21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

<脱原発 市民ウォーク in 滋賀> の 活動報告、お知らせなど を掲載 ♪
ときどき、トピックも ~☆

ロシア軍による ウクライナの原発・核関連施設への攻撃 について

2022-03-29 20:15:48 | 記事
《第103回脱原発市民ウォークのご案内》

コロナ禍がまだ続いていますが、桜の季節になりました。
次回、103回目の脱原発市民ウォーク in 滋賀を4月2日(土)に
おこないます(午後1時半、JR膳所駅前広場)。
どなたでも自由に参加できます。ご都合のつく方はぜひ足をお運びください。

■■ロシア軍によるウクライナの原発・核関連施設への攻撃について■■

今回の案内では原発のテロ対策についての続きを掲載する予定でしたが、去る2月24にロシア軍によるウクライナ侵攻が始まり、そのなかでウクライナの原発や核関連施設が攻撃対象とされるなど、危険極まる深刻な事態が未だに続いているため、テロ対策の続編の掲載は延期し、ロシア軍によるウクライナの原発・核関連施設への攻撃という問題について記すことにします。原発を国内に多数保有している日本の市民として、この問題をどのように受け止めるべきなのか、様々な考え方があるものと思われますが、とりあえず私の個人的な考えを以下に記します。この問題を考えるに際して参考にしていただければと思います。

《ロシア軍によるウクライナの原発・核関連施設への攻撃の概要》

まず、ロシア軍によるウクライナ侵攻の初日、2月24日、チェルノブイリ原発が攻撃を受け制圧されました(チェルノブイリ原発は1986年に4号機が大事故を起こした後、1~3号機は国際的圧力もあって廃棄されています)。次いで、3月4日、ウクライナ南東部にある欧州最大級であるとされるザポロジエ原発(原子炉6基、総発電量は600万キロワット)が攻撃を受け、同原発の敷地外にある研修施設が炎上、その後ロシア軍に制圧されました。検査期間中であったため攻撃時に稼動していたのは1基だけでした。この攻撃については「ウクライナの当局は冷却する機能が失われた場合、放射性物質が放出され、チェルノブイリや福島第一原発などこれまでに起きた原発事故を上回る規模の事故になるおそれがあり、さらに敷地内には使用済み核燃料の貯蔵施設もあり砲撃によって損傷した場合、放射性物質が放出されるおそれがあると警告している」と報じられています
(以上は3月4日NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220304/k10013513381000.html
などによる)。

また、3月6日と10日には、核物質を扱っているハリエフの物理技術研究所(原子核物理学の研究施設)が攻撃にさらされ、複数の施設が破壊されています。

《原発を多数保有している日本の市民としてロシア軍による原発に対する攻撃という事態をどのように受け止めるべきなのでしょうか》

ロシア軍の原発・核関連施設への攻撃はおそらく原発施設を制圧し電力供給を支配下におくことを意図としたものであり、原発自体を破壊することを目的としたものではなかったのではないかと推測されます。しかし、戦闘行為では意図せざる誤爆や誤射が付きものであることを考えるならば、まかり間違えば、攻撃を加えたロシアの側や周辺の国々までもが極度の放射能汚染にさらされ、福島第一原発事故やチェルブイリ事故を上回る破局的な事態になりかねない危険極まる行為であったことは紛れもない事実です。

このたびロシア軍による原発と核関連施設に対す攻撃が行われたことを知って、原発の賛否に関係なく、日本でも多くの人々が「またしてもチェルノブイリ原発や福島第一原発における原発事故のような事態に至っていたならば・・・」と身震いするような思いに駆られたのではないでしょうか・・・

