21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

<脱原発 市民ウォーク in 滋賀> の 活動報告、お知らせなど を掲載 ♪
ときどき、トピックも ~☆

脱原発 市民ウォーク in 滋賀 9月の予定

2023-08-21 20:02:19 | 記事
■老朽原発 高浜1・2号機うごかすな! 
■美浜3号機停止!
■岸田政権の原発暴走反対! 
■原発汚染水流すな!
■上関の自然を守れ! 
■核ゴミをフランスや太平洋に捨てるな!
 
◆ 第116回 脱原発 市民ウォーク in 滋賀 ◆

「なぜ無理やり海に捨てるのか分かりません。いくら希釈しても
 放射能の絶対量はそのままです。」
「人類自滅のテロは中止しなければなりません。
 今こそ地球村主人が立ち上がらなければなりません。」(韓日徒歩行進) 

1450万人の近畿の水源=びわ湖と私たちの未来=子どもたち孫たちを守りましょう!
ご一緒に歩きましょう! 参加無料! 予約不要! 

<とき・ところ>
2023年 9月9日(土)13:30  JR・京阪膳所駅前集合  

★コース = ときめき坂 ~ 元西武大津ショッピングセンター前 ~ 関電滋賀支社前~
       ~ びわ湖畔

☆主 催=21世紀 脱原発市民ウォーク in 滋賀 実行委員会
☆呼びかけ人・・・池田進(原発を知る滋賀連絡会 電話077-522-5415)
         岡田 啓子(ふぇみん@滋賀 電話077-524-5743)
         稲村 守(9条ネット・滋賀 電話080-5713-8629)


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<トピックス> 


原発汚染水放流中止日韓徒歩行進、近江富士を望みながら江州平野を行く(8.16)



草津駅前(8.16)



9.11東京国会到着めざし、6月にソウルを出発。
1600キロを歩く行進隊長のイ・ウォニョンさん(8.16)



徒歩行進宣言朗読の岡田啓子さん(8.16)



7.23老朽高浜原発1号機うごかすな!関電本店前集会後のデモ。



7.28高浜1号機再稼動抗議、北ゲート前。
写真中央は、抗議する編み笠の中嶌哲演さん。



福島県相馬市から滋賀県湖西地域に避難の青田恵子さん(7.28)

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「脱原発 市民ウォーク in 滋賀」 チラシのダウンロードは ⇒ コチラ

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先行きがまったく不透明な高レベル放射性廃棄物最終処分場の建設問題(その2) 破綻を来している核燃用サイクル計画・使用済み燃料再処理による核廃棄物の最終処分計画

2023-08-14 21:12:47 | 記事
《 2023年8月:第115回脱原発市民ウォーク in 滋賀のご案内 》

あいかわらず暑い日が続いていますが、次回の脱原発市民ウォークを
8月19日(土)におこないます(午後1時半JR膳所駅前広場に集合)。
どなたでも自分のスタイルで自由に参加できます。
都合のつく方はぜひ足をお運びください。


■■先行きがまったく不透明な高レベル放射性廃棄物最終処分場の建設問題(その2)■■
■破綻を来している核燃用サイクル計画・使用済み燃料再処理による核廃棄物の最終処分計画■





前回2023年7月の脱原発市民ウォークの案内では、国が国内の原発から生じた使用済み燃料(注1参照)をそのまま最終処分に供するという方法(「直接処分」あるいは「ワンスルー方式」と称される処分方式=海外の多くの国で採用されている方法)ではなく、核燃料サイクル(上記の図を参照)を用いて使用済み燃料を「再処理」(注2参照)することによりウランとプルトニウムを回収し、再処理後に残された廃液を「高レベル放射性廃棄物」として最終処分に供するという方式を採っていること、この方式を採用していることの主な理由(注3)を説明しました。また、この方式に基づき生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分場を建設する任を負っている「原子力発電環境整備機構』(英語の略称:NUMO)により現在行われている最終処分地の候補地募集・選定の作業とその問題点などについて記しました。

