ポガチャルの最初のアタックは勝つためのものではなく、逃げ集団に追いつくためのものでした。アタックの途中で補給のドリンクを取り損ねたポガチャルを、逃げ集団から降りて来たトラトニックが待ち、ボトルを渡すと二人で連携して先頭集団に取り付いたのです。先頭集団に追いつくまではポガチャルも交代して前を追う姿勢を見せていましたが、しばらくはそこで脚を休めます。乳酸除去能力が高いとされるポガチャルならではの戦術でしょう。残り91kmで先頭集団に合流したポガチャル、それを1分差で追うプロトンという構図に持ち込んだのです。これが勝利への第一段階でした。
後続のプロトンはベルギー勢が懸命に追いかけますが、その直後にログリッジがピッタリとマークに入っていました。これは見事なチームワークでしたが、3週回目に突入する頃には先頭とのタイム差は30秒台にまで縮まっていました。
トラトニクが仕事を終えて下がる78km迄は脚を休めていたポガチャルが再び動き出します。この時もポガチャルに最後まで食い下がったUAEのチームメイトのシバコフを無理に振り切ろうとはせず、シバコフが切れた51.6km地点までは二人で先頭交代をしながら走っています。これが勝利への第2段階でした。
この時点でエヴェネプールやファンデルプールとの差は僅か1分にも満たないものでしたが、牽制のアタックが繰り返されるばかりで、なかなか差が縮まりません。エヴェネプールもファンデルプールも追走で次々とアシストを失って行きます。ゴールまで51km、周回にして2周回弱。100km以上あった時点で飛び出したポガチャルにとっては単独でも逃げ切れる距離になっていたのです。
ただ、ここからがポガチャルにとっての試練になります。本来なら単独になった時点で1分以上のマージンが欲しかったのですが、それがなかなか出来ずにいたのです。1分あればサポートカーが間に入ることができるので、補給やメカトラの心配がなくなるからです。
乳酸回復能力が高いポガチャルにとって補給は重要で、今年のツールでは一度補給のミスからヴィンゲゴーに敗れたステージがありました。ステージレースなら翌日以降に取り返すことも可能なタイム差ですが、ワンデーレースでは致命傷になってしまいます。
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