とりわけ、日本を含めて原発を数多く保有している国々は、原発・核関連施設に対する攻撃という事態に冷や水を浴びせられる思いをしたことでしょう。このたび、原発に対する軍事攻撃という事態がロシア軍により実際に引き起こされるまでは、日本も含めていずれの原発保有国も、戦時には原発が攻撃され破局的な事態になりかねないという、原発の存在に伴う避けることができない最も重大な問題点を直視することを避けてきたのではないでしょうか。多数の原発を保有しているにもかかわらず「戦争と原発」という問題にこれまで目をそむけ続けて一度たりとも真剣に考えずにやり過ごしてきたものの、このたびのロシア軍による原発攻撃により、「戦時には原発の存在が破局的事態を招きかねない」という、いわば「不都合の真実」に目を向けざるを得なくなったと言えるのではないかと思います。
(注:「不都合な真実」:クリントン政権下で副大統領を務め2000年の大統領選で敗れたアル・ゴア氏の地球温暖化問題の深刻さを記した著作の題名)

いまさら言うまでもありませんが、原発の安全性には多々問題があり、このため安全性を高めるための様々な対策が十分ではないにしても講じられてきました。しかしながら、それらの対策は原発へのテロ攻撃に対する対策を含むものではありましたが、戦時を想定したものではありませんでした。戦時に原発の破壊を目的に意図的に効果的な攻撃が行われたならば、すなわち、原子炉が破壊されるに至ったならば、未曽有の大災害、文字通り破局的事態に至ることを確実に防ぐ手立ては事実上まったく存在していないと言っても過言ではないでしょう。このような破局的事態を確実に避けるには、もちろん戦乱や紛争に巻き込まれることがないよう最大限の外交的努力をはらうことが必要ですが、それだけではなく、根本的には原発を廃止するしか他に道がないと考えざるを得ないのではないかと私は考えます。

戦時に原発が攻撃目標にされるという事態が現実に起きてしまったという事実を前にして、私たちはそのような危険を覚悟してまで原発を持つ必要がいったいどこにあるのかという、根本的な疑問に突き当たらざるを得ません。私たち日本の市民は、ヒロシマ・ナガサキの原爆投下を経験しただけではなく福島第一原発の大事故も経験しました。それにもかかわらず依然として多数の原発を保有している日本の市民として、原発に賛成であっても反対であっても、今一度この機会に立ち止まって、原発の必要性について根本から真剣に考え直すべきではないでしょうか。

3月22日付けの朝日新聞が報じていた世論調査(19、20日に実施)の結果によれば、停止中の原発の再稼働に賛成の人々が38%、反対の人々が46%とされており、賛否の差は一段と縮まりつつあるものの、一方において、「日本の原発が他国から攻撃される不安を感じるか」という設問に対しては、《不安を感じる》とした人々は59%であり、「不安を感じない」とした人々の35%を大きく上回っていたとされています。

しかし、このような状況のなかで、「政府は、原発への軍事攻撃がウクライナ侵攻で現実の脅威になったとして、軍事攻撃から原発を防衛することを考えており、このため政府は原子力発電所の安全を確保するため、自衛隊を活用した迎撃ミサイルの配備や平時からの警護といった対策を検討し、国家安全保障戦略など年内に改定する文書に反映する」と報じられています
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA116HC0R10C22A3000000/#k-unlock-form
2022年3月18日付け日経)。
また、福井県知事は3月8日に岸信夫防衛相と会談し、ロシア軍による原発への攻撃を踏まえて「福井県は全国最多の15基の原発が立地しており、住民は今回の武力攻撃に対して不安を抱いている」と指摘し、原発への攻撃に備えた対策を求め、自衛隊による迎撃態勢に万全を期すよう要請し,防衛相は「不断に検討していく」と答えたとされています
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022030801085&g=pol 3月8日付け時事)