(注1:正確には「使用済みウラン燃料」。使用済み燃料の中には、未反応のために残存しているウランと発電中に非核分裂性のウラン238から生じた核分裂性のプルトニウムが含まれているため、これらを回収すれば原発の燃料として活用することができます)

(注2:使用済燃料を長さ約3?4cmの小片に切断した後、溶解槽で硝酸により溶解し、ウランとプルトニウムを分離して回収します)

(注3:国が放射性廃棄物処分のために使用済み燃料を再処理する方法を採用していることの意図は二つあります。ひとつは最終処分場で保管する高レベル核廃棄物を調製し用意すること、もう一つは再処理により得られるプルトニウムを発電用の燃料として用いることです。すなわち、日本はエネルギー資源が乏しいため、国は当初から使用済み燃料からプルトニウムを回収して有効に再利用することの実現を目標にしています。このために1988年の日米原子力協定改定に際して使用済み燃料の再処理を行うことを米国から許されたのを機会に、「発電のために使用したプルトニウムよりも多い量のプルトニウムを得ることができる」とされる高速増殖炉を建設し実用に供すること(「もんじゅ」の開発計画)を最も重要な目標として、高速増殖炉の燃料に用いるためのプルトニウムを得ることを目的に、使用済み燃料の再処理を行うことができる核燃料サイクルの実現に着手しました。しかし中心的な目的である高速増殖炉「もんじゅ」の開発計画は難航を来し、その後実現の可能性がないものとして、原子力規制委員会の勧告に従い2026年に放棄されています(注3-1参照)。しかしながら、この中心的目標が失われた後も、国は通常の原子炉によるプルサーマル発電(注3-2参照)に用いられるMOX燃料(ウランとプルトニウムの混合燃料)の原料であるプルトニウムを得るためとして、核燃料サイクル計画を存続させています。核燃料サイクルにおいては使用済み燃料の再処理は欠かすことができない過程であるため、核燃料サイクルを採用している限りは、使用済み燃料をそのまま直接地下深くに処分するという単純な最終処分の方法(「直接処分」あるいは「ワンスルー方式」と称される処分方法)を採用することは不可能です。すなわち、核燃料サイクルにより使用済み燃料の再処理を行い、処理後に廃液の形で生じる高レベル廃棄物を最終処分に供するという方法を採らざるを得ません)

(注3-1:しかし「もんじゅ」開発計画は放棄されたものの、国は引き続きプルトニウムを利用できる原子炉を含む新型炉などの研究開発に取り組む方針を示しています。そのため、例えば政府は、次世代型の原子炉の一つ「高速炉」の開発に向けて、実証炉の設計や建設を担う中核企業に、高速増殖炉「もんじゅ」などの開発に携わってきた三菱重工業を選定したことを7月12日に公表しています。)

(注3-2:発電に用いられている通常の原子炉=ウランを燃料とする「軽水炉」=でウラン燃料とMOX燃料を併用することによる発電方式)


【使用済み燃料の再処理・核燃料サイクルに関連した様々な不確定要因】

放射性廃棄物を「直接処分」の方式により最終処分する場合、使用済み燃料は、適切な温度に下がるまで空気あるいは水により冷却した後、そのまま放射線を遮蔽する能力を有する適切な材質の容器に収容して地下の最終処分場へ運びこめば最終処分は完了します。しかし、上述のように、国は、このような単純な方法ではなく、核燃料サイクルを利用して使用済み燃料を再処理に供し、再処理後に生じる廃液を高レベル放射性廃棄物として最終処分に供するという技術的に高度で複雑な方法を採っています。このため、これまでに経験したことのない未知の問題が山積しています。

再処理に欠かすことができない核燃用サイクルの中核施設である再処理工場は1993年に着工されたものの未だに完成していません。また、回収したプルトニウムを原料としたいわゆる「プルサーマル発電」に用いるMOX燃料を加工するための工場も2010年に着工されているものの未完成です。一方、プルサーマル発電に供された後に生じる「使用済みMOX燃料」の扱いに関する問題はまったく未検討に等しいというのが現状です。現時点では、国による放射性廃棄物計画はこのように主要施設が未完成で完成時期が確定していないという中途半端な状態に置かれているため、国の計画には以下に示すような様々な不確定要因が多々存在しています。このため、国の核燃料サイクル計画とこの計画を前提とした核廃棄物の処分計画は、果たして実現可能なのか、計画の将来が危ぶまれます。

