落葉の積もる場所

- The way I was -
 

 2年間   

2013年09月08日 | WEBLOG













夢はわずか一夜の 心の拠り所




    夢は見た瞬間、 淡く消えて行く




































































1970年、 

暖かな陽だまりが忘れられないほど優しい春の出来事でした。






小学校の始業式。

5年生になるボクは、相も変わらぬおバカな日々を過ごすはずでした。、



そう、  ごく普通の小学5年生としての毎日を。

 














ボクの名前は  岩井 心(しん)。


活発でボキャも豊富な性格だったせいか、友だちもたくさんいました。

男子・女子、 共によく遊び よく学ばなかった。











その友だちの中のひとりが、 エリちゃん。



スポーツに長けていて、おまけに美人。

ボクが密かな思いを抱いていたことは否定しません。












そして、エリちゃんもボクのことを…、、

    - 妄想に浸るのも、ボクの勝手だった -






































小5・春の始業式の翌日、


エリちゃんがいつもとは明らかに違う表情をして近づいて来た。




    (あとでわかったことだが、いつもと違う顔は始業式の日からでした)





















    『今日、授業が終わったら ひとりで図書室へ来てくれる?』




    「あー、 うん、  わかった」









とても拒否なんか出来ないほど 「大人の目」がボクを捉えていました。































エリちゃんは待っていました。



同じクラスなのに、ボクのちょっとした悪戯のせいで

担任のフジモト先生に足止めを食らったから、30分の借りを作ってしまった。















でも、そんな遅刻など気にもせず、エリちゃんは静かに待っていました。


















   心くん


   よく聞いてね。


   実は  私 51歳の世界から来たの。


   51歳の私は 夜中、神様にお願いしたの。


   一番 楽しかった 小5、小6の時に戻してくださいって。


   2年間でいいから、


   あの輝いてた時間に戻して…って。


   そして、2年間  心くんと仲良しでいさせてくださいって。















ボクは黙って聞くしかなかった。


彼女の切れ長の目は黒く涼やかて、 めちゃくちゃ澄んでいた。    












   神様は私の願いを聞き入れてくれた。


   信じられないでしょうけど  お願いだから 私の言葉を信じて。







             そして 2年間 私とお付き合いをして。

































こうしてふたりの交際は、 始まった。



























それは楽しい日々だったよ。









レコード屋さんに行って、これから誰が流行るのか、と尋ねると、

エリちゃんは  



   尾崎紀世彦、かぐや姫、井上陽水から

     B'z、Glay、Superflyまで、知ってる限りのミュージシャンを列挙。










経済  -  これからも日本は右肩上がりだけど、

1990年代に入るとバブル景気なるものがはじけて、

2001年から少しずつ回復、


でも2008年 リーマンショックで再び破綻するの。










政治  -  自民・社会・民社・公明・共産の主要政党から、

分裂・離合集散を繰り返し、なんと社会党から総理が出るのよ、



それから民主党という政党が政権を取って混沌とする話、 など。





























いろんな話を聞いて、


いろんな事を覚えて、









あっと言う間に2年間は過ぎて行く。



























キスの方法だって覚えた。



エリちゃんのキスは、甘く 優しく  いつもボクはトロけるだけだった。









































そして、1972年の3月。




神様との約束の2年間が終わりを告げる日がやって来る。



















   たぶん私は記憶を失うわ。


   それは仕方のない事なの。





   でも 私との日々は いつまでも心くんの胸にしまっておいて。




















そう言うと、 エリちゃんは、それまでのキスとは比べ物にならないくらい、


                        濃厚な接吻をボクにくれた。















いつまでも その余韻に浸っていたいボクにウィンクを残して、



                 エリちゃんとの2年間は終わりを告げた。




















































中学校の入学式、







ボクはエリちゃんに視線を投げてみたけど、



             彼女はごく普通に挨拶を返してくれただけ。






























                 【すべては終わったんだ】



























































































































































2011年3月。











静かな部屋に 密かな声が聞こえる。












   「あんたら疲れとるけえ 少し休みんさい」


        母の声だ。









   「母ちゃんこそ先に休めよ」


        弟夫婦だ。


   














































線香の香りと作り物の灯火の中、


白い衣裳に包まれて、


              静かにねむるボク。







































51歳の世界から来たのは




                そう 哀しいけど  ボクのほうだった。





































































































































































































      拙い創作(つくりばなし)でした。


      お付き合いいただき どうもありがとうございました。。