上記の二つの報道は、政府や福井県は、軍事攻撃にさらされる危険が現実のものとなったために多くの国民が原発への軍事攻撃が起きるかもしれないと不安を抱いているにもかかわらず、自衛隊の動員などの軍事的手段を講じることにより、あくまでも原発の維持・推進の方針を貫こうとしていることを明確に示しています。しかしながら、日本が何らかの戦乱や国際紛争に巻き込まれたならば、自衛隊を動員して「迎撃態勢」をとったとしても、果たして原発を攻撃から確実に守ることができるかどうかは多分に疑問ではないかと思われます。迎撃態勢を強力なものにすることによりミサイル攻撃や爆撃・砲撃から原発が守られる可能性が大きくなるとしても、原発が確実に守られるという保障はどこにもありません。戦闘の間隙を縫ってわずか一発でもミサイルや強力な爆弾・砲撃が国内のいずれかの原子炉を直撃したならば破局的な事態になりかねないことは明らかだからです。自衛隊を動員して迎撃態勢を整えたとしても、それはいわば「気休め」に過ぎず、原発が破壊を確実に免れることの保障にはならないでしょう。戦時に原発が破壊をされ破局的な事態に至ることを確実に避けるためには、原発を保有しないこと、すなわち脱原発を実現するしか他に方法がないことは明らかです。

先に記しましたので繰り返しになりますが、この機会に国も市民も、原発の必要性を根本的に考えるべきです。原発を廃止することを、今一度真剣に考えるべきです。戦時には原発が破壊され破局的事態になりかねないという危険を冒してまで、そのような危険を覚悟してまで、原発を持つ必要がいったいどこにあるというのでしょうか?

私たちはこれまで原発推進に強く反対し続けてきましたが、ウクライナにおける事態を踏まえて今後いっそう強く反対の声を挙げていかなければなりません。

★ ロシア軍によるウクライナの原発・核関連施設への攻撃を絶対におこなわないよう求めるプーチン大統領宛てのハガキを送っていただければ幸いです。

<あて先> 
〒106-0041 
東京都港区麻布台2丁目1-1 ロシア連邦大使館
特命全権大使ミハイル・ガルージン様 気付
ロシア連邦大統領 ウラジーミル・プーチン 様

文面は自由ですが、たとえば以下のように記してください

NO WAR ! NO WAR !
NEVER ATTACK NUCLEAR POWER PLANTS and
NUCLEAR RELATED FACILITIES in UKRAINE !
決して原子力発電所や核関連施設を攻撃しないでください!

最後の署名と日付をしるしてください。
住所とお名前はおさしつかえなければ記してください。

<参考:ウクライナの原発事情について>

ウクライナでは、チェルノブイリ1号機を1978年に運転開始して以来、2013年12月末時点で4つの原子力発電所に計15基が設けられており、総発電設備容量は1,381.8万kWとされています。なお、チェルノブイリ原子力発電所は、4号機が1986年4月26日に国際原子力評価尺度(INES)レベル7の深刻な事故を起こしたため、同型の1号機から3号機まで、いずれも2000年までに国際的圧力を受けることにより、閉鎖されています。総発電量に対する原子力発電への依存度は約43?48%とされています。
(以上は https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_14-06-02-03.html
日本原子力研究開発機構の2013年12月時点でのレポートによる)

ウクライナの人口は4400万人で日本の約3分の1ですから、日本の人口に換算して考えると、14基×3=45基の原発を保有していることになります。福島原発事故当時の日本の原発保有数約50基でしたからウクライナは日本とほぼ同レベルの原発大国であるということができます。また、原発への依存度は、日本の場合は福島原発事故当時約20%でしたが、ウクライナの場合は上記のように40%を上回っているため原発への依存度は極めて高いということができます。ただし国土面積は日本の約1.5倍、原子炉の総数は日本の約3分の1ですから、単位面積当たりの原発の密度は日本よりずっと低いことになります

2022年3月28日
《脱原発市民ウォーク in 滋賀》呼びかけ人のひとり:池田 進

〒520-0812
大津市木下町17-41 
電話/FAX:077-522-5415
メールアドレス:ssmcatch@nifty.ne.jp

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原発のテロ対策は信頼できるのか(その二)

