21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

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核のゴミ捨て場となりかねない核燃サイクルの負担が集中する青森県下北半島:関電 救済のために電気事業連合会が使用済み核燃料中間貯蔵施設の電力各社による共同利用 を現地に申し入れ

2021-01-09 10:31:33 | 記事
《第91回・脱原発市民ウォーク in 滋賀のご案内》

毎月おこなっている脱原発市民ウォーク・イン・滋賀は、11月から12月にかけて関電本店から福井県美浜町の関電原子力事業本部までリレーデモがおこなわれましたので、12月は休みとしました。次回の第91回脱原発市民ウォークは2021年1月30日(土)におこないます(13時半、JR膳所駅前広場に集合)。どなたでも自由に参加できます。ご都合のつく方はぜひ足をお運びください。


■■核のゴミ捨て場となりかねない核燃サイクルの負担が集中する青森県下北半島
■■関電救済のために電気事業連合会が
■■使用済み核燃料中間貯蔵施設の電力各社による共同利用を現地に申し入れ

原発の稼動により生じた使用済み核燃料を一時保管することを目的とした青森県むつ市の中間貯蔵施設(注参照)はもともとは東電と日本原子力発電の使用済み燃料を貯蔵することを前提に建設されてたものなのですが、大手電力10社でつくる電気事業連合会と経産相の幹部は12月18日、青森県知事とむつ市長に面会し、この施設を電力各社が共同で利用する案を説明しました。この電力各社による共同利用という提案は、運転開始から40年が経過している関電の老朽化原発を再稼働させる前提として、福井県外に中間貯蔵施設を建設するための候補地を明示することを福井県知事から求められている関電を支援することを狙ったものです。(注:東電と日本原電の共同出資による、再処理に供されるまで使用済み燃料を一時的に保管するとされている中間貯蔵施設。正式名称は「リサイクル燃料備蓄センター」、来年度の操業開始を目指しています)

東日本大震災以前に発電量の5割近くを原発に依存していた関電は、火力発電のコストなどがかさみ経営状態が悪化しているものの、現在、定期検査、テロ対策施設の工事が遅れていることなどにより関電の原発は全機が停止しており、来年1月半ばに予定する大飯4号機の運転再開までは「稼動ゼロ」の状態が続く見込みです。そのうえ、今年度はコロナ禍による減益幅が270億円にも及んでいるため、関電は原発を早期に稼働させ、コスト圧縮で業績改善につなげることを狙っています。このため、自社の原発内の使用済み燃料保管用プールが満杯状態に近づきつつある関電の森本孝社長は12月18日の記者会見で、中間貯蔵施設の共同利用の提案に「高い関心がある。積極的に参加したい」と述べており、福井県知事にも今後この共同利用案を説明するとしています。

12月18日に電事連からむつ市の中間貯蔵施設の電力各社による共同利用の方針を示された青森県の三村申悟知事は「まったく新しい話。本日は聞き置くというだけにする」と答え、面会後の取材に応じて、各地から集まった使用済み核燃料が(再処理に供されずに)そのまま県外に搬出できなくなるとの懸念について「青森県を最終処分場にしない。そうなるような方向性が少しでもあれば徹底的にやる」と述べたとされています。

また、中間貯蔵施設が設けられる青森県むつ市の宮下宗一郎市長は電事連による施設の共同利用案の説明に対して、中間貯蔵施設がなし崩し的に最終処分場に化してしまうことの懸念を伝えたうえで、「むつ市は核のゴミ捨て場ではない。全国の使用済み燃料の受け入れ先がなぜむつ市なのか。その必然性はない。全国で探すプロセスが全くないまま、共用化ありきの議論はできない。一方的に霞が関の決定を押し付けるようなことがあってはならない」とあらためて強い反発を示し、受け入れを否定しています。なお、関電は2018年にも、むつ市の中間貯蔵施設を東電などと一緒に利用する案を検討しましたが、事前に報道されると宮下市長が反発したため断念しています。

