op's weblog

文字通りのログ。経験したことや考えたことの断片のアーカイブ。

『渇き(Thirst)』

2010年04月27日 23時49分00秒 | Weblog
パワフルで、残酷で、愉快で、意外で、息をつかせず、野暮で美しく、後に残る作品を『復讐者に憐れみを』『オールドボーイ』と続けてつくったパク・チャヌク監督。だがその後に鳴り物入りで発表された『親切なクムジャさん』は正直残念なできであったと言わざるを得なかった。『スナッチ』以後のガイ・リッチーのようになってしまうのかと半ば覚悟しながら上映終了間近の昭島駅前に行き、『クムジャさん』タッチのポスターを見てまた気が重くなったのだが…


神父を演じるため痩せてまるで別人になったソン・ガンホ氏は、眼鏡までかけて、身のこなしまでまるでペ様。実際、監督のインタビューを読むと、当初、主人公はソン氏を想定していなかったそうだ。

映像の色調と音楽はいつものパク・チャヌク作品である。病院での仕事(と呼ぶのかな?)の行き詰まりから致死性の高いウィルスの臨床実験に志願し、輸血によって吸血鬼になってしまった神父と、夫の家から逃げ出す術を持たず、裸足で夜の通りを疾走することしかできない女。状況設定も十分。松たか子をもう少し美人にした感じのキム・オクビン氏は、珍しく思い切りの悪い?脱ぎっぷりにこちらも戸惑いを感じてしまったが、やはりキュートで生命感にあふれ(吸血鬼になった後は特に)、ハリボテの人形のような日本の女優さん達とは大違いである。(まあ男のほうもそんなもんだが。)

初期設定も万全、話も適度に転がってゆき、真っ白に塗りこめた室内等舞台美術もOK。数少ない主要な登場人物も全員良い演技をしており、シン・ハギュン氏の恐ろしいギャグ?などはインパクト満点。

だが、やや間延びした印象を受ける箇所がポツポツ見受けられた。道具立てが揃っているのに、もう一つ“振れ幅”が小さいのだ。話ももっと乱暴に転がしていいのではないか。ソン・ガンホ氏も、インタビューで「より長いディレクターズカット版でなくてよかった」と語っていたらしい。何であんなに普通にお行儀よくつくってしまったのだろう。もちろん、その都度色々考えさせられる場面も多いのだが(そういう意味では十分フクザツなのだが)、カタルシスが…

いつものようにきちんとKOしてくれ!


公式サイトで鳩山首相夫人が感想を述べているが、結構普通の意見だったのでちょっと意外でした。

4月26日(月)のつぶやき

2010年04月27日 01時55分02秒 | Weblog
00:44 from web
『第9地区』観てきました。観ましたが、何を見過ごしたのかちょっと勉強します。とりあえず15、6年前秋葉にいたころよく見かけたPCゲームを思い出しましたが、昔も今もゲームって滅多にやらんのよね…
01:04 from web
@yamanaka_h 平河町時代は、お伺いするたびおいしいコーヒーごちそうしていただきました…その節はお世話になりました。
12:52 from web
この映画の“呈示のされ方”(それはそのまま僕の印象)を一言で言うと、「クリエイターとしてのニール・ブロムカンプ氏を丸ごと作品にしてみました」。 『第9地区』 http://bit.ly/bPpKoY #utamaru氏に弄ばれるのも一旦休憩できるかなw
22:38 from web
パク・チャヌク監督の『渇き』(Thirst)観てきました。『クムジャさん』での失点を取り戻せたか?ちょっと疲れ気味なので詳しくは明日…
by maxthaler on Twitter

『第9地区』

2010年04月26日 12時45分28秒 | Weblog
見始めてまず気づくのは、擬似ドキュメンタリー手法の使い方が上手だなあということ。主人公ヴィカスを演じたシャルト・コプリー氏も、プロとしての映画俳優のキャリアはさておき、演技に関しては素人ではなく、実際上手い。

