参院後にいったん休止し10月から再開してきた当ブログですが、最近管理人が私生活で多忙になってきたために、またしばらく休止します。
韓国のパク・クネ大統領が、いよいよがけっぷちに立たされている。
大統領府である青瓦台には、100万を超すともいうデモ隊が押し寄せ、さしものパク大統領も、記者会見でついに辞任の意思があると口にした。
これについては、あえてみずから辞任の意思もあることを示すことによって弾劾を避けようという意図があるともみられているが、それが真意だとしても、結局辞任を少し先延ばしすることにしかならないだろう。
最近当ブログでは海外ネタをいくつか扱っているが、その延長として今回は日本にもっとも近い隣国である韓国について書く。
韓国という国は、30年ぐらい前までは軍事独裁国家だった。
その大統領職はまるで呪われた椅子で、任期途中で失脚したり、現大統領の父であるパク・チョンヒのように暗殺されたりと、イレギュラーな形でその座を追われることが多かった。青瓦台はアメリカのホワイトハウスをもじって「ブルーハウス」と呼ばれたりもするが、死亡した例をのぞけばホワイトハウスを任期途中で去ったのはリチャード・ニクソンただ一人であるのに対して、軍政時代のブルーハウスでは任期をまっとうするのがまず難しいという状態だった。民主化時代の大統領であるノテウにして「はじめて無事に青瓦台を出た」といわれたほどである。
そして民主化後も、大統領をやめた後に醜聞がもちあがって司直の手にかかったりしている。そういう歴史の延長線上としての、いまのパク政権の惨状であり、韓国という国は今でもまだ非民主的な軍政時代の残滓を引きずっているのだなあと感じさせられる。
韓国にこのような状況があれば、もちろん日本にとってもよくない影響がある。
なにしろ密接な関係にある隣国だから、政治・経済・安全保障など、その悪影響は広範囲にわたるだろう。しかも、弾劾になるにせよ、パク大統領みずから辞任となるにせよ、混乱は長期化しそうな情勢だ。
それにしても、韓国のデモの激しさには驚かされる。
これもまた、波乱に満ちた韓国政治史のなかで形作られたものだろう。韓国では初代大統領のイ・スンマンからして任期途中で辞任しているのだが、彼を辞任に追い込んだのは、“4月革命”と呼ばれる大衆運動だった。イ政権の独裁体制と腐敗体質に怒った大衆が決起し、100人以上の死者を出す激しい抗議運動の末に大統領を辞任に追い込んだのである。
また、それから20年後、パク・チョンヒ暗殺後にクーデターで実験を握ったチョン・ドファンに対しても、民主化を求める激しい運動が起きた。“韓国の天安門”とも呼ばれる光州事件である。このときは、アメリカでいえばグリーンベレーに相当するといわれる韓国軍の特殊部隊「第7空挺部隊」が出動したが、この「韓国軍最強」の部隊を相手に市民は多くの犠牲を出しながらも民主化のための抵抗運動を続けた。鎮圧の後も民主化運動の火が完全に消えることはなく、それが90年代の民主化につながっていく。
このように韓国には、軍隊が乗り出して弾圧してきてもあくまでも抵抗する強力な民衆運動の歴史がある。
その激しさには、たしかに度を超していると思えるような部分も見えて一長一短あるだろうが、それが実際に独裁的な大統領を退陣に追い込んだという実績もある。為政者の腐敗や強権的政治を徹底的に糾弾するというところは日本もちょっとみならったほうがいいんじゃないか――青瓦台の前に集結したすさまじい人数のデモを見ていると、そんなことも思わされる。
大統領府である青瓦台には、100万を超すともいうデモ隊が押し寄せ、さしものパク大統領も、記者会見でついに辞任の意思があると口にした。
