21世紀 脱原発 市民ウォーク in 滋賀

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先行きがまったく不透明な放射性廃棄物の処分 経産省が方針転換:放射性廃棄物の処分を海外に委託するという抜け道

2021-10-22 10:45:51 | 記事
《第98回・脱原発市民ウォーク in 滋賀のご案内》
コロナ禍は沈静化しつつあるもののまだ安心はできないのですが、第98回の
脱原発市民ウォークを10月23日(土)におこないます
(午後1時半、JR膳所駅前広場に集合)。
みなさんお忙しいことと思いますが、都合のつく方はぜひ足をお運びください。
どなたでも自由に参加できます。


先行きがまったく不透明な放射性廃棄物の処分
経産省が方針転換:放射性廃棄物の処分を海外に委託するという抜け道


国内ではこれまでに24基の原発の廃炉が決まっています。すでに一部の原発で廃炉作業が開始されており、今後2020年代半ば以降には原子炉の解体などが本格化するものと予想されます。原子炉の解体に伴いさまざまな放射性廃棄物が次々に生じることになりますが、これらの廃棄物を具体的にどのような方法で処分するのかということがこれから大きな課題となります。使用済み燃料を再処理してウランとプルトニウムを回収した後に生じるいわゆる「高レベル放射性廃棄物」に関しては、ようやく国の機関である原子力発電環境整備機構(NUMO)により、地下300メートルより深い地下に処分するという国の方針に基づき、最終処分場建設のための候補地の選定作業が開始されるに至っています(北海道の2市町を対象とした文献調査)。一方、高レベル放射性廃棄物以外の廃炉などにより生じるいわゆる廃棄物は、放射能汚染の程度は様々ですが、一括して「低レベル放射性廃棄物」と称されています。低レベル放射性廃棄物の場合は、高レベル放射性廃棄物とは異なり、廃棄物発生源である各電力会社(事業者)が自らの責任において処分を行うものとされています。

しかしながら、低レベル放射性廃棄物の処分に関しては、処分のためのごく一般的な条件が定められているものの、実際の処分に向けての、大手電力会社などによる処分場用地の確保や処分場の建設といった具体的な動きは、これまでところほとんど見られないというのが実情です。すなわち、低レベル放射性廃棄物の処分に関しては、一部の原発(日本原電の東海原発など)を除き、現時点では処分先がきまっておらず、事実上まったく未着手の状態に留まっているに等しく、まだ確定的な要因は何も存在していません。このため、低レベル放射性廃棄物は今後どのように扱われることになるのか、その先行きはまったく不透明といっても過言ではありません。

このような状況の中で、去る8月のはじめに行われた経産省の有識者会議において、廃炉により生じる様々な低レベル放射性廃棄物のうち、原発に備えられていた大型の機器・装置類に関しては、処分を海外の業者に委託できるように輸出規制を緩和するという新たな方針を次期エネルギー基本計画案に盛り込むことが決定されました。この計画案には「有用資源として安全に再利用されるなどの一定基準を満たす場合に限り、例外的に輸出することが可能となるよう、必要な輸出規制の見直しを進める」と明記されています。輸出の相手国としては、廃炉事業が進む米国やスウェーデンなどを想定しているとされています。

しかし、国際条約「使用済み燃料管理および放射性廃棄物の安全に関する条約」において、廃棄物は発生国において処分することが国際的な共通認識になっています。すなわち、国際原子力機関(IAEA)が策定した上記の国際条約において、放射性廃棄物は発生した国が処分するべきと示しており、このため各国とも自国の放射性廃棄物は自国内で処分することが原則となっています。また日本では、国内で処分することを前提とした「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定されています
(以上はNUMOによる説明:https://www.numo.or.jp/q_and_a/faq/faq100065.html
国際条約で自国内での処分が原則とされているのは、廃棄物の発生国に安全管理を徹底させ、安易に他国に任せないようにするためであり、このため政府も大手電力会社もこれまでは国内で処分するとしてきました。このたびの経産省の有識者会議における決定は、放射性廃棄物はすべて国内で処分するという原則に関わる規制を変更することを意味しています。海外へ処分を委託するのは例外的な場合だけであると経産省は強調していますが、原発から生じる放射性廃棄物をどのように処分するかは原子力政策の根本に関わる問題であるため、このたびの「海外での処分」を認めるという決定は「国内での処分」という方針から重大な方針転換であることは明らかです。低レベル放射性廃棄物が今後どのように扱われることになるのか先行きがまったく不透明な状態の中で、一部の廃棄物に関して国内処分の方針を転換することだけを先行して決定することは、低レベル放射性廃棄物の処分にいわば抜け道を用意することにつながるのではないかと懸念されます。現状では、相手国の同意があれば例外的に輸出できますが、日本は「外国為替および外国貿易法」(外為法)の通達により海外への輸出を禁じています。しかし、経産省は法改正を行わなくても通達の見直しで対応できるとしています。

