橋下知事は、そろそろ限界にきているのではなかろうか、と思う。自分に対する思い入れが激しくなり過ぎた政治家は、いくら庶民派を気どっていても、未来に禍根を残す政策を残してしまいかねないからである。彼はまさに、そういうところに差し掛かっている政治家と言える。
民主主義の根本は投票という民意の反映である。議会制度をとっている限りは、選挙民の代表者たる議員が、一応(というのは、いまや日本の民主主義そのものが変質してしまっているからである)選挙民の代表者であるから、さまざまな議案の決定に際しては、議員の論議(現在はかなりいい加減である)を尽くして後の、投票によって議案が決まる。スタイルとしてはこれがまっとうなものだろう。現在の日本国民の政治不信は、議員たちの資質や、世襲制や、庶民感覚の欠如、汚職等々がもたらした結果であるから、これは政治のスタイルとは別物であると考えるべきだろう。
政治の裏表を知り過ぎた政治家もどうかと思うが、それより怖いのは何も知らない素人政治家なのだ、ということが、今回の大阪知事の橋下知事が提案している記名投票制度の案件によって証明された感がある。彼には現在だけがあるのであって、後の政治など考えてもいないのだろうと思う。政治における記名投票などは、ヒトラーでさえ出来なかったことである。橋下知事は、いまは少なくとも大阪府民の支持率が味方しているようだが、その政治スタイルの独裁性に至ってはヒトラーさえ及ばない。今回の記名投票に関するもっともまともな意見を述べているのは、皮肉なことに慣れ過ぎた政治集団たる自民党議員たちである。彼らは投票は、無記名が本来の姿であり、その結果が民意の反映なのだと主張している。そうだ、これがまっとうな意見である。そして、これが民主主義の原則である。共産党は正反対のことを言っている。一見橋下知事の支持をして、記名投票の賛成をしているかのようだが、実はそうではない。彼らは、絶対少数派として、自らの政策や考え方を世に知らしめる良き機会だという捉え方でしかない。一番いけないのは民主党である。どっちつかずの意見をのたまわっている。まさに自分たちが国政を握れるかも知れないという、瀬戸際の中で何をすれば国民受けをするかだけを考えているのだろう。自民党は敗北すればよろしいが、これでは、民主党になっても世の中よくはならない。
卑近な例を出す。教師時代に、全校生徒に対して授業の在り方について、各教師に対する無記名投票をさせようという提案を職員会議に提案したことがある。長年教師として授業していて、自分たちが知らず知らずのうちに、何らかの思い込みに陥って、生徒にとって無意味な授業をしている可能性があったら、それを正していこうという趣旨であった。予測はしていたが、提案したら、猛烈な反対論者たちがなりふり構わぬ攻撃をしてきた。彼らの主張は、教師の授業を評価させるのであるから、生徒には当然記名させるべきだというのが、彼らにとっての最大の妥協点だった。記名投票などして、アンケート実施に反対して睨まれたらたまったものではない。まともなデータなどとれるはずがない。僕はあらん限りの政治的工作、なだめすかし、事項の数えきれない書きなおし、等々によって、何とか職員会議を通過させた。たぶん学校始まって以来の、全校生徒向けの、授業アンケートの実施だった。成果は勿論あったが、自分勝手な思い違いをしている教師たちにとっては、手痛い結果を手にすることになったわけで、残念ながら、アンケートは一度だけしか実施できなかった。逆に有名? 塾などでは、経営者が好んで小学生相手に無記名投票をさせる。この結果で塾の講師の給与が決定されるのであるから、アンケートの対象者の年齢や、目的によっては、おかしなことも起こっていることも認めざるをえない。無記名投票が悪質に利用される場合もあるということである。制度というものは、原則が正しくても、運用の仕方を間違えれば、悲惨な結果を生む。
投票に際して、投票そのものに対して反論はできはしない。しかし、記名投票を主張する側の人間は、本来、出来るだけ選挙や、投票という民主主義的な行為から離れていたいのが心情であろう。要するにためされたくないのである。橋下知事さん、あなたの気分、感情は理解できないこともない。しかし、あなたは地方自治体といえど、その代表者なのである。将来に禍根を残すような制度を創ってはならないと痛切に思う。善意の人の思い込みは、ときとして、最も怖いものだと思う。今日の観想である。
○推薦図書「うらおもて人生録」色川武大著。新潮文庫。優等生がひた走る本線のコースばかりが人生ではないと色川は書き始めます。ひとつ、どこか、生きる上で不便な、生きにくい部分を守り育てていくことも大切なのだという論調の人生訓をこそ、橋下知事には一度読んで頂きたいものです。みなさんもどうぞ。
京都カウンセリングルーム(http://www.medianetjapan.com/2/17/lifestyle/counselor/)
Tel/Fax 075-253-3848 E-mail yas-nagano713@nifty.com