これについては、あえてみずから辞任の意思もあることを示すことによって弾劾を避けようという意図があるともみられているが、それが真意だとしても、結局辞任を少し先延ばしすることにしかならないだろう。
最近当ブログでは海外ネタをいくつか扱っているが、その延長として今回は日本にもっとも近い隣国である韓国について書く。
韓国という国は、30年ぐらい前までは軍事独裁国家だった。
その大統領職はまるで呪われた椅子で、任期途中で失脚したり、現大統領の父であるパク・チョンヒのように暗殺されたりと、イレギュラーな形でその座を追われることが多かった。青瓦台はアメリカのホワイトハウスをもじって「ブルーハウス」と呼ばれたりもするが、死亡した例をのぞけばホワイトハウスを任期途中で去ったのはリチャード・ニクソンただ一人であるのに対して、軍政時代のブルーハウスでは任期をまっとうするのがまず難しいという状態だった。民主化時代の大統領であるノテウにして「はじめて無事に青瓦台を出た」といわれたほどである。
そして民主化後も、大統領をやめた後に醜聞がもちあがって司直の手にかかったりしている。そういう歴史の延長線上としての、いまのパク政権の惨状であり、韓国という国は今でもまだ非民主的な軍政時代の残滓を引きずっているのだなあと感じさせられる。
韓国にこのような状況があれば、もちろん日本にとってもよくない影響がある。
なにしろ密接な関係にある隣国だから、政治・経済・安全保障など、その悪影響は広範囲にわたるだろう。しかも、弾劾になるにせよ、パク大統領みずから辞任となるにせよ、混乱は長期化しそうな情勢だ。
それにしても、韓国のデモの激しさには驚かされる。
これもまた、波乱に満ちた韓国政治史のなかで形作られたものだろう。韓国では初代大統領のイ・スンマンからして任期途中で辞任しているのだが、彼を辞任に追い込んだのは、“4月革命”と呼ばれる大衆運動だった。イ政権の独裁体制と腐敗体質に怒った大衆が決起し、100人以上の死者を出す激しい抗議運動の末に大統領を辞任に追い込んだのである。
また、それから20年後、パク・チョンヒ暗殺後にクーデターで実験を握ったチョン・ドファンに対しても、民主化を求める激しい運動が起きた。“韓国の天安門”とも呼ばれる光州事件である。このときは、アメリカでいえばグリーンベレーに相当するといわれる韓国軍の特殊部隊「第7空挺部隊」が出動したが、この「韓国軍最強」の部隊を相手に市民は多くの犠牲を出しながらも民主化のための抵抗運動を続けた。鎮圧の後も民主化運動の火が完全に消えることはなく、それが90年代の民主化につながっていく。
このように韓国には、軍隊が乗り出して弾圧してきてもあくまでも抵抗する強力な民衆運動の歴史がある。
その激しさには、たしかに度を超していると思えるような部分も見えて一長一短あるだろうが、それが実際に独裁的な大統領を退陣に追い込んだという実績もある。為政者の腐敗や強権的政治を徹底的に糾弾するというところは日本もちょっとみならったほうがいいんじゃないか――青瓦台の前に集結したすさまじい人数のデモを見ていると、そんなことも思わされる。
アメリカ大統領選に関して、ウィスコンシン州の票が再集計されることになった。
以前からコンピューターの集計システムの脆弱性が指摘されていて、コンピューターへのハッキングで票が操作されている可能性があるという指摘が出たためだ。
ウィスコンシン州だけでは結果は覆らないが、ペンシルベニア、ミシガンの2州でも同じような指摘がなされていて、もしこの3州すべての結果がひっくり返ると、ヒラリー・クリントンが逆転することになる。ごくごくわずかなものではあるが、大統領選の結果が覆る可能性があるのだ。
もしハッキングがあったとしたら、その犯人はいったい誰なのか?