2022-03-01 15:33:35 | 記事
《第103回脱原発市民ウォーク in 滋賀のご案内》

コロナ禍が依然として続いていますが、日差しが明るくなり春が近づいています。

来る3月5日に、例年どおり、大津市内の膳所城跡公園において
「原発のない社会へ:2022年びわ湖集会」と銘打たれた集会が行われるため、
脱原発市民ウォーク・イン・滋賀は3月は勝手ながらお休みさせていただきます。

そのかわりに上記の3月5日の集会に参加していただければ幸いです。

次回、第103回脱原発市民ウォークは滋賀は4月2日(13時半、JR膳所駅前広場)に
おこなう予定です。日が迫りましたら、あらためてお知らせいたします。


■■原発のテロ対策は信頼できるのか(その二)■■
■実効性に大きな疑問が持たれる日本、欧州、米国における対策■
■警察や軍隊など治安機関の支援によるテロ対策の現状と問題■


前回、第102回脱原発市民ウォークの案内では、主に原発敷地内への外部からの侵入者に対する電力会社自身によるテロ対策に関する日本を含む世界の現状について、ならびに原発に大型航空機が意図的に激突した場合の、日本が切り札としているテロ対策である「特重施設」(「特定重大事故対処施設」)の内容とその実効性などについて記しました。今回は電力会社自身による警備体制ではなく、国家の治安機関(警察、軍隊-日本の場合は自衛隊)による、外部からの侵入者を防ぐための通常の警備体制と対策について記すことにします。

【日本における警察・自衛隊による対策の現状】

《警察当局による対策》

警察庁の公表資料「特集:原子力発電所を巡る警備体制」の「原子力関連施設に対するテロへの対策」)と題された章には、警察によるテロ対策について、その概要が以下のように記されています(一部省略)。
https://bit.ly/3hsIdQe


『平成22年(2010年)4月に米国・ワシントンで開催された核セキュリティ・サミットにおいて「核テロは、国際安全保障に対する最も挑戦的な脅威のひとつ」ということが確認されたことを受けて、また福島第一原発事故に際して、冷却機能の喪失などより原子炉が管理不能の状態に陥り、放射性物質などが異常な水準で外部に放出されるなどの事態が、自然災害のみならずテロリストなどによる妨害破壊行為活動によっても発生し得ることが懸念されるため、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は平成23年(2011年)11月14日に「原子力発電所等に対するテロの未然防止対策の強化について決定し、防護措置の強化、内部脅威対策(注:テロ行為などに関する原発施設内部の協力者に対する対策の意味であるものと思われます)の強化を行うことにした」

また、この資料によれば、平成24年(2012年)9月に環境省の外局として設置された原子力規制委員会が同年12月に核セキィリティに関する検討会の設置を決定しており、「内部脅威」対策として、個人(注:原発の職員などの関係者を指しているものと推測されます)の「信頼性確認制度」の導入の検討を行うことになったとされています。

これらの動きに対応して国は「原子力発電所等に対するテロの未然防止対策の強化についての概要」と題した資料を公表しています。
https://bit.ly/3K2ovXR

この資料には様々な対策が列挙されているのですが、それらの対策の中で特に警察庁や海上保安庁、防衛省が担当すべきものとされている主な対策は以下のようなものです。

・警察の銃器対策部隊による常駐警備を、原子炉建屋を中心とした警備体制から、冷却設備、電源設備等の脆弱な施設も含めた警戒警備へ
・海側の防護状況に応じた警戒警備へ
・警戒警備体制強化のため、警察官増員へ
・関係省庁において、課題などを協議、共同訓練の実施などで連携を強化する

また、同じ資料の「警察における取組」の項では「警察では、テロリストなどが施設に接近したり、内通者が従業員等として浸透したりしないようにするため、脅威情報の収集、事業者と連携したパトロールや機械警備による不審者の監視、万が一テロが発生した場合に備えた警備体制の確立などを行うなど、原子力発電所に対する総合的な手段と対策を推進しています」とされており、具体的に以下に示す三つの対策が示されています。