《放射性廃棄物の区分とその処分方法》

低レベル放射性廃棄物には様々な種類のものが存在していますが、資源エネルギー庁放射性廃棄物処理課の資料によれば、以下に示すような区分に分けらており、その各区分に関して処理方法の一般的な条件が定められています。

(廃棄物の種類)          (廃棄物の例)     (発生源)
高レベル放射性廃棄物        ガラス固化体      使用済み燃料再処理施
低レベル放射性廃棄物
 放射能レベルが比較的高い廃棄物  制御棒、原子炉内構造物
 放射能レベルが比較的低い廃棄物  廃液、フィルター、
廃器材、消耗品などを固形化  原子力発電所
 放射能レベルが極めて低い廃棄物  コンクリート、金属など
 超ウラン核種を含む廃棄物     燃料棒部品、廃液、フィルター 再処理施設
 ウラン廃棄物           消耗品、スラッジ、廃器材   ウラン濃縮・
                                 燃料加工施設
 クリアランスレベル以下の廃棄物  原発解体廃棄物の大部分 上記のすべての発生源

(注:「クリアランスレベル」とは、放射能レベルがきわめて低く、人の健康に対する影響を無視できるレベル(年間0.01ミリシーベルト)であるものを指します)

この資源エネルギー庁の資料には「低レベル放射性廃棄物については、発生者責任の下、原子力事業者等が処分場所の確保などの取り組みを進めることを基本としています」と明記されています。

《放射性廃棄物の種類に応じた処分方法》

放射性廃棄物の処分方法は、深さや放射性物質の漏出を防ぐバリアの相違により以下の4つに分類されます

・トレンチ処分:人工の構築物を設けない浅い地中に埋設する処分方法
・ピット処分:コンクリートピットを設けた浅い地中に埋設する処分方法
・中深度処分:一般的な地下利用に対して十分余裕を持った深度(地下70メートル以上の深さ)に埋設する方法
・地層処分:地下300メートルより深い地下に埋設する処分方法(高レベル放射性廃棄物)

これらの廃棄物は放射能レベルの高い順に、「中深度処分」の対象とされる原子炉制御棒などの廃棄物は「L1」、浅い地中のピットに埋設される廃液、消耗品などの廃棄物は「L2」、浅い地中のトレンチ(溝)に埋設される解体コンクリートや金属などの廃棄物は「L3」と称されおり、いずれも数十年から数百年管理する必要があるとされています。

《経産省が海外での処分を意図する放射性廃棄物の内容》

以上が資源エネルギー庁による説明の内容ですが、経産省が海外での処分を認めようとしている廃棄物は原子炉に付属する大型の機器、すなわち「蒸気発生器」、「給水加熱器」、「核燃料の輸送・貯蔵用キャスク」です。これらの機器は長さが5~20メートル、重さが100~300トン前後もある大型機器であり、上記の資源エネルギー庁の説明で「L2」に分類される低レベル放射性廃棄物です。「L2」に分類される廃棄物は本来であれば地下の浅い場所に(地下数メートルから10メートル程度の位置)に設けたコンクリート製のピットの中に収容し、放射性物質の漏出を監視しながら、放射性物質の濃度が十分低くなるまで300年~400年にわたり管理を行うことが必要とされるものです。

