昨年相次いだ自衛隊機・米軍機の墜落事故の記憶は、まだ十分に解明され発表されているわけではありません。それでも米軍からの要請があればすぐに飛行を認めるという政府の姿勢に、黙って従うしかないのでしょうか? 私たちは平和に暮らしたいのです。
申入書
在日米陸軍司令官・米陸軍第一軍団司令部司令官 デイブ・ウオーマック少将 様
陸上総隊 日米共同部長 弥頭 親善 様
座間駐屯地司令兼第4施設群長 橋口 尚徳 様
防衛省設置法、自衛隊法、武力攻撃事態法などの改悪案が国会に上程され、4月16日に衆議院を通過しました。
自衛官の総数247,154人は変更しないものの、陸上自衛官の定員を478名減員して、「共同の部隊」を461名増員する。そのうち約240名で、統合作戦司令部を新たに編成するものです。
人数はまだ公表されていませんが、25年3月をめどに中型輸送艇(LSV)と小型輸送艇(LCU)からなる「自衛隊輸送群」を「共同の部隊」として編成することも決定されています。陸上自衛隊から選抜された隊員が海自の術科学校等で艦艇の運行を学んでいます。その任務は、「島嶼部への迅速な機動・展開を可能」「浅い喫水が必要な島嶼部港湾に輸送を実施」と説明されてきました。
しかし、今回国会に上程された「武力攻撃事態及び存立危機事態における外国軍用品などの海上輸送の規制に関する法律」では、海自の部隊が実施する「停船検査」「回航措置」「船上検査」を自衛隊輸送群にも行わせることが明記されています。中国軍の軍事物資の輸送に介入、あるいは阻止することを、自衛隊幹部が構想しつつあることの証左であり、驚きでした。単なる輸送部隊ではなく、陸自出身の隊員に臨検などの危険な任務を担わせようとしています。米軍の沿海域での作戦構想、EABO(機動展開前進基地作戦)に、自衛隊がどう協力しようとしているのか、その一端が見えてきました。米海兵隊の兵士や物資を自衛隊が輸送するようになることは目に見えています。今後9年間で約1万人の陸自隊員が削減されます。「共同の部隊」は次々に新編され、あるいは増員されて行くでしょう。
かつてのアジア太平洋戦争で「帝国陸海軍」が、「統帥権の独立」をかかげて政治の介入を拒否、暴走した反省から、かつての陸軍参謀本部、海軍軍令部のような自衛隊全体を指揮する組織はこれまでありませんでした。「制服組のトップ」とされる統合幕僚長の権限は限定的なものでした。
この座間駐屯地に陸自中央即応集団司令部が置かれたのは2013年のことでしたが、2018年陸上総隊の発足にともない、わずか5年で司令部は朝霞駐屯地に移動しました。この時、陸自の中にも慎重論がありました。陸自が大部隊で戦闘する態勢へ移行することを批判し、「地域とのつながりを重視すべきだ」と主張した幹部もいました。あれから6年、陸自は北海道の部隊を沖縄や奄美大島へ移動させる訓練まで行うようになりました。
法案には「統合運用による円滑な任務遂行を図る必要がある場用に関し、統合運用による円滑な任務遂行を図る必要がある場合には、自衛隊の部隊の全部又は一部を統合作戦司令官に一部指揮させることができる」と、迂遠な言い回しが使われています。常に海自を指揮している自衛艦隊司令官、同じく空自の航空総隊司令官とは違う位置づけです。この間、自衛隊の任務の恣意的な拡大に使われて来た「防衛省設置法第4条第1項第18号に規定する調査及び研究のうち運用に係るもの」が統合作戦司令官と陸上総隊司令官の任務に追加されようとしています。米軍の求めに応じて、自衛隊の任務を簡単に拡大するための法律整備なのでしょう。しかし、真の意図を隠蔽して法案を通過させようとするやり方は、市民の支持も理解も得ることはできないと私たちは確信しています。
そのツケは、自衛官のみなさんの肩にのしかかろうとしています。私たちは戦争への道、軍事衝突への道を日本が坂を転がり落ちるように進んで行くことに深い危機感をもち、反対の声を上げ続けます。
陸上自衛隊のみなさん、在日米陸軍のみなさん、ウクライナ戦争でもガザ地区に対するイスラエルの攻撃でも、兵士と市民が犠牲になるのを私たちは目の当たりにしてきました。ガザでは半年間で約3万3000人もの市民が亡くなりました。約20年に及んだアフガン・イラク戦争では帰国後、自ら死を選んだ米軍兵士は3万6000人に及びました。「戦争反対」の声をともにあげようではありませんか。
2024年4月20日
バスストップから基地ストップの会と参加者一同