2018年4月11日 聖教新聞
犬猫との“別れ”に備える
愛するペットとも、いつか“別れ”の時が来ます。飼い主として後悔しないように、その準備はしておきたいもの。今回は、年老いた犬や猫の飼い方について、獣医師で、さいたま市にある「ウスキ動物病院」院長の臼杵新さんに聞きました。
では、犬猫の中年・老年は何歳からか。飼育環境や遺伝による個体差はありますが、大型犬は2、3歳、小型犬と猫は7歳を過ぎたら、いわば“おじさん・おばさん”。
さらに大型犬は8~10歳、小型犬は12~14歳、猫は15歳を過ぎたら“おじいさん・おばあさん”といえます。
老化に伴って身体機能が衰え、病気になりやすくなるのは人と同様です。骨粗しょう症や変形性関節症で体の動きが悪くなることも。犬の散歩は距離を短くして、ゆっくり歩くなど配慮が必要です。
中には、視覚や聴覚などの五感が鈍くなったことで警戒心が高まり、攻撃的になる場合も。性格が変わったというより、老化による自然な行動の変化と見守りましょう。
一方、環境の変化には適応しにくくなるので要注意。例えば、飼い主の衛生面からはお勧めできませんが、犬猫と一緒に寝る習慣を、老化で排せつ機能が低下したからといって変更すると、ペットには大きなストレスに。老いる前に、別の場所で寝るしつけが理想的です。
また“認知症”になると夜泣きや徘徊などをしますが、まずは腹が減ったのか、喉が渇いたのか、居心地が悪いのか確認を。優しく声を掛けたり、なでたりすると落ち着くことがよくあります。
ペットへの愛情は、病気の時に飼い主が望む治療法にも表れます。高度医療は高額で誰でもできるわけではありません。でも、高齢な飼い主に多いのが「年だから病気で死ぬのは当然」といった考え。諦める前に、わずかな治療で寿命が延びる場合があることを知ってほしいですね。
仮に、犬や猫の寿命が1年延びたら、人だと5、6年も長生きしたことに。日頃から早期発見を心掛け、何か病気のサインを見つけたら、まず獣医師に相談しましょう。
屋外で飼っている場合は、そのサインを見落としやすいので注意してください。
私が幼い頃に飼っていた犬は、感染症にかかって他界。ワクチンで予防できる病気だったと知り、無知な飼い方を後悔しました。その償いを込め、獣医師を目指すことに。診療は「分かりやすい説明」「どんな症状にも向き合う」「飼い主の心に寄り添う」の三つを大切にしています。
ペットが元気なうちは考えたくもないことですが、飼い主として「最後まで命に責任を持った」と言えることが、“別れ”を迎えた後の心身に大きく影響します。
心にぽっかり空いた穴は、愛するペットとの楽しかった思い出が埋めてくれるはず。時間も必要ですが、可能ならば、新しいペットを飼うのも癒やしになるでしょう。
ただ、世代別の犬猫の飼育率は50代が最も多く、高齢な飼い主は“今、飼っている犬や猫が死んだら、新しく飼い直さない”傾向が。年齢的に最後まで面倒を見る自信がないのが、主な理由です。
1人暮らしの高齢者には、こうした心配でためらう人も少なくありません。その際は施設で触れ合えるセラピー犬や“猫カフェ”など、別の形で動物に癒やされる暮らしを考えてもいいと思います。
また、ペットロスに陥らないよう、前もって多頭飼いをする人もいるでしょう。ただし、老年の犬猫にとって若い“新入り”が加わると、ストレスになることも。年齢差は平均寿命の半分を限度にすることをお勧めします。
何より大切なのは、ペットが亡くなるまで飼い主自身が健康を保つこと。そして自分が先に逝ったらペットをどうしてほしいか、周囲に伝えておけると安心です。
新たな飼い主を探すには、町の動物病院を活用するのも一つの手。信頼できる獣医師に相談してみてください。
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