夢を見た。
久しぶりの夢だった。
浅草だった。
内海桂子師匠が出てきた。
そしてその横に私の好きなあの人も出てきた。
あの人は優しそうに微笑んでいた。
一緒にお茶をしに行くことになる。
あの人が私に誘ってきた。
優しい眼差しで言われ、嬉しくなった。
生まれて初めてのことだった。
どこでお茶をしたらいいのか?
どこかのデパートをうろうろして、エレベーターに乗ったら目が覚めた。
お茶する以前の問題だった。
ドキドキして緊張しているうちに目が覚めた。
内海桂子師匠は浅草にいたときだけ出てきた。
そもそも有名人や芸能人と個人的にお茶等したことが無いに等しい。
たまたま入った喫茶店で衝立を隔てて隣に好きな芸能人が事務所の他人と座ったことはあった。
その時は私はファンの他人と一緒だった。
芸能人と別の仕事を持っている二足のわらじの他人とは食事をしたことはあった。
あったが嫌な奴だったので、縁を切った。
とかく二足のわらじと言うのは中途半端なのだ。
上から目線でものを言う他人で、こちらが悪くもないのに、謝罪ばかりしていたので、縁を切った。
歌も歌詞を良く間違えていた。
そんな奴は応援はしないのだ。
しかしたとえ夢の中でも好きな芸能人が出てきてお茶に誘われたことは嬉しかった。
途中で目が覚めたが嬉しかった。
それは私のささやかな夢だったからだ。
青山通りのオープンカフェでお茶をして、行き交う他人を眺めながらたわいもない会話をする。
たった一つの夢だった。
その夢は果たせぬまま、叶わぬまま、その芸能人はこの世を去った。