウンホームなスロー"Only Thing That's Gone"

でしょう。バーの客とバーテンダーの会話という設定で、クリスが

痛ともいえる素晴らしいコーラスを付けます。゛もう一杯注いで

くれよ/もっと早く、そしてもっと強いのを/なぜなら俺の最後の一

は、俺の元を去っていった唯一のものじゃないんだから゛やはり

この手を聴くと熱くなりますね。

 

 

後半は一転、リズム・ナンバーが多くを占めるのですが、それで

も冒頭の“Still Goin Down”はどこか漂うような浮遊感とアンニュ

イなギター・フレーズがユニークなミディアム。『SNL』でもプ

レイしていた一押しのナンバーですね。"Dangerous"からスピード

アップしていきますが、こちらサイドが従来からのモーガンのイ

メージでしょう。

 

 

“Beer Don’t”や“Somethin’ Country”あたりはサザン・ロック・スタ

イルで、後者では十八番のリズミックなラップ・ボーカルが楽しめま

す。でも、このスタイルで押し通すわけでなく、"Dangerous"は結

構ポップで洗練された音ですし、“Livin’ The Dream”などシンセサ

イザーの電子音をアクセントにしてたり、その一方、"Need A Boat"

でストレート・カントリーをやったり、このゆとりスペースを様

々なアイデアで彩っていますね。ロック曲でもリゾフォニッ

ギター等の生音を金属的に響かせて、南部音楽としてのカント

ーを感じさせる音づくりをしてるのが好感が持てました

 

 

アルバム・タイトルとなった注目曲"Dangerous"について、モーガ

ンは個人的なナンバーだと語っています。゛少しトラブルに巻き込

まれた後(昨年、ナッシュビルのキッド・ロックのバーでの騒ぎで逮

された)、数週間後にこの曲を書いた。何かを学んだように思った

んだ。自分に対する手紙のように書きたかった゛゛自分自身に手

紙を書けるのはある意味適切と思ったし、アルバムを表現するにも

より良い方法だよ゛

 

 

"Dangerous"のリフレインではこう歌われています。゛だから以前の

様にはダウンタウンには行きたくない/(中略)/今夜はここでじっ

としてようと思う/だってそこは危険かもしれないから・・・゛更に

モーガンは、「公の人」として学んだ事についても語っています。

゛僕はその扱い方を理解するようには育ってこなかった。母さんは

僕を有名するために育てたわけじゃない。その後も理しようとし

ているよ。自分の手綱をしっかり握っていると思ってる゛

 

 

天然で率直な振る舞いが世間に話題を振りまいてきたこのカントリ

ー・ボーイは、この超弩級のセカンド・アルバムで、今度は音楽的

な力量においてもさらに本国の人々を歓喜させるでしょう。少な

くともカントリー界での彼の地位を確固たるものにするアルバムに

なると思います。今年のモーガンの進撃を楽しみにしています。な

お、You Tubeのモーガンのオフィシャル・チャンネルでは、新曲の

スタジオ・ライブや、1月12日に催されたライマン公会堂でのフル・

バンドによるショーが公開されています(※ライマンの方は残念な

がら早々に終了・・・)ので、よろしかったらご覧ください

 

(追記)

 

1月23日付ビルボード200、初登場1位を獲得しました!また、シン

グルのホット100では、30曲中19曲がランクインという快挙も。テイ

ー・ウィフトみたい・・・ストリーングがカントリー記録だっ

たそうです。記念に”記録”しておきます。

 

#9  Wasted On You

#16  More Than My Hometown

#18  7 Summers

#26  Somebody's Problem

#32  Sand In My Boots

#42  Warning

#45  Still Goin Down

#46  865

#52  Cover Me Up

#62  Dangerous

#63  Neon Eyes

#66  More Surprised Than Me

#74  Livin' The Dream

#83  Whiskey'd My Way

#84  Your Bartender

#86  Outlaw

#90  Only Thing That's Gone

#92  This Bar

#93  Wonderin' Bout The Wind



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