ホタルの思い出

昨日の神奈川新聞にホタルの群生が見られる場所のことを
書いた記事が載っていました

我家からは歩いても行ける場所ですので、
「行ってみようか？」夫が言ったのですが
私はホタルが怖いのです。
ホタルはとても幻想的ですが、
戦争映画や、「ホタルの墓」のように
人の生き死に関連する事に良く出て来ますので
何か私にとって不安を呼び覚ますような気がしてなりません。

もう３０年以上前になりますが、
母方の伯父が出張のついでに我家に寄って行ったことがありました。
彼はあるメーカーの社員で、綿を求めて世界中を飛び廻っていました。

東京出張の次はロシアへ行く予定とかで、
その夜の最終便に乗るために羽田まで送っていく途中の事でした。

繊維業界は不況の兆しで、彼は非常に忙しい毎日を送っていたようです。
「後２～３年もしたら絶対この業界も良くなるよ」と言っていましたが
そのまま、繊維業界の不況は長く続き、
数十年後に日本でも有数の会社だったこの会社が無くなる事は
想像もしていなかったと思います。

坂道を下りながらふと見ると伯父の背中の後ろを
一匹のホタルがつかず離れず飛んでいます。
我家の近くには小川もありませんし、
何か不思議な感じでした。
なんであの時ホタルが飛んでいたのかは今もって分かりません。

忙しい日々を送っていた彼はその年の健康診断を受けず
気づいた時は手遅れの肺がんでした。

沢山の優しさを残してこの世を去っていった伯父は
会社の盛大な葬儀の中で、最早私の伯父ではありませんでした。
優しい、優しい人でした。

私のホタルの怖い理由です。