
朽ちていこうとしている椿の花。
なんだかとても美しく思えて・・・・・・・。
落ちた椿の花を見ると、必ず思い出すことがある。
地方公演で富山に行ったことがある。
色々と悩んでいる時期で、寝られなくて
あさ早くに、ひとりで旅館を出てあてもなくブラブラしていたら
神社みたいなところに、大きな椿の木があって
お清めのための手水鉢の中に
一個の大きな椿の花が浮いていた。
ものすごく大きく、ものすごく美しく
ものすごく鮮やかな真っ赤な色に圧倒された。
その光景がとても印象的で、
今でも目をつぶると頭の中に見える。
色々なことに悩んでいた時代だったし、
ひとりっこで団体行動が苦手な自分が
ひとりで朝早くに、何も知らないところにいる寂しさを
そのたった一つの椿の花に投影していたのかもしれない。
それ以来、木になっている椿より、落ちている椿に
心奪われるようになった。
しかし、あんな大きな椿の花は、以来一度も見たことがない。
心の状態が悪かったから、その鮮やかな椿が
特に大きく見えたのかもしれないな。
落ちた椿の花は、若い頃のほろ苦い想い出の花である。