ノアの小窓から

日々の思いを祈りとともに語りたい

白髪になっても

2015年07月18日 | 聖書

                                 
                                     



                  神よ。あなたは、私の若いころから、

                   私を教えてくださいました。

                   私は今もなお、

                  あなたの奇しいわざを告げ知らせています。

                   年老いて、しらがになっても、

                  神よ。私を捨てないでください。

                   私はなおも、あなたの力を次の世代に

                   あなたの大能のわざを、

                  後に来るすべての者に告げ知らせます。    (旧約聖書・詩編71篇17節18節)   
 











茶の間

2015年07月17日 | 日記



               


    ハマさんは、一日に何度も郵便受けを見に行く。

    玄関を開けて、小さな庭の植え込みの間の砂利道を踏んで、
    
    郵便受けを開けに行く。

    ポストには、めったに何も入っていない。

    ほとんどの郵便物は、隣り合わせの二世帯住宅の子供の郵便受けに

    配達されることになっている。


              


     ハマさんは言った。

    「電気代の請求が来ないんだけど」

    「いっしょにはらっているから大丈夫ですよ」と、お嫁さん。

    「水道代はどうなっているかねえ」
     
    「大丈夫ですよ。いっしょに支払っているから。前にそう言ったでしょう」

    「ひろしさんは、最近訪ねてこないね」

    「大丈夫。そのうち、尋ねてきますよ」

    「あーちゃんたちは、どうしているんだろうね」

    「元気ですよ。昨日、スカイプで顔を見たでしょう」

    「どうして、手紙をくれないんだろうね」

    「スカイプで、話ができたでしょう」

    「郵便が遅れてるんだねえ」

    「心配しなくても大丈夫ですよ」


            


    ハマさんは、茶の間のガラス戸をたたく。

    「さっちゃん、まだ、何も言ってこないんだけど」

    「大丈夫よ。さあ、入ってお茶飲みましょう」

    「さっちゃんを待っているんだから」

    「中で待てばいいでしょう。お茶が冷めますよ」

    「電気代の請求がこないんだけど」 

    「大丈夫よ。お茶を飲みましょう」

    「もう一回見てくるよ」

    「私が見に行きますから、おばあちゃんは上がって。ほら、水ようかんよ」

    「そうだねえ。ひろしさんはどうしたかねえ」

     









イエスのことば

2015年07月15日 | 聖書





              空の鳥を見なさい。種蒔きもせず、刈入れもせず、
              倉に納めることもしません。
              けれども、あなたがたの天の父がこれを養っていてくださるのです。
              あなたがたは、鳥よりももっとすぐれたものではありませんか。
  
              あなたがたのうちだれが、心配したからといって、
              自分のいのちを少しでも延ばすことができますか。
                                (新約聖書・マタイの福音書6章26節27節)





         









ヒロキ君

2015年07月13日 | 




         ヒロキ君に、私は、一度も会ったことはありません。

         ヒロキ君のことは、
         ヒロキ君のご家族やヒロキ君を知っている大勢の人たちを通して知ったのです。

         自閉症児のヒロキ君は、家族の愛につつまれてのびのびと育ち、

         お父さんの身長を超えるまでになっていました。

         コミュニケーションが苦手なヒロキ君ですが、言葉も話せ、ひとりで散歩にも行きました。

                ★  


         ある日、ヒロキ君は散歩に出て、帰らぬ人となってしまいました。

         15歳、高校に行くことが決まっていたときでした。

         最近、ヒロキ君のご家族からヒロキ君についての本をいただきました。




              


              

         
      ヒロキ君のパパは、自閉症児が主人公の映画を作りました。


         ヒロキ君が生きていたら体験したかもしれないちょっとメルヘンな物語です。
         本を書き、メガホンを取ったのはヒロキ君のお父さんです。




                  ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★


                   「ぼくは、うみが みたくなりました」。
                        2002年10月1日発行・ぶどう社

                     「おさんぽいってもいいよぉ~」
                         2009年4月1日発行・ぶどう社

         

         
         
      


スピーカーズコーナー

2015年07月11日 | 思い出



      初めてロンドンへ行ったとき、まだよく英語も聞きとれないのに、スピーカーズコーナーへ行った。
      観光案内地図を見ながらハイドパークのその場所に近づくと、

      いる、いる、何組ものひとだかり。
      黒山の人だかりなんて大きなものはなくて、
      ちょっと人をかき分ければすぐに前に出られそうな円陣。

      30年も昔だから、スマホなんか持っている人もなくて、どこかのどかな光景でした。

      小さな箱の上とか脚立に乗って、見物人より少し高い目線で話している。
      デモでも、運動でもないのでたいていは一人。ビラを配る人がついていたりしない。

      当時は、ほとんどが男性のスピーカーだった。

      人だかりが明らかに少ないスピーカーの前で佇んだ。
      白髪の初老の男性で、くたびれたジャケットを着ていて、背中も丸い。
      それでも、案外力強い声で、内容がそこだけ、私にもわかった。

      「私はずっと独身で来た。妻や子供を養うなんてお金の無駄だし、人生を楽しくひとりで
      生きてきたんだ。

      すかさず、採れたてのリンゴのようにつややかな顔色の
      若い男からヤジが飛んだ。
      「よく言うよ、あんたは、妻子を養う金がなかっただけだろう。オッサン」と
      言うようなニュアンスだった。

      スピーカーの男性は、瞬間、悲しそうな顔になった。
      私は、何となく彼を気の毒になった。

      スピーカーはひるまなかった。

      「キミにはまだ人生を語ることはできない!」、
       すると、別の見物人が、反論した。
      「家族を作ってこそ、人生だ」

       笑い声が起こった。

                 


      驚いたのは、スピーカーの男性が、だんだん生き生きしてきたこと。
      くたびれた服も、乱れた白髪頭も、しわを刻んだ顔も、なんとなくそれゆえ、彼を
      素敵な役者に見せている・・・。

      なぜ、こんなことを思い出したのだろう。

      何か言いたいのに胸にためている人がたくさんいる時代を感じたからかもしれない。

      東京にも、スピーカーズコーナーをたくさん作ったらどうかしらと思ったりする。

       ネットができない人も案外いるのだし、

      だいいち、、現実に喋っている人と、丁々発止(ちょうちょうはっし)するって健康的ではありませんか。

      え?! 日本人には向かない?ですか。