…で、この映画の“呈示のされ方”(それはそのまま僕の印象)を一言で言うと、「クリエイターとしてのニール・ブロムカンプ氏を丸ごと作品にしてみました」。氏のバックグラウンドを読むとあまりにもモロであった。

だから昨晩レイトショーから帰宅して、すぐツイートしたとおり、シューティング・ゲームというのはやはり大きなキーワードの一つであった。その後どのような読み方ができるのか色々考えたりネットを見てみたり(聴いてみたり)久しぶりに買った映画のパンフレット(結局これが一番役に立った)を読んだりしたのだが、結局のところ、「“ブロムカンプ氏の構成要素”が全てである。それ以上でも以下でもない」。これは決して悪い意味ではない。これをこのレベルでやってのけるのはたやすいことではないだろうと、素人でも推察できるからだ。

パンフレットの中のレビューで小西未来氏が引用している、脚本家アレックス・カーツマン氏のコメントは、だから色々な意味でブロムカンプ氏の“特性”とその“成果”を言い表している。
「もし、『第9地区』の脚本を渡されていたら、映画化は絶対無理だと助言していただろうね。クールなアイデアが詰まっているけれど、こんなストーリーを成立させるのは至難の技だ。なによりスタジオがこんな企画にゴーサインを出すはずがないからね」

よって、特にこの映画の倒錯的・アイロニカル・シニカルな部分を十分利用してこの映画を十分楽しむには、ブロムカンプ氏の構成要素に対する親和性(単純な好き嫌いではない)のようなものが高くないとちょっと難しい気がする。


さて、今日はまた別の確認というか、もしかしたらカタをつけに新宿まで…?

ツイッターノミクス(THE WHUFFIE FACTOR)

2010年04月25日 17時00分08秒 | Weblog
原著の表紙はどこかで見たようなデザインだし、日本語版の装丁の方がカッコいいです。但し、表紙に顔が出ている津田氏はちょろっと解説を書いているだけです。

『ツイッターノミクス』という題で、帯には「B2B、B2CからC2Cへ!!」となっているので、もっと動的になっているウェブコミュニケーションの現状について語っているのかと思いましたが、実際は『双方向性を重視したネット・マーコム(マーケット・コミュニケーション)の啓発書』という感じです。ビジネスパーソン向けですが、PRの仕事をしていたり、PRについて専門的に学んだ人たちにとっては、使用するツールはさておき、正直なところ考え方の点で目新しいところはないでしょう。

インハウスのPRやマーケティング担当者にとっては、ターゲットとのコミュニケーションについて、広告と“伝統的な営業”しか頭に無い社内のキーパーソン達に読んでもらえるよう仕向けやすい題名と内容かもしれません。

ツイッターのUIを見ているとまるで汎用機時代の固定長レコードで作成したDBを見ているようですが、Ustreamしかり、その“非洗練ぶり”がネットでのコミュニケーションに慣れた人たちには丁度良いツールなのでしょう。言うまでも無いことですが、”事態”は今も急速に動いている最中なので、しっかり取材して分析して本を書くというペースでは、もはや出版された時にはこの本のように既に古くなってしまった事例を扱うことになる確率が高いです。日本でも“ダダ漏れ”やソフトバンクの孫氏のツイッターをはじめ、様々な点でより直接的な1対1、1対多、多対多のコミュニケーションの影響が出てきていますし、“生きてゆき方”(うまい表現がちょっとみつかりません)についての新しい試みという点では、僕がツイッターでフォローしているだけでもToshioOkada氏やrioysd氏のように、それぞれ独自の非常に興味深いラディカルな活動を始めた人達がいます。

一番確実なのはやはり自らが個人としてその流れに入ってみること。旧来型のマスメディアのように、自分が留まって観察しようとしても、そのスピードについてゆけず、ボヤけたスナップショットしか撮れない。“現場”に近いスピードで動きながら、ツイッターのように短いログを残し続けるしかないでしょうね。