以下に様々な不確定要因について具体的な説明を記すことにしますが、その前に、核燃料サイクルを中心とした国の計画を理解していただくために、使用済みウラン燃料の再処理を前提とした一連の関連技術の過程について簡単な説明を記します。

1 発電後に生じた使用済みウラン燃料→再処理工場で再処理に供し、核燃料として有用なウランとプルトニウムを分離回収する→再処理後に生じた高レベル放射性廃棄物を「ガラス固化体」にする→約50年間地上で保管する→その後に地下の最終処分場に保管する(注参照)

2 ウラン(新たなウランあるいは分離回収したウラン)と回収したプルトニウムからMOX燃料(ウランの酸化物とプルトニウムの酸化物の混合物)を加工する。

3 このMOX燃料を通常のウラン燃料といっしょに通常の原発(軽水炉)で用いることにより、いわゆる「プルサーマル発電」をおこなう

4 上記3の段階で生じる「使用済みMOX燃料」の再処理を行うことにより、プルトニウムを回収し(この段階で生じる放射性廃棄物は上記の方法により最終処分に供する)、回収されたプルトニウムを原料にして再びMOX燃料を製造する(ただし、冒頭に示した核燃料サイクルの説明図では、何回でも使用済みのMOX燃料を再処理して再利用に供することがあたかも可能であるかのように描かれていますが、使用済みMOX燃料の再処理技術は確立されておらず、現時点では不明な点が多いため、国は使用済みMOX燃料の再処理に関してはきわめて漠然とした計画しか考えていません)

5 上記の工程を繰り返すことにより原発による発電を継続的におこなう

(注)現時点では、日本の原発から生じた使用済み燃料の一部はフランスや英国の施設で再処理に供されており、海外での再処理により生じた高レベル放射性廃棄物は「ガラス固化体」の形ですでに日本へ送り返されており、現在、六ケ所村の再処理工場内の施設で保管されています。

以上が国が構想している核廃棄物の最終処分計画に関連した一連の技術ですが、これらの技術はいずれも日本では未だ十分には確立されておらず、そのため以下に示すように、いずれの段階の技術に関しても、無視することができない重大な問題点すなわち不確定な要因が多々存在しています。


不確定要因その1:異例の巨費を投じながら未だに完成の見込みが不透明な再処理工場

いつから使用済み燃料の再処理が可能になるのかは不明

前述のように、国の構想に基づいて原発から生じる核廃棄物を最終処分に供するためには、使用済み燃料の再処理施設(=核燃料サイクルの主要施設)を欠かすことができません。ところが現時点では再処理工場は完成していません。日本原子力燃料㈱が青森県六ケ所村において再処理工場の建設を開始したのは1993年(完工予定1997年)のことですが、これまでに14兆4400憶円もの巨費が投じられているにもかかわらず(使用済燃料再処理機構:2021年6月の公表資料)未だに完成していません。これまで完工時期は26回も延期されており、事業者の日本原燃㈱は、2022年末に、「今年度上期」としていた完成時期の目標を2年ほど遅らせ、「2024年度上期のできるだけ早期」としています(NHKデジタル版2022年12月26日)。このため、すでに全国の原発からから六ケ所村に送り込まれている国内で生じた使用済み燃料の再処理がいつ本格化するのか、その時期は依然として定かではりません。また、試運転段階で大きなトラブルに見舞われるようなことがあれば、本格稼働の時期がさらに遠のくことも考えられます。

再処理工場が実際に十分な処理能力を備えているかは不明:原発敷地内で溜る一方の使用済み燃料

計画では使用済み燃料の年間の処理能力は800トンを予定しているとされていますが、工場が未完成である現状では実際の処理能力は不明であり、実際に稼働させてみないと確かなことは言えません。実際に稼働させても、予定した処理能力を大幅に下回る事態が生じることも考えられます。そのような事態が生じれば、放射性廃棄物の処分計画は大きく狂ってしまうことになります。

