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世田谷パブリックシアタープロデュース 『4 four』

2012-11-26 | 舞台/DVD

世田谷パブリックシアター シアタートラム(小劇場)で、『4 four』 25日(日)開演13:00を観てきました。

※ネタバレがありますのでご注意くださいませ。

【作】川村毅
【演出】白井晃
【照明】齋藤茂男
【美術】松井るみ
【キャスト】
池田鉄洋:F
田山涼成:O
須賀貴匡:U
高橋一生:R
野間口徹:男

【ストーリー】※パンフレットより
何もない、けれど全てがある空間。
そこには黒い箱がひとつある。
箱に誘われるように現れる5人の男。
彼らはそれぞれ、黒い箱に開いた穴から紙片を取り、そこに書かれたことに目を落とす。

裁判員に選ばれた大学職員
法務大臣
拘置所の刑務官
未決囚
役割は4つ。

一人は去り、残された4人は順に長いモノローグを始める。
罪と罰、悔恨と恐怖、孤独と虚無、過去と未来、希望と夢。
それぞれの独白、その断片は次第に他の役割の人物の言葉と呼応し、男たちを結ぶ「事件」の像が浮かび上がって来る。

罪とは何か。
それを犯した人間を、同じ人間が裁き、罰を与えることは可能なのか。
虚実を往還する4人と1人の果てなき遊戯(ゲーム)に、終幕は訪れるのか。
そしてその時、男たちは‥‥。

公式twitterはこちら → 『4 four』


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今回は千秋楽でもあり、この後地方公演もないので、いつもはほとんど書かないネタバレも書いておこうかと思います。それだけ印象に残る作品だったということです。
おそらく今年観劇した中では、ベスト3に入るのではないかと思われます。

通常の公演とは異なる舞台が作られており、チケットには席番が明記されておりませんでした。当日、チケットにある通し番号から席が割りふられていきます。
あの急勾配の席は全部取り払われ、グレーの床がむき出しになっており、そこに割りふられていた番号が印してあります。スタッフさんによって、「世田谷パブリックシアター」と書かれた木箱が置かれ、座布団をその上の乗せるとそれが席になるのです。

客入れの音楽、音響はなし。
舞台美術といっても特にステージはなく、客席と同じ高さの床が中央に円形に残してあるだけです。そこに、例の木箱が山と積まれ、芝居開始後にキャストさんたちによって端に寄せられていきます。
天井からは見るからに丈夫そうな絞首刑用のロープがぶら下がっております。
照明は横一列に、ダークグリーンでホーロー製のレトロなライト。その次に直管の蛍光灯。これが順番にストライプ状に設置されております。

芝居は唐突に始まっていきます。野間口さんが最前列のお客さんに注意事項とお願いをぼそぼそと話して回っている横で、ふと、見るとほかのキャストさんたちも三々五々、ふら~っという感じでごく自然に観客のように客席に現れ、空いている席に座ったり、またふら~っと客席の間を縫うように歩いてみたり。芝居の間中、こんな感じで客席も使われていきました。
演出の狙いどおりに、観客もただの観客としてその場にいることは許されず、いつの間にかこの5人と同じ境遇、気持ちを味わっているような、なんとも不思議な感覚に陥っていきます。
特にはっきりとした説明はありませんけど、おそらくこの5人はたまたま選ばれてこの場でこの遊戯(ゲーム)を続けているのではなく、無差別殺人の被害者家族という同じ境遇をもっており、トラウマを治療、もしくは解消するべく、演劇療法を行なっているのだろうと思われます。
もしそうなのだとしたら、なんて辛く苦しく、残酷な遊戯(ゲーム)なのでしょう。理不尽極まりない突然の暴力によって、自分の大切な人の命がゴミ屑のように一瞬で消されてしまったのですから。。
それでも、彼らは生きていかなければならないのです。自死を選ばない限り、寿命がくるまで耐え難い現実の中で。

ラスト近く、未決囚役の高橋一生さんが黒い袋状のものを頭に被せられ、膝を黒いひもで縛られ、首に絞首刑用のロープを掛けられ、足元の木箱が外され絞首刑が行われます。もちろん、安全対策で高橋さんの背中のフックに命綱がはめられ、怪我などはないようにはなっているのですけど、このシーンはかなり衝撃的でした。。
ラスト、「窓‥」という台詞と共に、バックに暗いながらもわずかな光が縦にすーっと入っていきます。このシーンはとても印象的で、救いようのない残酷さの中で微かに希望が見えてきたように思えました。