□ 警戒警備の強化
・サブマシンガンやライフル銃、防弾使用の警備者をそなえた「銃器対策部隊」が24時間体制で原子力関連施設を警戒しているほか、テロ発生時には、高度の制圧能力を有する特殊部隊(SAT)を投入する。
・福島第一原発事故を踏まえて、原子炉建屋だけではなく、警戒範囲を拡大するなど警戒要領を見直すとともに、原子力関連施設の警戒警備に従事する地方警察官216人を増員

□原子力事業者との連携
 原子力規制委員会などと連携して、警察庁職員が事業所に定期的に立ち入り検査を行い、規制委員会に対して治安当局の立場から意見を陳述することなどにより、核物質防護規定を実効性のあるものとする。

□自衛隊との共同訓練
 警察力では対応できないと認められる事態が発生した場合に備え、警察と自衛隊のあいだでの共同訓練を実施していく。平成24年(2012年)6月には愛媛県警が原発敷地内における自衛隊との共同訓練を全国で初めて実施している。


銃器対策部隊(前記の警察庁のサイトより)

銃器対策部隊に関するウィキペディアの項などによると、銃器対策部隊は都道府県の警察本部に所属しており、機動隊員により構成されており、全国に2100名が配備されているとされています。前述の警察庁の説明によると、「銃器対策部隊」は原発などの関連施設に常駐し、24時間体制で警戒警備を行っているとされていますが、果たして実際に各原発に常駐しているのかは不確かであり、何か事があった場合に県警の機動隊に属している銃器対策部隊のメンバーが急きょ原発施設に駆け付けるような体制というのが実態ではないかと思われます。というのは、銃器対策部隊は都道府県の警察本部に所属し、各地域の機動隊員により構成されていますが、原発のテロ対策のみを対象とした任務が課せられているわけではなく、それ以外の銃器の使用が迫られるような国内におけるテロ行為やハイジャック事件、凶悪犯罪などにも対処することを目的としたものであるため、原発へのテロ対策のみを目的に原発内に24時間常駐しているとは考えられないからです。

また、私の経験からは、実際に原発付近に近づいても、警察関係者が常時警備していると思われるような緊張感は感じられなかったからです。私は福島第一原発の事故以前にも、また以後にも、美浜原発、敦賀原発、廃炉が決定される以前の高速増殖炉「もんじゅ」(敷地内には立ち入ることはできないため敷地境界近くと敷地外にある展示施設の見学)などを知人の車で平日に見に行ったことがあるのですが、いずれの施設もそれほど警戒厳重には感じられませんでした。駐車場で施設を訪れた者や施設に近づいた者の車のナンバーを控えているのではないかと感じたことはあるのですが、警察関係者の姿を目にしたことはまったくありませんでした。ただ、福島原発の事故後、高速増殖炉「もんじゅ」の正門前付近で少し大型の放射線計で測定していたところ、その姿を目撃したのか、帰ろうとして車で走り始めたところ、敷地内から急に飛び出してきた車が私たちの車を追い抜いたあとすぐに戻ってきたということがあり、このため私たちの車のナンバーを確かめにきたことが分った、という経験をしています。また、福島原発の事後に、高島市議会の議員の方の世話で十数人の市民の方々と一緒に、「もんじゅ」の建屋などを敷地内の高台に設けらている撮影禁止とされている展望台から見学したあと敷地外の展示施設で職員から説明を受けたことがあるのですが、その際は事前に見学者の氏名を届け出ることを求められ、また、当日は顔写真付きの身分証明書の提示bbbbbbbbbを要求されました。