再処理工場の完成・稼働が計画よりも大幅に遅れているため、使用済み燃料の再処理は現時点では全く進んでいません。このため全国の原発において使用済み燃料が溜まり続けています。2023年3月末の時点では、合計1万5610トンの使用済み燃料が各原発の使用済み燃料用のプールに保管されていますが、すでにプールの容積の7割~8割を占めているとされており、発電所内での使用済み燃料の保管は限界に近づいています(2023年8月1日付け毎日新聞デジタル版)。再処理工場が近々完成し、予定された能力で使用済み燃料の再処理がスムーズに進行するならば、原発内で保管されている使用済み燃料が増え続ける事態は将来的には解消されるはずです。しかし、再処理工場が実際にいつごろから再処理を実際に開始できるのかは現時点では不明であり、このため電力各社は使用済み燃料の中間貯蔵施設の建設を考えざるを得なくなっています。すなわち、核燃料サイクルによる再処理を前提とした放射性廃棄物の最終処分という問題は、すでに最初の段階で行き詰っていると言わざるを得ません。このような状態が長期かするならば、核燃料サイクルを前提とした放射性廃棄物の処分計画は破綻を来すことになるでしょう。

完成されていない再処理技術:トラブル続きの「ガラス固化体」の製造

また、再処理の工程では、溶融させ液状にしたガラスと再処理後に生じた高レベル放射性廃棄物を混ぜ合わせてガラス内に封じ込め、「ガラス固化体」とするための技術が必要とされますが、この技術が未だ完成されていないという問題も存在しています。ガラス固化体の技術は最終処分に欠かすことができない技術です。しかし、2008年にはガラス固化体の製造に失敗しており(原子力資料情報室2008年2月12日)、2016年~2021年の間に4回もガラス固化体製造の過程でトラブルに見舞われ作業を長期にわたり中断しており、原子力規制委員会もこの問題を重要視しています(東京新聞デジタル版2022年2月11日)。ガラス固化体の製造を安定して円滑に行うことができなければ、最終処分場で保管するための放射廃棄物を用意することができないことなり、最終処分計画そのものが無意味と化してしまいます。上述のようにガラス固化体製造の技術は欠かすことができない技術であるため、再処理技術と同時に確立されていなければならないのですが、現状での先行きはきわめて不透明です。

不確定要因その2 未だに完成されていないMOX燃料加工工場

核燃料サイクルを利用して使用済み燃料の再処理することにより高レベル放射性廃棄物を最終処分に供するという処分方式を採用していることが意図しているのは、前述のように単に最終処分場に供する核廃棄物を用意することではなく、エネルギー資源の有効利用を図ることです。すなわち、使用済み燃料に含まれているプルトニウムを回収して原発の燃料として利用することが再処理を行うに際しての欠かすことができない目的なのです。より具体的には、再処理により回収されたられたプルトニウムを用いてMOX燃料を製造し、通常の原発(軽水炉)による「プルサーマル発電」の燃料として用いることが再処理をおこなうことのもう一つの目的です。この目的のためにはMOX燃料の加工施設が必要であり、このため六ケ所村の再処理工場の隣接地にこの施設が建設されつつあります(着工2010年)。しかし、これまでに2兆4300億円が投じられているものの(使用済み燃料処理機構の公表資料2021年6月)未だに完成していません。完成時期は2024年上半期とされていますが、再処理工場の場合と同様に定かではありません。MOX燃料を加工することができなければプルサーマル発電を行うことは将来的に不可能となります(注参照)。日本では東海村の日本原子力開発機構の施設「プルトニウム技術開発センター」によりMOX燃料の加工技術が確立されているとされていますが、使用済み燃料の再処理により得られたプルトニウムを用いてMOX燃料を大規模に加工するという経験は有していません。このため加工工場が完成しても、予定通りの能力で大規模に安定してMOX燃料を加工することができるとは限りません。MOX燃料の加工に困難をきたしたならば、たとえ再処理技術を経ての高レベル核廃棄物の最終処分という目標は実現できても、プルサーマル発電を通じてのエネルギー源の有効利用という核燃料サイクルのもう一つの重要な目標は実現できないことになります。

(注:現在、日本の少数の原発でプルサーマル発電が行われていますが、使用されているMOX燃料は日本の使用済み燃料に由来するプルトニウムを原料としてフランス・英国で加工されたものです)


不確定要因その3:「使用済みMOX燃料」を再処理して、再びプルトニウムを回収することは果たして可能なのか?