もっとも疑わしいのはロシアだ。
トランプ次期大統領は、ロシアのプーチン大統領を称賛するようなことを過去にいっていて、今年7月にはロシアによるクリミア併合を容認するかのような発言で物議をかもしたりもしている。そんなトランプ氏を、CIAのモレル元副長官は「無自覚なロシアの諜報員」と呼んだ。プーチンの計算どおりに動き、アメリカを危険にさらすという指摘である。
そんな人物だからこそ、ロシアにとってはぜひアメリカ大統領になってほしいということになる。
選挙期間中、ヒラリー・クリントンのメール問題が次々と暴露されたが、これも「ロシアがハッキングで得た情報をリークしてトランプを援護射撃しているのではないか」とささやかれていた。それが事実であるなら、ロシアの諜報機関かなにかがハッキングで選挙結果そのものを操作したとしても不思議ではない。
もっといえば、シリアやイランも、トランプ大統領の誕生を望んでいたといわれる。
イランの場合は、トランプが大統領になれば、その無茶苦茶な政権運営でアメリカの国力が衰え、国際社会における権威も失墜し、イランに対する圧力が弱まっていく……という計算があるかららしい。
そして、シリアもイランもロシアとはきわめて近い関係にある国だ。このような背景も考えれば、ロシアがハッキングでトランプ氏を支援したというのも、なるほどありそうなことではないか。となると、再集計によってそれが明るみに出て、クリントンが逆転勝利ということもリアルにあるかもしれない。
……とはいえ、それははかない希望である。
実際には選挙結果が覆る可能性はかぎりなく小さいだろう。
最近日本の選挙でも、ある候補が一部地域で得票ゼロだったという発表に対して「自分たちはたしかに投票したのに0票のはずがない」と投票者が不正を訴えたケースがあったが、裁判所はほとんど門前払いのような対応だった。よほどぐうの音も出ない証拠でもないかぎりは、いちど選挙で出た結果はそう簡単に変えられないのだ。
おそらく、トランプ氏が来年アメリカ大統領に就任するというのはもう動かない。むしろその後に、失政やスキャンダルでトランプ大統領が任期中に辞任に追い込まれるというようなシナリオを、反トランプ派は期待したほうがいいだろう。スキャンダルで辞任というのは過去にニクソンの例があるし、トランプ大統領ならそれぐらいのことはやってくれそうではないか。
以前からコンピューターの集計システムの脆弱性が指摘されていて、コンピューターへのハッキングで票が操作されている可能性があるという指摘が出たためだ。
ウィスコンシン州だけでは結果は覆らないが、ペンシルベニア、ミシガンの2州でも同じような指摘がなされていて、もしこの3州すべての結果がひっくり返ると、ヒラリー・クリントンが逆転することになる。ごくごくわずかなものではあるが、大統領選の結果が覆る可能性があるのだ。
もしハッキングがあったとしたら、その犯人はいったい誰なのか?
もっとも疑わしいのはロシアだ。
トランプ次期大統領は、ロシアのプーチン大統領を称賛するようなことを過去にいっていて、今年7月にはロシアによるクリミア併合を容認するかのような発言で物議をかもしたりもしている。そんなトランプ氏を、CIAのモレル元副長官は「無自覚なロシアの諜報員」と呼んだ。プーチンの計算どおりに動き、アメリカを危険にさらすという指摘である。
そんな人物だからこそ、ロシアにとってはぜひアメリカ大統領になってほしいということになる。
選挙期間中、ヒラリー・クリントンのメール問題が次々と暴露されたが、これも「ロシアがハッキングで得た情報をリークしてトランプを援護射撃しているのではないか」とささやかれていた。それが事実であるなら、ロシアの諜報機関かなにかがハッキングで選挙結果そのものを操作したとしても不思議ではない。
もっといえば、シリアやイランも、トランプ大統領の誕生を望んでいたといわれる。
イランの場合は、トランプが大統領になれば、その無茶苦茶な政権運営でアメリカの国力が衰え、国際社会における権威も失墜し、イランに対する圧力が弱まっていく……という計算があるかららしい。
そして、シリアもイランもロシアとはきわめて近い関係にある国だ。このような背景も考えれば、ロシアがハッキングでトランプ氏を支援したというのも、なるほどありそうなことではないか。となると、再集計によってそれが明るみに出て、クリントンが逆転勝利ということもリアルにあるかもしれない。