先に説明した警察庁の「原子力発電所などに対するテロの未然防止対策の強化」と題された資料は2011年に作成されたものであり、二十項目以上におよぶ対策が示されてはいるのですが、前回のレポートに記したように、この資料が作成されてから10年を経た昨年3月に東電柏崎刈羽原発の警備体制が最低レベルのものであったことが発覚したことを考えると、これらの対策の多くがどこまで実際に実行に移されているのがは多分に疑問であり、それらの対策の実効性についても、関係者以外には関連情報がほとんど開示されていないに等しいため、市民が確かめることはできないというしかありません。

また、警察と自衛隊による共同訓練に関しては、愛媛県警が平成24年(2012年)に原発敷地内での自衛隊との共同訓練を全国で初めて実施しています。



志賀原発における訓練:自衛隊のヘリから降り輸送車へ向かう警官たち
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20171024004071.html

その後、2017年10月24日に石川県の志賀原発において北陸三県の警察と自衛隊による共同訓練が行われています(10月25日の朝日新聞デジタル版によれば「北陸3県の警察と陸上自衛隊は24日、非常事態に備え、志賀町赤住の北陸電力志賀原発周辺で実動訓練をした。志賀原発での合同訓練は初めて。訓練はテロリストなどの脅威が原発に侵入する恐れがあり、自衛隊に治安出動命令が出されたという想定で石川、富山、福井県警の機動隊員約50人と北陸3県をカバーする陸上自衛隊第14普通科連隊の約50人が参加した」とされています)。また2019年11月26日には北海道の泊原発で警察と自衛隊による共同訓練が実施されています。ただ、これらの共同訓練は報道陣に公開されていましたので、多分にデモンストレーション的な意味合いが強いのではないかと思われます。

【欧州・米国における警察・軍隊による原発関連施設のテロ対策について】

欧州や米国における警察・軍によるテロ対策については断片的な情報しか存在していないために全体的なことを記すことはできないのですが、ネットや報道記事などを通じて知り得た範囲で、個々の例について、以下に記すことにします。

・フランスなど欧州における警察や軍による警備体制

はじめに、フランスのコタンタン半島(ノルマンディー半島)に設けられている?・アーグ再処理工場について説明します。この半島には再処理工場の他に通常の原子力発電所が設けられており、また半島先端のシュルブール港には仏海軍の原潜基地が存在しています。このようにこの半島には核関連施設が集中しているため、半島全体が常に厳重に警備されているとされています(参考:青森県の下北半島には、六ヶ所村に再処理工場とその関連施設、東通村に東電と東北電力の東通原発、むつ市に使用済み燃料中間貯蔵施設と原子力船「むつ」の母港、大間町に大間原発(フルMOX燃料による原発:工事中断)などの核関連施設が、コタンタン半島以上に集中的に存在しています)。

ラ・アーグ再処理工場は1976年から稼働している世界で最大規模の再処理施設であり、フランス国内の58基の原子炉をはじめ日本やドイツなど海外の電力会社約30社からも再処理を委託されており、年間約1600トンの処理能力を備えています(注:近い将来操業の開始が予定される六ヶ所村再処理工場の処理能力は年間最大800トン)。このように使用済み燃料をはじめとして、通常の原発とは比べものにならない極めて大量の放射性物質が集積されるため、以下のような厳重な警備体制が敷かれているとされています。以下に、中国新聞の「原子力を問う:〈11〉テロ攻撃と対策」題された特集記事(2003年3月23日)における説明を引用します(一部省略しています)。
https://www.hiroshimapeacemedia.jp/kikaku/nuclearpower/030323.html

