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Josh Abbott Band ジョシュ・アボット・バンド - She's Like Texas ~テキサス時代のケイシー・マスグレイヴスの初々しい歌声も

2010-05-24 | Texas・RedDirt テキサス・レッドダート レビューまとめ

 
 テキサスで今年大ブレイクした、ロッキッシュでありながら、カントリー・ルーツのテイストを織り込んだオリジナルなサウンドを持つジョシュ・アボット・バンド。まだその人気はテキサス内に限定したもののようですが、爽快なギター・サウンドや、かなり親しみやすいフックのあるメロディを持つその作品からは、メインストリームへのブレイクもあるのでは!?と思わせます。テキサスと言うと、アメリカ内でも特に異質で閉じた音楽文化を持つ事で知られていますが、最近はJack Ingram やPat Green 、Eli Young Band らのテキサス出身アーティストが次々とメインストリームでブレイクしていく、という状況もありますし。テキサス出身!という先入観からすると、このジョシュ・アボット・バンドのサウンドは程よくクリアで分かりやすく、それでいて本物感もあるのです。



 オープニングの"Road Trippin"のワイルドなギター・リフは、まさにサザン・ロックのそれですが、フィドルとギターによるユニゾンのフレーズには、かつてのボブ・ウィリス&テキサス・プレイボーイズらのウェスタン・スウィングのルーツがしっかりと浸み込んでいるようです。そして、ジョシュ・アボットの粘りあるソウルフルなテナー・ボイスが、何よりこのバンドのアイデンティティと言えるでしょう。リズムセクションも骨太で強力。"The Walking Out"~"If You're Leaving (I'm Coming Too)" (この2タイトルで1曲)で聴かせるスペイシーでスケールの大きいノリは、巨大なアリーナでも十分映えるでしょう。そこに、キャッチーなメロが絡むのが、シングルとしてテキサス・ローカル・ヒットした"All of A Sudden"。それでもフィドルのたっぷりした響きが、メインストリームのポップ・ソングとはひと味も二味も違うルーツ感を発散しています。"I Just Wanna Love You"も思わず口ずさんでしまうコーラスがナイス。



 ロッキン系ばかりでなく、抑え気味のオーガニックなナンバーでもいい雰囲気を持ってます。サード・シングルであるタイトル曲"She's Like Texas"。ジョシュは言います。「曲を書くときの最も軸となるアイデアは、自伝的なものさ。僕の書くどの曲も、僕の、或いは僕の知ってる人の、本当のストーリーから来てるんだ」”彼女はテキサスのようで、僕のことが好きなんだ”と歌われるこの曲も、彼の物語なのかな。 "Oh Tonight"(メジャー・デビュー前のケイシー・マスグレイヴスがデュエット!)や、昨年カントリー・ゴールドで来日したトレント・ウィルモンTrent Willmonがゲスト参加したフォーキーな"End Of A Dirt Road"などのアコースティック・チューンもしっかりラインアップして、和ませてくれます。ラストは、アッと驚く、ピアノ・ベースの美しいバラード"Let My Tears Be Still"。テキサス云々を忘れてしまいそうなモダンなナンバーですが、ジョシュのアーシーな歌声が甘さに流れすぎる事を抑制しています。

 

 

 ジョシュは、Lubbockにあるテキサス工科大学で通信学と政治学を学んでいました。その頃、仲間とバディー・ホリー・アベニューにあるBlue Light Liveでよくパーティーをして楽しんでいましたが、2004年にそこでRandy Rogers Bandをを見た時、人生が変わったのです。「僕は強烈なインパクトを受けてしまったんだ。僕にも、聴衆と繋がる曲を書いたり、プレイしたり出きるハズだ、ってね。その夜か次の日から、僕は曲を書き始めた」安い費用でレコーディングしたデモ"Taste"をMySpaceにアップするや、2百万アクセスをゲットし、地元のラジオ局にはリクエストが殺到します。 「ジョージ・ストレイト以上のリクエストが来たんだよ。おかしいよね!」これをキッカケに、彼はバンド活動に専心するため、大学のマスター修了をあきらめます。周囲は彼を非難しましたが、「僕にとっては、教育を受ける価値は、単位の証明書以上のモノなんだよ」そしてバンドには、もう一人のキーマン、フィドルとギターのPreston Waitが加わる事に。彼はリー・アン・ウォマックやナタリー・メインズ(ディキシー・チックス)らも卒業した、ある意味名門のSouth Plainsカレッジで学んだ人でした。そしてジョシュは、自力で資金を調達し、最初のEP「Brushy Creek」を制作、それをタダ同然で配ったり、ショーではTシャツやキャップを観客に投げ入れたりして楽しませることで、自身の音楽を地道に広げ、今回の"All of A Sudden"のローカルヒットをモノにしたのです。




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