……とはいえ、それははかない希望である。
実際には選挙結果が覆る可能性はかぎりなく小さいだろう。
最近日本の選挙でも、ある候補が一部地域で得票ゼロだったという発表に対して「自分たちはたしかに投票したのに0票のはずがない」と投票者が不正を訴えたケースがあったが、裁判所はほとんど門前払いのような対応だった。よほどぐうの音も出ない証拠でもないかぎりは、いちど選挙で出た結果はそう簡単に変えられないのだ。
おそらく、トランプ氏が来年アメリカ大統領に就任するというのはもう動かない。むしろその後に、失政やスキャンダルでトランプ大統領が任期中に辞任に追い込まれるというようなシナリオを、反トランプ派は期待したほうがいいだろう。スキャンダルで辞任というのは過去にニクソンの例があるし、トランプ大統領ならそれぐらいのことはやってくれそうではないか。
ついに日韓とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)が、締結・発効にいたった。
韓国のパク・クネ政権は、国内の反対を押し切って締結に踏み切り、これによって防衛に関する情報などが日韓の間で共有・管理されることになる。
この動きをアメリカも歓迎しているというが、果たしてこれが本当に北朝鮮の脅威に対する正しい対処法なのだろうか。私には疑問である。
だいたいいまのパク・クネ政権の悲惨な状況をみていると、彼らに軍事的な機密情報を知らせてほんとに大丈夫なのかと思うが、たとえこの状況がなかったとしても、私はこの日韓GSOMIAというものに批判的だ。
そもそも日韓の関係というのは、どうにもぎくしゃくする。
日本の自衛隊の艦船が韓国に行くと、旭日旗がどうとか船の名前がどうとかいうことでひと悶着起きる。また、有事の際に日本が在韓邦人を救出するのに必要な情報を、韓国側は渡さないといっているなど、歴史認識問題や領土問題などを背景にした対立が解消しない状況が続いている。これではGSOMIAを締結したことが本当に日本にとってプラスになるのか疑問ではないか。
そして、もっと根本的な問題として、当ブログのかねてからの主張である「軍事的な同盟関係を結ぶことが抑止力になることなどない」ということもあらためていっておきたい。
だいたい、これまでの経緯を考えれば、これで朝鮮半島の情勢が改善するとはとうてい考えられない。
北朝鮮の核・ミサイル開発は、日米韓がプレッシャーをかけていることに対する反応として起きていることであって、ここで日韓がさらに協力体制を強化すれば、北はむしろこれまで以上に核やミサイル開発をハイペースで進めようとすることになるのは疑いようがない。
“抑止力”という同じ理論をもったままで逆の立場に立って考えてみれば、これは簡単に分かることだ。今回の動きは、北朝鮮からすれば「日本と韓国が結束してわれわれに軍事的圧力をかけようとしている。それならこっちは、国を守るためにもっと抑止力を強化しなければ」ということになる。それが北をさらなるミサイル発射や核実験に駆り立てる――ということのほうがよほどありそうだ。
そして中国も、さっそく日韓GSOMIA締結に反発している。これが「地域の安定を損なう」というのである。
少し前に「核の傘」に関して書いた記事とも関わってくるが、中国は彼らの「核抑止」理論に基づいて、核抑止体制を崩すものとして、日米韓が進めるミサイル防衛に強く反発している。ゆえに、先日アメリカが韓国へのTHAAD配備を決定したことも、批判している。
これが単に文句をいうだけなら別にいいのだが、残念ながらそういうわけにもいかない。なぜなら、北朝鮮問題の鍵を握っているのは中国だからだ。
北朝鮮の暴走を抑えるためには中国の力が必要だといわれるが、日米韓が協調してミサイル防衛を進めると、中国がそれに反発して対北包囲網の足並みが乱れるという問題がある。実際に、それがあるために北朝鮮に一致して圧力を加えるということができないという状況は現にあるのだ。日韓GSOMIAが、そういは、その足並みの乱れをさらに深刻なものにしかねない。そして、北朝鮮はその乱れをすかさずついてくるだろう。こういった点からしても、日米韓が軍事的な協力を深めることが日本にとってプラスであるとは思えない。むしろ安全保障環境をより悪化させるおそれさえあるのではないか。
韓国のパク・クネ政権は、国内の反対を押し切って締結に踏み切り、これによって防衛に関する情報などが日韓の間で共有・管理されることになる。