『ラ・アーグ再処理工場に昨年(9・11同時多発テロの翌年にあたる2002年)12月に対空ミサイルシステムの中核となる上空監視用レーダーサイトが備え付けられた。射程距離20キロの地対空ミサイルが配備されたとみられる。この施設のニコラス・サバリ広報課長は「ここは海に面し、空からも分りやすい場所にある。政府が特別警戒態勢に関するプランを発令したため、軍が航空機テロ攻撃に備えることになった」としている。?・アーグ再処理工場では陸上からのテロ攻撃にも備えている。周囲には高圧電流を流した二重のフェンスが張り巡らされ、銃を携帯した警備員約200人が24時間体制で警戒しており、サバリ広報課長は「不審者が侵入すれば、射殺することも認められている」と明かす。
 フランスが原子力関連施設をここまで厳しく警戒するのは、かつて実際にテロリストが原発を攻撃する事件が起きているからだ(1982年1月、建設中であった高速増殖実証炉であるスーパーフェニックスにロケット弾が発射されコンクリート製の格納容器に命中し一部破損した事件)。経済財政産業省の原子力部長は「テロリストに情報を与えることになるため詳細は明らかにできない。しかし9・11後、すべての原子力関連施設に対策を講じており、心配するような事態は起きない」と強調する』


ラ・アーグ再処理工場の全景
https://bit.ly/3tiFr5x

この記事は2003年3月、すなわち9・11テロの二年半後に報じられものであり、前述のようにその後フランスの原発は何度もグリーンピースの活動家に侵入されてしまったことがあるため、?・アーグの警備体制はともかく、通常の原発施設における警察・軍などによる警備体制は実効性を伴っていない可能性が大ではないかと推測されます。

また欧州では、2016年3月22日にベルギーのブリュッセルで自爆によるテロ事件がおきた際、ほんとうの狙いは原発施設であったかもしれないと疑われ、原発施設の職員のなかにIS(イスラム国)のメンバーがいることなどが判明したため、急きょ軍隊が原発に派遣されるとともに警戒態勢が強化されるということがありました(電気事業連合会2016年4月4日など。https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/1254626_4115.html)。

・日本の再処理工場における警察や自衛隊による警備体制の実態について

一方、日本の再処理工場である青森県六ヶ所村の再処理工場における警備体制については、
日本原燃㈱が「六ヶ所施設の防護・警備措置について」と題される資料を公表しています。
https://bit.ly/3M4RPyC


しかし、この資料には警備のための一般的な手法や設備・装置などが示されているだけであり(注:日本原電は「六ヶ所原燃警備㈱」という警備会社を子会社として有しており、再処理工場の警備を委託しているものと考えられますが、この会社の企業案内には、警備の具体的内容はまったく示されていません)、警察や自衛隊によるテロ防止のための警備体制の有無やその手段については、まったく触れられていません。この施設が日本で最も重要な核関連施設であることを考えるならば、警察・自衛隊などによるテロ対策が何ら講じられていないとは到底考え難く、実際にはかなりのテロ対策が講じられているのではないかとも考えられるのですが、フランスの場合とは異なり関連情報はほとんど公開されていないため、再処理工場におけるテロ対策の具体的内容は不明であるとしか言えません。したがって六ヶ所村の再処理工場のテロ対策の実効性については評価のしようがないと言わざるをえません。

・米国における警察や軍による警備体制

日本原子力研究開発機構(JAEA)の解説記事によれば、
https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_14-04-01-34.html
9・11同時多発テロを機に、原子力発電所では核不拡散の観点から核物質防護(PP)という法的規制に基づき、テロリストなどによる核物質の盗取、原子力施設に対する妨害破壊行為を防止するための障壁、侵入対策、出入管理、通報連絡など、統合的なセキュリティ・システム措置が導入されていることに加えて、原子力施設の設計で使われる深層防御哲学では、プラントの安全性を確保するために重複した独立システム系統(注:日本における「特重施設」に相当するものではないかと推測されます)を要求しているとされています。

前述の中国新聞の記事(2003年3月)によれば、9・11テロに見舞われた米国では、欧州におけるよりもさらに厳しい警戒態勢を敷いているとして、その例を以下のように報じています(一部省略)。

