繊維ニュース2013年7月3日号より転載
大同マルタコレクション
京都捺染業の貴重な遺産
大同マルタ染工のOBで結成する大同マルタ会が保有するプリントコレクションを披露する展示会「京都からアフリカへー大同マルタコレクションに見る1960年代の京都の捺染業」が8月10日まで京都工芸繊維大学美術工芸資料館(京都市左京区)で開催中だ。
2008年大同マルタ染工が閉鎖された際、同社が保有していた生地見本や技術資料は基本的に親会社の東洋紡と事業譲渡先である黒川工業(現・黒川ダイドウ)に移管された。ところが大同マルタ染工には、それ以外にも意匠課見本室にプリント製品見本などが大量に存在した。これらはほとんど廃棄処分されたが、その廃棄物の中から埃だらけの段ボール箱に入った見本箱数個が見つかり、大同マルタ会によって保管されていた。
大同マルタ会がこの資料群を日本繊維技術士センターの萩原理一氏の協力を得て調査したところ、大同マルタ染工の前身である大同染工最盛期の輸出用ローラープリントと意匠研究のために収集された世界各地の民族衣装・プリント341点が発見される。
この貴重な資料群が散逸するのはあまりにも惜しいことから大同マルタ会で保管し、写真集・明細書を作成、大学など研究機関と博物館・美術館に配布したところ反響は大きく、とくに京都工芸繊維大学からコレクションを広く社会に披露したいとの申し出あり、今回の展示会開催となった。
大同マルタ会の吉岡悠氏は「銅ロールに版を彫り、染料で繊維を“染める”プリントは、現在のインクジェットプリントなどとは根本的に異なる。捺染の本当の良さを見直す機会になればと」と話す。大同マルタ会の田中頌会長も「今では日本から消えてしまった技術も多い」と指摘。奇跡的に廃棄を免れた貴重なコレクションは、繊維業界の人にとっては必見の価値があるといえよう。
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