被害者と加害者。
生と死。
裁かれるものと裁くもの。
この相反することの中で、人は一体どうやって自分自身と向き合い、折り合いをつけていくのか。。 そんなことを考えさせられる、素晴らしい演劇らしい演劇でした。
とてつもなく重く暗い設定であるにもかかわらず、どこか懐かしいような不思議な感覚を覚えながら観ておりました。それはきっと、全く救いようのない状況なのに、それぞれが自分と必死に向き合い、もがき苦しむさまは人間そのものであり、愛おしさすら感じたからではないかと。
そして、いつなんどき自分や自分の大切な人たち、知り合いなどが被害者になるかもしれない恐怖と不安。もっといえば、被害者ではなく加害者になってしまうかもしれないということ。
このことこそ、忘れてはいけないことなのかもしれません。「生」とは平均寿命まで一直線に間違いなく続いている、という保証はどこにもないのですから。
誰にとっても、明日はわからない。「今」、ここに、こうして生きていることに感謝しなければいけないのかもしれませんね。

それぞれのキャストさんたちはどなたも上手く、きっちりと自分の役割を果たしており、舞台上で役の人物として生きておりました。
特に、高橋一生さんはシャープさが増し、人懐っこい笑顔の刹那、狂気をたたえた殺人者の表情に変わるさまには背筋がぞっとしました。元々、狂気を表現できるいい役者さんだなぁ~とは思っておりましたけど、さらにレベルが上がってきたようです。

カーテンコールは4回。キャストさんたちの紹介はなし。4回目は、作の川村毅さんと演出の白井晃さんも登場されました。


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割りふられた席番が印刷されている紙片の裏側。これはノーマークですけど、それぞれの役割にマークしてあるものもあったようです。野間口徹さんの説明によれば、「あってもただそれだけです」とのことです(笑




席になった木箱。パンフレットの写真を借りました。




パンフレット、B5判1,000円也。全ページモノクロで、キャストさんたちのこの作品に対する真摯な想いが綴られております。




フライヤーの束から、例によって気になるものをチョイス♪ 親族代表、復活だそうですよ^^ 


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余談です。
高橋一生さん、この方はものすごく演技の振り幅が広くて、数年前に深夜枠の連ドラ 『怪奇大家族』 に主演されたときには、情けないへたれのフリーター役でしたっけ。ものすごく、あらら~というようなシーンでも全力で演じておられましたね。夜の商店街を白い下着姿で絶叫しながら、格好悪い走り方で疾走とか‥ 女の子のように体育座りで腕を胸のあたりに引き寄せ、「キャー!!」と絶叫するとか‥ 都合が悪くなると、職質されかねない挙動不審ぶりで目がきょときょと泳ぐとか‥
多分ほぼ同時期に、「相棒」で小日向文世さん演じる連続殺人犯の心の闇に引き寄せられ、自分自身が模倣犯となってしまう、精神科医の助手役もやっておられたはず。今回の未決囚の役とリンクしていますね。
あぁそういえば、『怪奇大家族』の脚本は確か、今回のキャストさんの一人、池田鉄洋さんの所属する「猫のホテル」の主宰でもある千葉雅子さんだったかと。
いろいろ奇遇というのか、ただ単に演劇界が狭いだけなのかしらね?


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☆追記です。

世田谷パブリックシアタープロデュース 『4 four』での演技が評価され、高橋一生さんが「平成24年度(第67回)文化庁芸術祭」の演劇部門で「芸術祭賞新人賞」を受賞されたそうです。ソースはこちら→【 演劇ニュース】
おめでとうございます すごいですね~^^
私も同じ空間で、あの空気感を体感できたことに感謝です♪


☆再び追記です。
財団法人 光文文化財団が主催する「第16回鶴屋南北戯曲賞」が、17日に発表され、受賞作には、川村毅『4 four』と東憲司『泳ぐ機関車…アリフレタ炭鉱町ノ…少年ノ物語…』の2作品が選ばれたそうです。
おめでとうございます
 
候補にはこのほか、土田英生『少しはみ出て殴られた』、竹内銃一郎『満ちる』、中島かずき『シレンとラギ』、長田育恵『青のはて−銀河鉄道前奏曲−』の4作品が挙がっており、贈呈式は3月15日(金)に東京會館で行われ、正賞のブロンズ像と副賞100万円が贈られるそうです。

「シアターガイド 演劇ニュース 2013/1/22」 


☆再度、追記です。 2015.9.23

先日、フジTVの「ごきげんよう」を観ていたら、なんと池田鉄洋さんと野間口徹さんがご出演されておりました!
いろいろお話されていたけど、興味深かったのは新婚さんな池田さんのお話。
奥様との馴れ初め、実はご自分が出演されていた舞台を観劇されていた奥様に一目惚れ♥ 仕事中にもかかわらず、「綺麗な女性だなぁ~♥」と気になって仕方がなかったとか。
↑ お気持ちはわからなくもないんですが、お仕事中ですよ~集中してね(笑
で、その舞台はどうもこの『4 four』らしいんですよね~お話からすると。
えっと、、あの暗く重い内容のお芝居中に、奥様になられる方にロックオン!されていたんですね。
おい、おい(笑
なんでも終演後、楽屋にどなたかの面会にいらしてたとか。たまたま野間口さんのお知り合いだったそうで、そこから、、ということだそうです。
こんなことってあるのですねぇ。。ドラマみたいね♪





 












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