しかし、中間貯蔵施設の共同利用の動きについて、大手電力会社の幹部は「当初は関電のためだったが、他の社も使用済み燃料を保管する選択肢が増えることは悪い話ではないと納得した」としており、別の大手電力の幹部も「老朽原発の再稼動はいずれどこの社も課題となる。関電が先導役として流れをつくってもらえばありがたい」としています。経産省にとっても2030年までに発電量に占める原発の比率を20~22%にするという政府の目標の達成には、老朽原発の再稼動の実現は欠かすことができません。また菅新政権が掲げた2050年までに温室効果ガスを「ゼロ」にするという目標に向けて経産相は「今ある原発を最大限に活用する」と明言しており、経産省の幹部は「老朽原発の再稼働のためには解決しないといけない根本的な問題。他に選択肢はない」としています。

現在、国内の使用済み燃料は、再処理工場など核燃料サイクル関連施設がある青森県六ヶ所村に一時的に貯蔵されており、事業者の日本原電は青森県ならびに六ヶ所村と協定を結び、保存期間を30~50年と確約しています。しかしながら、最終処分地が決まらない限り、なし崩し的に最終処分地となる懸念が存在しています。また、青森県知事は歴代の経産相との間で、同県を最終処分候補地から除外することを申し合わせていますが、その実効性はあいまいです。このため青森県を最終処分地にさせないことを目的として市民団体「条例制定を求める県民の会」が今年8月22日に青森県内で結成されており、発起人の浅石紘璽弁護士(八戸市)は「(県と経産相の申し合わせは)ただの口約束で、実体のない空手形だ」と批判しています。

青森県知事、むつ市長など青森県の関係者と青森の市民が「青森県が全国の核のゴミ捨て場にされてしまうのではないか」と強く懸念するのはなぜでしょうか?それは青森県の下北半島に原子力(核)関連施設(建設中の原発、再処理工場をはじめとした核燃サイクル関連施設)が全国で例を見ないほどに、また世界的にも例を見ないほどに、集中的に存在していることが背景にあるのではないかと考えられます。既に様々な原子力(核)関連施設を受け入れてしまっているため、今度も、全国の使用済み燃料の中間貯蔵施設を国や電力業界から押しつけられ、挙句のはて、高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定の計画が難航し見通しが立たないなかで、青森県が実質的な最終処分地にされてしまうのではないかという懸念を青森県の関係者や市民が抱くのは当然のことではないでしょうか。

青森県の下北半島に原発関連施設が集中していると記しましが、どのような核関連施設が下北半島に存在しているかを青森県のホームページに掲載されている情報(2019年10月1日現在)に基づいて以下に紹介します。

半島最北端の大間町に電源開発(Jパワー)のフルMOX原発(核燃料の全量にMOX燃料を使用する軽水炉)が建設中(停止中、審査待ち)、東通村には東北電力の軽水炉(稼働停止中、審査待ち)と建設中の東電の軽水炉(工事中断、審査待ち)、六ヶ所村には日本原電のウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、使用済み燃料の再処理工場、MOX燃料工場(建設中)、むつ市にはこのたび共同利用の提案が行われた使用済み燃料の中間貯蔵施設(来年稼動予定)。
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/energy/g-richi/gennshiryokukannrennshisetu.html

また、むつ市には旧原子力船関連施設も存在しています。下北半島の面積は1876?、滋賀県の面積は4017?ですから、滋賀県の半分の広さに満たない地域に三カ所の原発も含めてこれだけの原発関連施設が存在していることになります。

日本では原発立地県は使用済み燃料を県外に搬出することを条件に原発を受け入れています。しかし強い放射線を出す原発のゴミすなわち使用済み燃料を受け入れたいという都道府県は存在していません。そのような状況の中で全国の使用済み燃料を受け入れているのが青森県なのです。また、原発を立地している県はあちこちに存在していますが、上記のように、ウラン燃料の製造施設、ウラン燃料を使用する原発(通常の軽水炉)、使用済み燃料の受け入れ施設である中間貯蔵施設、廃棄物処理のための施設である放射性廃棄物埋設・貯蔵管理センター、使用済み燃料からプルトニウムとウランを回収するための再処理工場、再処理で得られたプルトニウムを用いてMOX燃料を製造する施設、製造されたMOX燃料を用いて発電を行う原発(フルMOXの大間原発)という核燃サイクルに必要な一連の施設がすべてそろっているが青森県の下北半島なのです。