この動きをアメリカも歓迎しているというが、果たしてこれが本当に北朝鮮の脅威に対する正しい対処法なのだろうか。私には疑問である。
だいたいいまのパク・クネ政権の悲惨な状況をみていると、彼らに軍事的な機密情報を知らせてほんとに大丈夫なのかと思うが、たとえこの状況がなかったとしても、私はこの日韓GSOMIAというものに批判的だ。
そもそも日韓の関係というのは、どうにもぎくしゃくする。
日本の自衛隊の艦船が韓国に行くと、旭日旗がどうとか船の名前がどうとかいうことでひと悶着起きる。また、有事の際に日本が在韓邦人を救出するのに必要な情報を、韓国側は渡さないといっているなど、歴史認識問題や領土問題などを背景にした対立が解消しない状況が続いている。これではGSOMIAを締結したことが本当に日本にとってプラスになるのか疑問ではないか。
そして、もっと根本的な問題として、当ブログのかねてからの主張である「軍事的な同盟関係を結ぶことが抑止力になることなどない」ということもあらためていっておきたい。
だいたい、これまでの経緯を考えれば、これで朝鮮半島の情勢が改善するとはとうてい考えられない。
北朝鮮の核・ミサイル開発は、日米韓がプレッシャーをかけていることに対する反応として起きていることであって、ここで日韓がさらに協力体制を強化すれば、北はむしろこれまで以上に核やミサイル開発をハイペースで進めようとすることになるのは疑いようがない。
“抑止力”という同じ理論をもったままで逆の立場に立って考えてみれば、これは簡単に分かることだ。今回の動きは、北朝鮮からすれば「日本と韓国が結束してわれわれに軍事的圧力をかけようとしている。それならこっちは、国を守るためにもっと抑止力を強化しなければ」ということになる。それが北をさらなるミサイル発射や核実験に駆り立てる――ということのほうがよほどありそうだ。
そして中国も、さっそく日韓GSOMIA締結に反発している。これが「地域の安定を損なう」というのである。
少し前に「核の傘」に関して書いた記事とも関わってくるが、中国は彼らの「核抑止」理論に基づいて、核抑止体制を崩すものとして、日米韓が進めるミサイル防衛に強く反発している。ゆえに、先日アメリカが韓国へのTHAAD配備を決定したことも、批判している。
これが単に文句をいうだけなら別にいいのだが、残念ながらそういうわけにもいかない。なぜなら、北朝鮮問題の鍵を握っているのは中国だからだ。
北朝鮮の暴走を抑えるためには中国の力が必要だといわれるが、日米韓が協調してミサイル防衛を進めると、中国がそれに反発して対北包囲網の足並みが乱れるという問題がある。実際に、それがあるために北朝鮮に一致して圧力を加えるということができないという状況は現にあるのだ。日韓GSOMIAが、そういは、その足並みの乱れをさらに深刻なものにしかねない。そして、北朝鮮はその乱れをすかさずついてくるだろう。こういった点からしても、日米韓が軍事的な協力を深めることが日本にとってプラスであるとは思えない。むしろ安全保障環境をより悪化させるおそれさえあるのではないか。
団結した人民に対しては、いかなる人間も勝つことができない
――フィデル・カストロ
カストロが死んだ。
1959年のキューバ革命からおよそ70年。じつに、90歳の大往生である。
以前から健康不安がささやかれていたから、このことで特にキューバで混乱が起きるということはなさそうだ。むしろ問題なのは、カストロが晩年に関係改善を進めていた相手であるアメリカのほうだろう。
トランプ氏が次期大統領に決定したことで、関係改善にむけて動いていたアメリカとキューバの動きが逆戻りするのではないかという懸念が出ている。
実際、トランプ氏はカストロ死去の報に「残忍な独裁者が死去した」と述べ、オバマ大統領がキューバへのさまざまな制裁措置を緩和した大統領令を覆す可能性も示唆している。さすが、「壁を作るのは得意」と豪語するだけのことはあって、無闇に対立を作り出すことにかけては並ぶものない次期大統領だ。
そのような対決的姿勢に逆戻りすれば、斜陽のアメリカにまた一つ不安要素がうまれることになるだろう。
かつてキューバ革命のとき、アメリカは徹底的にこの新生社会主義国家に干渉したが、その結果、逆にキューバを完全に社会主義陣営に追いやる結果になり、それがキューバ危機にもつながった。その歴史の教訓に鑑みれば、対立の先にはアメリカにとっても不利益な結果しかないのはあきらかなのである。