冒頭に示した核燃料サイクルの説明図では、使用済みMOX燃料は何度も再処理してプルトニウムを回収することができるかのように描かれています。ほんとうに何度も再処理することができるのであれば、資源の有効活用という観点からは非常に意義のあることですが、果たしてほんとうでしょうか。

国や電力会社が使用済みMOX燃料の扱いをどのように考えているのか、不明な点が多いのですが、関電が発電所内に溜まっている使用済み燃料の一部をフランスに移送すること意図していることを福井県に伝えた際に、使用済みMOX燃料も同時に移送しフランスでの再処理を試みてもらうことも意図していると伝えていたことが去る6月12日に明らかになりました。同日の日経新聞(デジタル版)によれば「日仏両政府の合意を踏まえ、大手電力など11社が進める再処理の実証研究の一環として、関電が高浜原発の使用済み燃料を20年代後半にフランスに搬出する。国内で使用したMOX燃料が再処理できるかを検証する」とされています。また、2021年9月27日のNHKの報道によれば(デジタル版:特集「行き詰る使用済燃料最終処分問題」)「『再処理』という言葉は同じだが、六ケ所村の再処理工場では2回目以降の再処理ができないため、別の施設を建設しなければ、このサイクルは回らない。回そうとすると、さらに膨大なコストが必要になる」と報じています。「使用済みMOX燃料の再処理の可能性をこれからフランスで検証してもらう」「MOX燃料の再処理には新たな再処理施設が必要、さらに膨大なコストが必要になる」などとするこれらの報道内容が事実であれば、使用済みMOX燃料を再処理できる可能性は現実には非常に小さいのではないか、少なくともその可能性は不明であると言わざるをえません。

使用済みMOX燃料の再処理が不可能であれば、プルトニウムを再び回収することも不可能になるだけではなく、MOX燃料と通常のウラン燃料を併用したプルサーマル発電がおこなわれた後の使用済み燃料は、全量をそのまま放射性廃棄物として処分しなければならない、すなわち直接処分しなければならないことなります。これでは再処理を前提とした最終処分と資源の有効活用を意図した核燃料サイクルの意義は大幅に減じられることになります。


不確定要因その4:MOX燃料を用いたプルサーマル発電は本当に必要とされているのか?

国は使用済み燃料の再処理により得られるプルトニウムの有力な用途である高速増殖炉「もんじゅ」の開発は断念しましたが、再処理により得られるプルトニウムを用いるプルサーマル発電の推進・拡大を意図しており、これまで計画通りに進んでいないものの、現時点でもこの方針を貫こうとしており、大手電力会社による業界団体である電気事業連合会も国の方針に従うとしています。このため、同連合会は2020年12月に新たな目標を掲げ「2030年までに少なくとも12基でプルサーマル発電を行う」としています。しかし、福島第一原発事故以降に再稼働されている原発は10基ですが(2022年8月時点)、このうちプルサーマル発電を実際に行っているのは現時点では4基に過ぎません。

国は原発の使用済み燃料(正確には使用済みウラン燃料)を再処理して発電中に生成したプルトニウムを用いて作られたMOXをプルサーマル発電に使用することは(注:プルサーマル発電では通常のウラン燃料の一部をMOX燃料に置き換えて発電が行われます)、資源の有効利用という観点からは一定の意義を有していると言えます。ところが、プルサーマル発電には以下に示すような無視できない重要な問題点が存在しているため、果たしてMOX燃料を用いたプルサーマル発電が実際に必要とされているのかはかなり疑問です。