沖縄県には在日米軍基地が集中的に存在しており、沖縄が本土に復帰した後も長きにわたり基地の負担に人々が苦しんでいることはよく知られています。しかし、下北半島の六ヶ所村に再処理工場が建設されていることは知っていても、本州の北端、青森県にこれほど核関連施設が集中的に存在していることを知っている方は多くはないのでないでしょうか。また、これらのさまざまな施設が下北半島に集中的に設けられていることにより核燃料サイクルを志向する現在の原発政策が国策として成り立っていることを知らない方々は少なからずおられるのではないでしょうか。青森県は、下北半島は、まさに核燃料サイクルにいつまでも固執する日本の原発政策の命運を握っている存在なのです。このため、地域の振興・活性化をエサに核燃料サイクルという国策を押し付けられた青森県・下北半島は、まさに「オキナワ化」している存在であると言っても過言ではないでしょう。しかしながら、このような存在であるにも関わらず、青森県・下北半島は全国の人々の注目を集め十分にその存在を認知されることはなく、片隅に追いやられ無視され忘れられているのです。

以上のような状況を考えるならば、このたびの中間貯蔵施設の共同利用という「国策」に基づく提案に青森県知事が難色を示し、むつ市長が受け入れ拒否を表明していることは当然であると言えます。このたびの提案は元々は関電が老朽化原発を稼動させる前提として福井県外に中間貯蔵施設を建設することを福井県知事と約束していたことに端を発したものです。しかし、これ以上青森県・下北半島に、そこで暮らす人々に、負担をかけることは許されません。関電は東電と日本原電がむつ市の建設した中間貯蔵施設を電力会社の共同利用に供するという口実のもとに自社の使用済み燃料の貯蔵施設として使用することを断念すべきです。

今年、北海道の二つの自治体が原子力発電環境整備機構(NUMO)の募集に応じて高レベル放射性廃棄物最終処分場の候補地として手を挙げましたが、世界の原発保有国のなかで本格的な処分場を完成させ実用に供している国は皆無であり、原発2基を保有しているフィンランドが建設中であるに過ぎません。最大の原発保有国である米国はかつてユッカマウンテンに1兆円ちかく費やし地下処分場を完成させたものの、オバマ政権時代に安全性を理由にその使用を放棄しています。このように最終処分場の建設は技術的に極めて困難であるため、NUMOによる最終処分場建設計画がいつ実現するかはまったく不明であるとしか言えません。したがって、このような状況の下では原発を稼動させる限り使用済み燃料は増える一方であり、中間貯蔵施設建設の問題は今後も長きにわたり解決できないでしょう。できることは、使用済み燃料をこれ以上増やさないこと、すなわち原発の稼動を止めることしかありません。

核燃料サイクル計画はもともと高速増殖炉「もんじゅ」で再処理により得られたプルトニウムを使用することを主目的としたものでしたが、「もんじゅ」建設計画は困難を極め、結局は原子力規制委の勧告により高速増殖炉計画は放棄されました。本来であれば計画の目玉であった「もんじゅ」の計画が実質的にとん挫した段階で核燃料サイクル計画そのものを放棄すべきであったのですが国は放棄しませんでした。このことがこのたびの中間貯蔵施設問題の混乱を招いているのです。

*上記の一文は最近の朝日新聞、毎日新聞、河北新報の記事、NHKニュース、
「新外交イニシアチブ」代表の猿田佐世氏の
下北半島に関するレポート
青森県のホームページなどの内容を参考にして記したものです。

2020年12月29日

《脱原発市民ウォーク in 滋賀》呼びかけ人のひとり:池田 進

〒520-0812
大津市木下町17-41 
電話/FAX:077-522-5415
メールアドレス:ssmcatch@nifty.ne.jp

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