『ペンシルバニア州のサスケハナ川中流の島に建設されたスリーマイルアイランド(TMI)原発では陸地と結ぶ橋に監視所が設けられており、自動小銃を持った警備員や装甲車などが配置され、地元警察のパトカーも警戒にあたる。TMI原発は首都ワシントンにも近く、9・11テロから一カ月後、テロリストからの脅迫があったとして連邦捜査局(FBI)が捜査員を動員し、二つの空港を一時閉鎖する騒ぎが起きている。
 
全米原子力エネルギー協会(NEI)によると、全米の原子力関連施設では9・11テロ以降、警備員を33%増やし、計約七千人で警戒に当たっており、携帯する武器も強化し、配置前に二百時間のトレーニングを課しているとされている(注:詳細はわかりませんが、米国と日本では銃の規制に関する法規が異なっており、米国では原発施設の警備員に銃器の所持や使用が認められているのではないかと推測されます)。NEIの広報部長は「われわれは、こうした強い抑止力によりテロ攻撃を防いでいる」と語っている。また、原子力規制委員会(NRC)は9・11テロ後に、全米の原発に関する情報を載せたインターネットのサイトを閉鎖、再開後は一部の情報について「テロリストに知られたら困る」としてサイトから削除した・・・原子力行政の中枢であるエネルギー省の原子力科学技術局長は「9・11テロは、特に原子力関係者に衝撃を与えたことは間違いない。だが、米国にはテロを恐れて閉鎖しなければならないような原発はひとつもない」と言明する』

詳細は不明な部分が多く、そのために確かなことは言えないのですが、上記の説明からは、原発関連施設の警備は、日本の場合とくらべれば、より厳しく行われているのではないかと推測されますが、前述のように米国でも外部の者が原発関連施設に侵入することに成功したという実例が存在しているなど、原発におけるテロ対策の実効性には疑問符をつけざるを得ない点が存在しています。また米国の場合は、軍が管理する核関連施設が存在していますが、軍の施設におけるテロ対策についてはまったく不明です。

上述のように、米国では業界団体であるNEIや政府関係者は、テロ対策は十分に行われていると言明していますが、米国内では反論も存在しています。たとえばCNNは2013年8月に「米原発に大規模テロ対策不在などの警告 規制委は反論」と題したニュースを報じています。
https://www.cnn.co.jp/usa/35036077.html

この報道によれば、米国防総省の要請に応じてテキサス大学の核拡散阻止プロジェクトチームがまとめた、全米の商用原子炉104基を対象に調査した報告書において、9・11同時多発テロ後に明るみに出た原発等の安全対策に不備が是正されていないと指摘しています。たとえば米国の太平洋岸と大西洋岸に位置する原発等では海上からの攻撃への防御に関する規定が欠如していること、NRCやエネルギー省や国防総省が作成した防御策では5~6人による攻撃しか想定していないこと、原発などのテロ対策では施設ごとにばらつきがみられること(たとえばホワイトハウスから40キロに満たない距離にある原子炉で核兵器へ転用可能な高濃縮ウランが処理されているが,NRCなどが規定する基礎的な防御策の水準にも達しない安全対策が講じられている)、原発等で働く従業員らが妨害行為に関与する懸念があり対応の強化が必要であることなどを指摘しており、攻撃を受けたならば破滅的な被害を及ぼしかねないすべての核関連施設に対して統一された防御策を導入すべきであり、原発事業者が対処できないテロ対策の準備には連邦政府が資金援助すべきであると提言しています(この報告に対してNRCの報道担当者は、報告内容はNRCと政府が同時多発テロ後に打ち出した安全対策と同じであり新味はないとする声明を発表し、原発のテロ対策は強化されており、脅威に対する備えは十分に構築されていると強調しています)。

★ 次回の脱原発市民ウォークの案内では、原発施設への航空機の激突、特に一番テロ対策は困難である大型航空機によるテロ攻撃に対する対策と原発のテロ対策における全体的な問題点(情報公開、テロ対策の必要性に関する疑問点など)などについて記す予定です。

2022年2月27日
《脱原発市民ウォーク in 滋賀》呼びかけ人のひとり:池田 進

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