ヤスの創る癒しの場 (メルマガ)
http://merumaga.yahoo.co.jp/Detail/15970/p/1
民主主義の根本は投票という民意の反映である。議会制度をとっている限りは、選挙民の代表者たる議員が、一応(というのは、いまや日本の民主主義そのものが変質してしまっているからである)選挙民の代表者であるから、さまざまな議案の決定に際しては、議員の論議(現在はかなりいい加減である)を尽くして後の、投票によって議案が決まる。スタイルとしてはこれがまっとうなものだろう。現在の日本国民の政治不信は、議員たちの資質や、世襲制や、庶民感覚の欠如、汚職等々がもたらした結果であるから、これは政治のスタイルとは別物であると考えるべきだろう。
政治の裏表を知り過ぎた政治家もどうかと思うが、それより怖いのは何も知らない素人政治家なのだ、ということが、今回の大阪知事の橋下知事が提案している記名投票制度の案件によって証明された感がある。彼には現在だけがあるのであって、後の政治など考えてもいないのだろうと思う。政治における記名投票などは、ヒトラーでさえ出来なかったことである。橋下知事は、いまは少なくとも大阪府民の支持率が味方しているようだが、その政治スタイルの独裁性に至ってはヒトラーさえ及ばない。今回の記名投票に関するもっともまともな意見を述べているのは、皮肉なことに慣れ過ぎた政治集団たる自民党議員たちである。彼らは投票は、無記名が本来の姿であり、その結果が民意の反映なのだと主張している。そうだ、これがまっとうな意見である。そして、これが民主主義の原則である。共産党は正反対のことを言っている。一見橋下知事の支持をして、記名投票の賛成をしているかのようだが、実はそうではない。彼らは、絶対少数派として、自らの政策や考え方を世に知らしめる良き機会だという捉え方でしかない。一番いけないのは民主党である。どっちつかずの意見をのたまわっている。まさに自分たちが国政を握れるかも知れないという、瀬戸際の中で何をすれば国民受けをするかだけを考えているのだろう。自民党は敗北すればよろしいが、これでは、民主党になっても世の中よくはならない。
卑近な例を出す。教師時代に、全校生徒に対して授業の在り方について、各教師に対する無記名投票をさせようという提案を職員会議に提案したことがある。長年教師として授業していて、自分たちが知らず知らずのうちに、何らかの思い込みに陥って、生徒にとって無意味な授業をしている可能性があったら、それを正していこうという趣旨であった。予測はしていたが、提案したら、猛烈な反対論者たちがなりふり構わぬ攻撃をしてきた。彼らの主張は、教師の授業を評価させるのであるから、生徒には当然記名させるべきだというのが、彼らにとっての最大の妥協点だった。記名投票などして、アンケート実施に反対して睨まれたらたまったものではない。まともなデータなどとれるはずがない。僕はあらん限りの政治的工作、なだめすかし、事項の数えきれない書きなおし、等々によって、何とか職員会議を通過させた。たぶん学校始まって以来の、全校生徒向けの、授業アンケートの実施だった。成果は勿論あったが、自分勝手な思い違いをしている教師たちにとっては、手痛い結果を手にすることになったわけで、残念ながら、アンケートは一度だけしか実施できなかった。逆に有名? 塾などでは、経営者が好んで小学生相手に無記名投票をさせる。この結果で塾の講師の給与が決定されるのであるから、アンケートの対象者の年齢や、目的によっては、おかしなことも起こっていることも認めざるをえない。無記名投票が悪質に利用される場合もあるということである。制度というものは、原則が正しくても、運用の仕方を間違えれば、悲惨な結果を生む。
投票に際して、投票そのものに対して反論はできはしない。しかし、記名投票を主張する側の人間は、本来、出来るだけ選挙や、投票という民主主義的な行為から離れていたいのが心情であろう。要するにためされたくないのである。橋下知事さん、あなたの気分、感情は理解できないこともない。しかし、あなたは地方自治体といえど、その代表者なのである。将来に禍根を残すような制度を創ってはならないと痛切に思う。善意の人の思い込みは、ときとして、最も怖いものだと思う。今日の観想である。
○推薦図書「うらおもて人生録」色川武大著。新潮文庫。優等生がひた走る本線のコースばかりが人生ではないと色川は書き始めます。ひとつ、どこか、生きる上で不便な、生きにくい部分を守り育てていくことも大切なのだという論調の人生訓をこそ、橋下知事には一度読んで頂きたいものです。みなさんもどうぞ。
京都カウンセリングルーム(http://www.medianetjapan.com/2/17/lifestyle/counselor/)
Tel/Fax 075-253-3848 E-mail yas-nagano713@nifty.com
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