バラエティ番組はあまり観ないのですが、昨夜はスポーツクライミングの森選手が出演すると知り、「踊る!さんま御殿」を観ました。注目はパリオリンピックでのボルダー第1課題の高さに対する森選手の感想でしたが、「高いなと思ったんですけど…スタート。でも自分の脚力とかあれば(行けると思った)自分の実力不足です」と真剣な表情で振り返っていました。明石家さんまも流石で「かわいそう」ではなく「それが世界のルールやもんな!」と返し、森選手も「はい!」と元気よく返事をしていました。
私が最も興味深かったのが、彼女の登り方に関する発言でした。明石家さんまから握力について尋ねられた森選手は「45(kg)ぐらいですかね…」と答えた後に、周囲の驚きをよそに「クライマーの中では低い方だと…」と本人は首をかしげていたのです。確かに成人男性の平均と比べれば高い数値なのですが、アスリートとしては本人が言うように決して高い方ではありません。
この握力でどうしてあんなに登れるのかという疑問には「私は引っかけて上るタイプで。第1関節から上を使って引っかけるような登り方。腕に乳酸を溜めないようにしている。腕だけで登るんじゃなくて体幹とか足のかかとか使っている」と答えていたことでした。「攀じる」とは「物に登るのに取りすがるように動く」ことと先に書きましたが、森選手は指先と体幹と足のかかとを使って壁面やホールドに取りすがる登り方、まさに「攀じる」という言葉を体現しているように感じました。
その結果、腕に疲労物質の乳酸を貯めずに登ることが、森選手のスタミナの秘訣だったのです。瀬戸選手も言っていましたが、乳酸は最終的には筋肉内でエネルギーに替わるのですが、クライミングでは爆発的なパワーではなく持久力が必要で、乳酸がエネルギーに替わる域には入らないようです。
これはロードバイクでも同じで、坂で高い出力を必要とするようなシーンでは、乳酸がエネルギーに替わることも起きるのですが、低出力の長時間走行だと乳酸が徐々に蓄積されて疲れが蓄積されて行くのです。
今は乳酸は単なる疲労物質ではないという説が有力なのですが、リード種目で世界一の森選手が「競技中は乳酸との戦い」と力説していたので、スポーツクライミングでは乳酸は未だ疲労物質なのかもしれません。
たかがバラエティ番組と侮るなかれで、水泳のメダリスト瀬戸と世界一のスポーツクライマーの森のアスリートとしての意見は大変参考になりました。運動後のクールダウンの必要性やこの乳酸問題など、大いに参考になる発言が多く、楽しく観させていただきました。
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