ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Zac Brown Band ザック・ブラウン・バンド- Jekyll + Hyde

2016-04-30 | Zac Brown Band ザック・ブラウン・バンド レビューまとめ
「The Foundation」でのメジャーデビュー以降、オリジナル・アルバムは全て取り上げさせていただいてる、私お気に入りのアーティスト、ザック・ブラウン・バンド(ZBB)。2012年の「Uncaged」以来の2015年最新作です。元々からメインストリーム・カントリーのお決まりの型に収まる事なく、アメリカ南部のルーツを基軸とし、ザック・ブラウンの幅広い音楽ジャンル~ブルーグラス、ソウル、ファンク、カリビアン、そしてもちろんロックも~への造詣の深さと確かなテクニックを武器としたバンドで、アルバムを重ねる毎に着実のそのレンジを拡げてきていたのが頼もしい存在でした。しかし、これは最初面食らいましたねぇ~。

オープニングの"Beautiful Drug"で、のっけからシンセによるデジタルな縦ノリビートがグイグイ迫ってきます。ルーツサウンドに留まる事なく、スピーディな旬のダンスビートまでもモノにしてしまう技量は見事だけど、ココまで行ってしまうか、という第一印象・・・続く、シンプルだけど実にグルーヴィなカリブ海風ポップ"Loving You Easy"や、リードシングルとなった、ファンがZBBに期待するイメージどおりの"Homegrown"らで一旦落ち着き、ポップ・シンガー Sara Bareillesがゲスト参加した"Mango Tree"もレトロなスウィング曲でザック・ブラウンらしい遊びだなと思ってたら、歪んだベースサウンドのうねりに導かれたベヴィー・ロッカー"Heavy Is the Head"が飛び出します。サウンドガーデン~オーディオスレイヴのメンバー Chris Cornellとのデュエットで、ザック・ブラウンも雄叫びを上げるのです。"Bittersweet"でやっと穏やかなアコースティック・カントリー・サウンド(チョッとアリーナで響いてる感じで落ち着かないけど)に浸れたと思ってたら、後半でパワーサウンドが炸裂し、やっぱり今はこうするんだ・・・、と一応納得。



でもそこはさすがザック・ブラウン。なんなのコレ・・・とついつい繰り返し聴いてくると、その凄さに気付いてきます。究めつけは"Remedy"。アイリッシュリール風のフレーズがキーになって、神々しささえも感じるスピリチュアルなナンバーです。途中のアコギのブレイクの美しさや、後半のパーカッションをフィーチャしたゴスペル的な盛り上がりは実にクリエイティブで心躍ります。アルバム中ピカイチのハイライトチューンです。"Tomorrow Never Comes"は、爽やかなアコギのストロークとシンセによる縦ノリビート(ピコピコ音も)の混ざり具合が絶妙なダンスチューンで、確かにこれって今のZBBにしか創れない音なのだな、と思えてくるのです。その一方で、レトロR&B調のスローバラード"Dress Blues"では、ザック・ブラウンがソウルフルな歌声を切々と聴かせてくれて、ブレイクで聴ける哀愁を帯びたフィドルも曲に魅力を添えています。アルバム中、最も南部嗜好のナンバーですね。実質的なラストナンバーといえる、"I'll Be Your Man (Song for a Daughter)"は、アメリカ南部音楽の真のルーツといえるアフリカンなメロディとゴスペルフィーリングをたっぷりと湛え、アルバムを崇高なイメージで締めくくります。

やっぱり、レンジ、かなり広いなぁ・・・・と。収録の全曲を、分け隔てなく愛する事が出来る人、そう多くないのでは・・・でもここは、絶えず新しい音楽スタイルを正しく吸収し、自身の音楽テリトリーを拡大しようとするザック・ブラウンの意欲や、それをしっかり表現できるバンドの度量の広さに敬意を評すべきでしょう。現代カントリーがクリエイティブに、かつては存在しないサウンドを創っていける事を示してくれている。真にココでしか聴けない、彼らの音なのです。それに、今はダウンロードで好きな曲だけを選べる時代。アルバムトータルを通して云々、という見方は若い方々には当たってないのかも・・・個人的には、"Remedy"や"I'll Be Your Man (Song for a Daughter)"で感じられたアイリッシュ/アフリカへのルーツ探求を、ポップ感覚を保ちつつ、この後もさらに推し進めてくれたら良いなぁ、と思いました。


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