トランプ氏は、キューバを残虐な独裁国家と認識しているのかもしれないが、そのキューバにあるグアンタナモ基地でアメリカは何をしてきたのか。
キューバを“保護領”化する過程で奪い取ったこの基地で、アメリカは世界各地で捕まえた“適性戦闘員”を拘束し、ろくな裁判も受けさせず虐待を行ってきた。グアンタナモ以外にも、アブグレイブやバグラムのことを考えれば、アメリカにキューバを独裁国家呼ばわりする資格はないのである。
……とトランプ次期大統領の話をしていても気分が悪くなるだけなので、ここで話をカストロに戻す。
20世紀の初頭にアメリカの“保護領”となったキューバでは、外国資本と大地主による搾取、そしてそれと結託したバティスタ独裁体制が国民を苦しめていた。
そこに現れたのが、フィデル・カストロである。弁護士であったカストロは、革命家チェ・ゲバラとともに、バティスタ体制打倒のための闘争を開始する。わずか135人ではじまった戦いは、5年ほどでキューバ全土に拡大し、バティスタ打倒に成功したのだった。
この闘争の過程でカストロが民衆を鼓舞するために語ったのが、冒頭に引用したフレーズである。
団結した人民に対しては、いかなる人間も勝つことができない――重みのある言葉だ。もちろん革命後のキューバの社会主義体制にはほめられない部分もいくつもあったろうが、ひどい独裁体制がその前にあったということも忘れてはいけない。それを武装闘争で倒さなければならない状況があってのキューバ革命であり、だからこそカストロは革命家として名を馳せてきたのである。
――フィデル・カストロ
カストロが死んだ。
1959年のキューバ革命からおよそ70年。じつに、90歳の大往生である。
以前から健康不安がささやかれていたから、このことで特にキューバで混乱が起きるということはなさそうだ。むしろ問題なのは、カストロが晩年に関係改善を進めていた相手であるアメリカのほうだろう。
トランプ氏が次期大統領に決定したことで、関係改善にむけて動いていたアメリカとキューバの動きが逆戻りするのではないかという懸念が出ている。
実際、トランプ氏はカストロ死去の報に「残忍な独裁者が死去した」と述べ、オバマ大統領がキューバへのさまざまな制裁措置を緩和した大統領令を覆す可能性も示唆している。さすが、「壁を作るのは得意」と豪語するだけのことはあって、無闇に対立を作り出すことにかけては並ぶものない次期大統領だ。
そのような対決的姿勢に逆戻りすれば、斜陽のアメリカにまた一つ不安要素がうまれることになるだろう。
かつてキューバ革命のとき、アメリカは徹底的にこの新生社会主義国家に干渉したが、その結果、逆にキューバを完全に社会主義陣営に追いやる結果になり、それがキューバ危機にもつながった。その歴史の教訓に鑑みれば、対立の先にはアメリカにとっても不利益な結果しかないのはあきらかなのである。
トランプ氏は、キューバを残虐な独裁国家と認識しているのかもしれないが、そのキューバにあるグアンタナモ基地でアメリカは何をしてきたのか。
キューバを“保護領”化する過程で奪い取ったこの基地で、アメリカは世界各地で捕まえた“適性戦闘員”を拘束し、ろくな裁判も受けさせず虐待を行ってきた。グアンタナモ以外にも、アブグレイブやバグラムのことを考えれば、アメリカにキューバを独裁国家呼ばわりする資格はないのである。
……とトランプ次期大統領の話をしていても気分が悪くなるだけなので、ここで話をカストロに戻す。
20世紀の初頭にアメリカの“保護領”となったキューバでは、外国資本と大地主による搾取、そしてそれと結託したバティスタ独裁体制が国民を苦しめていた。
そこに現れたのが、フィデル・カストロである。弁護士であったカストロは、革命家チェ・ゲバラとともに、バティスタ体制打倒のための闘争を開始する。わずか135人ではじまった戦いは、5年ほどでキューバ全土に拡大し、バティスタ打倒に成功したのだった。
この闘争の過程でカストロが民衆を鼓舞するために語ったのが、冒頭に引用したフレーズである。
団結した人民に対しては、いかなる人間も勝つことができない――重みのある言葉だ。もちろん革命後のキューバの社会主義体制にはほめられない部分もいくつもあったろうが、ひどい独裁体制がその前にあったということも忘れてはいけない。それを武装闘争で倒さなければならない状況があってのキューバ革命であり、だからこそカストロは革命家として名を馳せてきたのである。