今年のツール16日目は2度目の休養日明けでしたが気温が38℃を超える猛暑の中をスタートすることになります。今年はオリンピックの関係でパリ・シャンゼリゼではなくニースでの個人TTで幕を下ろすためスプリンター勢にとっては最後の平坦ステージとなりました。
そんなスプリントステージをせいたのはフィリップセンでした。昨年はマイヨヴェールを獲得し、今年もミラノ~サンレモでポガチャルを抑えて優勝。今年もマイヨヴェールの最有力候補に名が挙がっていたのですが、降着や落車が響き、ここ迄はギルマイに次ぐ2位でしたが、このステージは完璧なアシストを受け、ファンデルプールの背後から発射したフィリップセンがロングスプリントで完勝。
この日は残り1.5km地点のラウンドアバウトに差し掛かったところで、集団中ほどに位置していたギルマイが落車に見舞われます。180/1という悲運。188.6kmのステージの残り1.5kmでの落車でスプリンター達の運命が変わってしまうのです。この落車で脚を負傷したギルマイが翌日から続くアルプスの厳しい山岳を乗り切れるのか?そんな疑問さえ頭を過るステージでした。
17日目からツールの舞台はアルプスへと向かって行きます。今年のツール・ド・フランスは逃げに適したステージが少なく、ここまで逃げ切り勝利はわずか3つ。そんな逃げ屋たちの数少ないチャンスとなったのが、アルプス山脈を舞台にしたサン・ポール・トロワ・シャトーからシュペルデヴォリュイに向かう177.8kmでした。
大会も17日目ともなると大きなタイム差が付いているので、総合優勝に絡まない選手の逃げが容認される傾向が強くなるのです。また、スプリントステージが無いことから、この日はバイクを降りるスプリンターも出ています。前日の落車の影響が気になっていたマイヨヴェールのギルマイの姿はありました。
アクチュアルスタートを切った集団には強い横風が吹きつけ、ワウト・ファンアールトやティシュ・ベノートなどヴィスマ・リースアバイクの選手たちが集団分断を試みます。また逃げ切りを狙うEFエデュケーション・イージーポストやDSMフィルメニッヒ・ポストNLも積極的に仕掛けたため、最初の50kmは平均速度47km/hに達するハイペースで進行。
残り63km地点の中間スプリントは逃げたマグナス・コルト、ボブ・ユンゲルス、ロマン・グレゴワールが通過し、残るポイントを右膝に白いネット包帯を巻いたギルマイがスプリントでフィリップセンを抑えてゲット。どうやら大きなケガにはならなかったようです。
1級山岳ノワイエ峠(距離7.5km/平均8.1%)の登りではマルタンとマドゥアスが先頭4名に追いつき、人数の絞られていく追走集団からサイモン・イェーツが加速。先頭6名に合流し、そのまま踏み続けたイェーツは単独先頭に立ちます。
その背後からEFのリチャル・カラパスがスティーブン・ウィリアムズと共に迫って行きました。カラパスはウィリアムズを振り落とすハイスピードでイェーツにジョインし、1級山岳の頂上手前1.8km(残り13.3km)地点でアタックします。cannondaleのSupersix EVOに乗るカラパスが後続を引き離して行くのは爽快でした。
ここまでもミラノ~トリノのアルベルト・ベッティオルの勝利やジロのゲオルグ・シュタインハウザーのステージ優勝を見て来ましたが、ツール・ド・フランスでのステージ優勝はカラパスの悲願だと知っているので尚更でした。ここまでジロとブエルタでは勝っていて、東京オリンピックの金メダリストでもあるカラパスは何故かツールに縁が無かったからです。昨年は新型Supersix EVOのお披露目でカラパスには期待していたのですが、落車で早々にリタイヤしていたのです。
懸命に追走するサイモン・イェーツに37秒の差を付けてゴールしたカラパスはツール初勝利を飾ることが出来ました。7分以上後方のプロトンでは、総合優勝争いが起きていて、一度はポガチャルのアタックで遅れかけたものの下りで追いついたレムコ・エヴェプールがプロトンから飛び出しポガチャルから10秒タイムを奪い返します。一度はレムコを見送ったポガチャルでしたが、最後にスプリントを見せヴィンゲゴーから2秒というタイム差を奪うのです。
3分以上のタイム差がある中で2秒を取りに行くというのは、並みの選手なら無謀と非難されそうですが、ポガチャルは「最後の山岳では脚のストレッチができた」と言ってのけるのですから、次元が違います。
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