プルサーマル発電の問題点:プルサーマル発電には以下のような欠点が存在しています。
・プルサーマル発電は運転中の原子炉の安定性に悪影響を及ぼします。すなわち制御棒の効果が低減する、ウラン燃料とMOX燃料という二種類の核燃料を用いているため燃料の燃え方にムラが生じて燃料棒が破損しやすくなる、出力の変化の仕方がより急激になる、などの現象が起きるとされています。これらの現象は場合によっては事故につながりかねません。すなわち、プルサーマル発電はウラン燃料のみによる通常の発電方式よりも安定性に欠ける危険な発電方式であると考えられます。

・使用済みMOX燃料の発熱量は通常の使用済みウラン燃料の発熱量の4~5倍にもなるため、原発施設の外への持ち出し先がありません。

・MOX燃料はウラン燃料よりも格段に高価であるため、プルサーマル発電を行うことの経済的メリットは存在していません。すこし以前の数字ですが、貿易統計から割り出された燃料費は、ウラン燃料の場合1トン当たり1.8~1.9憶円(1998~1999年:関電大飯1号機、高浜3号機)、MOX燃料の場合は1トン当たり8億円(1999年関電高浜4号機)とされています。また電気事業連合会のコスト検討小委員会によれば、国内でMOX燃料を製造した場合は、使用済みウラン燃料の再処理費用を含めると1トン当たり約25億円とされています。すなわち、使用済み燃料の再処理に由来したMOX燃料を用いてプルサーマル発電を行うことは、わざわざウラン燃料よりも格段に高価な燃料を用いて、通常のウラン燃料による発電よりも不安定な状態で発電を行うことを意味しています。

たとえ、プルサーマル発電がエネルギー資源の有効活用を意味しているとしてもプルサーマルという発電方式が内包している上記のようなマイナス面を考えるならば、プルサーマル発電が必要とされているとは到底考えられません。

プルサーマル発電を積極的に推進しようとしているのは日本だけ:プルサーマル発電の活用は原発を保有している国では早くから検討されており、日本でも1980年代からプルサーマル発電導入の検討が開始されていましたが、現状では海外でプルサーマル発電を積極的に推進している国は存在していません。フランスでは現存しているラアーグの再処理工場(創業1976年)が稼働している間だけに限ってプルサーマル発電を行うとされています。ドイツとスイスは、すでに回収されているプルトニウムを使い切るまでしかプルサーマル発電を行わないとしています。英国はプルサーマル発電を行わないとしています。このように各国がプルサーマル発電に積極的でないのは、その理由は様々であっても、結局はプルサーマル発電を行うことに大きな利点は存在していないことがその主な理由であろうと推測されます。

プルサーマル発電推進の構造:プルサーマル発電の実施を電力業者へ押し付け、費用は消費者が負担

日本でプルサーマル発電が推進されようとしているのは、元を正せば、高速増殖炉「もんじゅ」用のプルトニウムを得るために核燃料サイクル施設の建設が行われたものの肝心の「もんじゅ計画」が難航し実現の見込み見いだせなかったことに由来しています。主目的の実現が無理になった時点で核燃料サイクルを中止すべきだったのですが、国は核燃料サイクルを利用した使用済み燃料の再処理という方針に固執しています。そのため、国はプルトニウムを消費することを目的にプルサーマル発電を電力業界に押し付けているのです。本来であれば、ウラン燃料による通常の発電よりも費用が格段に高くつき、安全性に劣るプルサーマル発電は電力会社にとっては何のメリットも存在していないはずです。しかし、プルサーマル発電に要する費用は最終的に電気料金に反映させることが可能であるため、電力業界は国の方針に従っているに過ぎません。このため電気事業連合会は国の方針に従いプルサーマルを推進するとしていうものの、国の思惑通りにプルサーマル発電が拡大するかは多分に疑問です。プルサーマル発電が拡大しないならば、MOX燃料の大半は使い道を失います。そうなれば使用済み燃料の再処理することの意味も失われます。つまり核燃料サイクル計画は意味を失います。このようなプルサーマル発電推進の構造を考えるならば、回収されたプルトニウムによりプルサーマル発電を行うことの必要性が存在していないことは明らかです。国はプルサーマル発電推進という無意味な方針を撤回すべきです。
(上記のプルサーマル発電、MOX燃料の問題点に関する説明の多くは、原子力資料情報室の資料「プルサーマル発電計画の現状と問題点/2008.5.29」からの引用によるものです)


不確定要因その5 使用済みウラン燃料を核燃料サイクルを利用して再処理することに、果たして核廃棄物の最終処分に関連した利点は存在しているのか?

