まんじゅうのつぶやき

まんじゅうです。読んだ本の感想や日々のできごとの忘備録です。最近栖が変わりました。

3月27日 重松清「希望の地図」

2012-03-27 17:37:30 | 読書のすすめ
今日はちょっと暖かだったかな?
春は来ているし 花粉も飛び放題なのに まだ冬の気配もしています。

さて 重松清の「希望の地図」を読みました。

希望の地図
重松 清
幻冬舎



震災から1年たった 3月11日が出版日となっています。

中学受験に失敗し 地元の中学に進学したもののいじめに逢い登校拒否となった主人公 光司。
父の友達であるフリーライターの田村に誘われ 被災地の取材に同行することになる。
最初は 戸惑い気味だった光司は 数々の被災地を訪れ 被災者と出逢うことによって 変わっていく。

重いテーマをこれだけ 年齢層を問わず読みやすく書けるのは 重松清の力量だと思います。
主人公を中学生に設定したこと 難しい言葉を使わないことによって
小学生から大人まで 読むことのできる本となっています。

重松清が描きたかったのは 題名通り『希望の地図』。
フリーライターの田村に言わせています。
同じところを回っても 『絶望の地図』になることもある。
実際 そんな取材もたくさんあった。
でも あえて 光司(ひいては読者)には『希望の地図』を見せたかったと。

たった1年。
震災の傷跡が消えるわけがないし いまだ行方不明の方が大勢いて 家族はそれを探していらっしゃる。

ちょうど 震災1年前後。
テレビ各局が 震災の特番を次々に放映していましたが 正直見る気になれませんでした。
それは 『震災』を過去のことにして まるでショーのようにしたり
後手に回る政治家の悪口大会みたいになったりすることに 無意識に抵抗を感じていたからかもしれません。

もちろん そんな報道ばかりではなかったと思いますが
なんとなく 底にお祭り気分みたいなのが感じられて 参加する気になれなかったのです。

代わりにこの本を読みました。
報道で 知っていたこともあるし 知らなかったこともたくさんありました。

『絶望』と『希望』は隣合わせだということを強く感じました。

ずっと 報道が 震災被害者の人たちに
「がんばれ!がんばれ!」
と いうことに抵抗を感じていました。

取材の度に 避難生活している人たちにまで
「ご支援ありがとうございます。」
と 言わせようとしていることにも抵抗を感じていました。

『がんばれ にっぽん!』ってなんだ?
オリンピックじゃないのよと 突っ込み入れていました。
(もちろん スローガンとしては理解しています。)

自分だったらと思ったら なかなか立ち直れない人や
自暴自棄になってしまう人 無力感にさいなまれてしまう人
深い喪失感から抜け出せない人 当然だと思います。

人間 そんなにいつもがんばれないよ。
報道を見るたびに
がんばらなくていい。感謝なんて言葉にしなくていい。
でも いつか 御自分自身のために また立ち上がれますように と祈ってきた。

重松清は あえて 『希望の地図』を書いた。
でも その『希望』のそばにいつも『絶望』があることを私たちは忘れてはならないと思う。

絶望の淵にあって なお希望をつかもうと 前に進もうとしている人たちが大勢いらっしゃることを忘れてはならないと思う。


最後に この本をコメントで紹介してくださった郷介さんに 深く感謝いたします。

郷介さんがおっしゃるように 「大人も子供もこの本を読んでほしい。」と切に願います。


いがぐりおをクリックしていただけると嬉しいです。いつもありがとうございます。^^/
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