資源エネルギー庁は「使用済み燃料は、再処理により、重量にして約95%が再利用可能ですが、残りの5%は再利用できない廃液(=高レベル放射性廃棄物)になります」としており(「放射性廃棄物の適切な処分に実現に向けて」:資源エネルギー庁2017-06-16)、あたかも「再処理」により放射性廃棄物の量を大幅に減らすこと可能であり、このことが最終処分の方法として使用済み燃料の再処理いう方法を用いることの利点であると思わせるような説明しています。しかし、再処理という過程を経て最終処分に供する放射性廃棄物を大幅に削減できるとしても、次の段階においては、すなわち最終処理により得たプルトニウムから製造されたMOX燃料を用いたプルサーマル発電の段階においては、発電後に生じる放射性廃棄物の量を大幅に削減できるとは限りません。というのは、プルサーマル発電後に生じる使用済みMOX燃料をもう一度再処理に供することができなければ、使用済みMOX燃料は全量をそのまま最終処分すなわち「直接処分」に供しなければならないことになるからです。前述のように使用済みMOX燃料をもう一度再処理する技術は未だ確立されていません。このため、使用済みMOX燃料の全量を核廃棄物として直接処分しなければならない可能性は大であると言えます。

また、原子力資料情報室によれば(2008-5-29 「プルサーマル発電の現状と問題点」)使用済み燃料の再処理による廃棄物とプルサーマル発電により生じる廃棄物とを合わせた廃棄物の量は、高レベル廃棄物以外の各種の核廃棄物も含めて計算すると、大幅に増えるとされています。この観点に基づくならば、使用済み燃料を再処理しても核廃棄物の量が大幅に減る見込みはなく、このため使用済み燃料の再処理という手段には何ら利点は存在していないことになります。

結局のところ、国が使用済み燃料の再処理を経て核廃棄物を最終処分に供するという処分方式を採用しているのは、元を正せば、この処分方法が有益な利点を備えた最適の方法であるという理由によるものではないと言わざるを得ません。エネルギー資源に乏しい日本が資源の有効利用を図るためには、すなわち高速増殖炉による発電あるいはプルサーマル発電の燃料であるプルトニウムを得るためには、核燃料サイクルにおける使用済み燃料の「再処理」という工程を欠かすことができないために、使用済み燃料を最終処分に供する方法として、「直接処分」(ワンスルー方式による処分)という単純な方法ではなく、核燃料サイクルという複雑な技術による「再処理」を経て処分するという方法を採らざるを得なかったというのが、最終処分の方法として「再処理」という方法が採用されたことの本当の理由であると考えられます。しかし、上述のように、「使用済み燃料の再処理」という放射性廃棄物の処分方法には廃棄物の量が大幅に減るという利点はほとんど認められません。このため、使用済み燃料の再処理による放射性廃棄物の処分を行う計画は放棄し、「直接処分」の方式に計画を変更すべきであると言わざるを得ません。


【結論】
エネルギー資源の有効利用(再処理により回収したプルトニウムの再利用)を主目的とした核燃料サイクル計画は、極めて長期にわたり異例とも言うべき巨費が投じられてきたものの、上述のように様々な不確定要因が存在しており、先行きが極めて不透明であるため、破綻を来しつつあると言わざるを得ません。一方、プルニウムを用いる高速増殖炉「もんじゅ」の開発が失敗に終わっただけではなく、プルトニウムを用いたMOX燃料によるプルサーマル発電は通常の発電よりもかなり多額の費用を要するものの発電中の原子炉の安全性が通常の発電の場合よりも劣っているという欠点が存在しているために、プルトニウムの有効な用途とは考えらません。これらの結果、結局は再処理により回収するプルトニウムの用途は実質的に存在していないに等しいという状況にあることになります。このような状況を考えるならば、エネルギー資源の有効利用を主目的に位置付けていた核燃料サイクル計画は完全に破綻していると言わざるを得ません。また、このように核燃料サイクル計画が破綻しているため、核燃料サイクルにおける再処理を活用して核廃棄物を最終処分に供するとする計画も事実上破綻を来していることになります。

また、核燃料サイクルの中核施設である再処理工場に関しては、これまでに指摘した問題点以外に、大事故の危険性、テロ対策、大量のトリチウムの環境中への大量放出といった、極めて対処が困難な無視することができない深刻な問題が存在しています。たとえば、フランスのラアーグ再処理工場は、1980年4月に、操業中に通常の電源が喪失し非常用電源も機能しなかったために危機的状態に陥りましたが、フランス軍の大型電源車を急遽出動させることができたため危うく危機を免れたという事故を起こしています。再処理工場には各原発から送り込まれた使用済燃料をはじめとして様々な核物質が極めて大量に集積されているため、いったん事故が起きて連鎖的に核爆発を起こすに至ったならば、チェルノブイリ原発事故や福島第一原発の事故をはるかに上回る世界規模の破局的な大惨事になりかねません。また、この他にも、トリチウム放出という問題が存在しています。昨今、東電によるトリチウムを含んでいる処理水の海洋への放出が問題になっていますが、ラアーグや英国セラフィールドなどの再処理工場からは、操業中は通常の原発から放出される量とは比べ物ならない格段に多量のトリチウムが放出されていることが知られています。六ケ所村の再処理工場でも、試験運転中に大量のトリチウムが放出されたことがあり、本格的に稼働した場合は、海外の再処理工場の場合と同様に大量のトリチウムが、東電福島原発の「処理水」からの放出量をはるかに上回る量のトリチウムが、放出されることになるものと予想されます(注参照)。これらの深刻な問題が生じるのを回避するためにも、核燃料サイクル計画を放棄する以外に方法はありません(注:環境省の2022年3月31日付けの資料によれば、福島原発から放流が予定されている処理水におけるトリチウムの年間処理量=放出量は22兆ベクレル以下にすることが目標とされていますが、一般の原発におけるトリチウムの年間放出量は数十兆~数百兆ベクレル、フランスのラアーグ再処理工場からの2018年度におけるトリチウム放出量は11,4600兆ベクレルとされています)

核燃料サイクル計画が実質的に破綻を来していることが明らかであるだけなく、上記のように再処理工場の事故や大量のトリチウム放出などの深刻な問題点が存在していることを考えるならば、政府は政策を変更し、核燃料サイクル計画・再処理工場に関する計画を断念し放棄すべきです。また核燃料サイクルが破綻を来しているため、再処理を利用して核廃棄物を最終処分に供するという方法も放棄すべきです。すなわち、現在採用されている再処理により生じる高レベル廃棄物を最終処分に供するという方も断念し、使用済み燃料をそのまま処分に供する「直接処分」による処分方法に変更すべきです。

民主党政権時代に、核廃棄物を「直接処分」することに関する検討がおこなわれ、処分に要する費用などを考えた場合は直接処分による方法の方が適切とされたものの、政策の変更に関連して膨大な手数と費用を要するという理由で、処分方法の変更を断念しています。しかし、このまま何の見通しもたたないまま、既定の方針であるという理由で、ただただ時間と費用の浪費を続け、核燃料サイクル計画を強行することは許されません。また、核兵器に用いるプルトニウムを手に入れることができる核燃料サイクルという技術は、核兵器の製造・保有に直結した技術、すなわち核疑惑を招き「非核三原則」を侵しかねない技術です。この意味からも、核燃料サイクル計画を速やかに断念すべきです。

2023年8月13日 

《 脱原発市民ウォーク in 滋賀 》呼びかけ人の一人:池田 進

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