経産省は原発敷地内で保管されている大型機器も輸出の対象となるとしており、このため稼動中の原発の場合でも古くなって交換された機器が廃棄物として輸出される可能性があります。経産省は、国内に処理設備がなく発電所の敷地内で保管したままにすると作業スベースが圧迫され、廃炉の妨げになるとしていることから、このたびの国内での処分という原則を逸脱しての海外での処分という方針変更は電力業界からの要望を入れたことによるものではないかと考えられます。また「蒸気発生器など構造が複雑な、放射能で汚染された大型機器の解体に関するノウハウが国内にない」(東大の岡本孝司教授:原子力工学)こともひとつの要因かもしれません。さらに、原発敷地内にたまり続ける廃棄物への住民の不安感もあり、海外での処分に期待するという見方もあるとされています。一方、福井県内の3カ所に原発を保有する関西電力は、処分が必要な蒸気発生器が計33個あるとしており、「合理的な処理のために海外事業者を活用することも選択肢のひとつ」としています。

《国内での処分の見通しがまったく立っていない低レベル放射性廃棄物》

先に述べたように使用済み燃料の再処理から生じる高レベル放射性廃棄物の処理に関しては十分な見通しが立ったといえる段階にはないものの、すでに最終処分地の候補地に関する調査が開始されていますが、この高レベル放射性廃棄物以外の原発から生じる廃棄物の処理に関しては、一部の原発を除き、まったく見通しが立たない状態にあります。すなわち、国内でこれまでに廃炉が決定している原発は24基あり、事故を起こした東電福島第一原発の6基を除き、残りの18基における低レベル放射性廃棄物は計16万5千トンに上るとされていますが、このうちの9割以上は処分先のめどが立っていません。

朝日新聞が電力各社に対して今年の7月に行った調査によれば、上記の18基合計で、L1《放射能汚染度が高く地下70メートル以上の深さに処分》に分類される廃棄物が約3160トン、L2(地下10メートル程度のピット内に処分)に分類される廃棄物が約2万9320トン、L3(浅い地下の溝に処分)に分類される廃棄物が約13万2690トンに上ったとされています。

このうち処分の見通しが示されているのは日本原子力発電の東海原発(茨城県)のL3だけに過ぎず、原発敷地内に埋設する計画とされています。L1とL2の廃棄物に関しては原子力規制委員会が審査を行っていますが、処分先は決まっていません。他の原発については各電力会社は「現時点では決まったものはない」「電力業界全体の問題として取り組む」としているとされています。

現在すでに廃炉作業が進められている原発では廃棄物が積み上がりつつあります。日本原電の東海原発と敦賀1号機(福井県)、中部電力浜岡1号機(静岡県)の計3基では、L2とL3の廃棄物で計1320トンが発生しており、いずれの敷地内で保管されたままです。

福島原発の廃炉の過程で生じた廃棄物のひとつである汚染水、いわゆるトリチウム汚染水に関しては、原発の敷地外に搬出するという議論があったにもかかわらず、経産省は原子力規制委員会の許認可に時間がかかるとして、漁業関係などによる強い反対を無視して、海洋へ放出するという方針を決定しました。そしてこのたびは、核廃棄物は国内で処理するとされている国際条約における原則を単なる通達ひとつで捻じ曲げて、廃棄物の一部(大型の機器・装置)の処理を海外に委ねるという方針に踏み切ろうとしています。この方針が実行に移された場合、海外での処理の対象とされる放射性廃棄物の範囲がやがてなし崩しに拡大されてしまうのではないかという懸念も存在しています。

福島の人々の反対を押し切ってトリチウム汚染水の海洋へ放出するという極めて安易な方針が採られたことで政府の廃炉政策への信頼は大きく損なわれましたが、トリチウム汚染水の場合と同様に安易な方策ではないかと懸念される海外での廃棄物処分という方針を経産省が決定したことにより、廃炉に関する国の政策への信頼がさらに大きく損なわれることになるのではないかと懸念されます。

原子力規制委員会には、廃炉により生じた放射性廃棄物の処分が適切に行われているか厳重に監視し指導を行う責任があります。このため規制委員会は、このたびの海外での処分を意図する、国際条約における自国内での処分という原則を骨抜きにするご都合主義の政府の方針を撤回させなければなりません。

廃炉作業により生じる放射性廃棄物の処分は始まったばかりであり、今後数十年にわたり続くことになります。適切な処分が確実に行われるか、市民も常に関心を持ち続け、監視していくことが必要とされます。

☆この一文は主に福島民報(2021年8月27日)、朝日新聞(9月20日)、資源エネルギー庁の公表資料などを参考にして記したものです。

2021年10月16日
《脱原発市民ウォーク in 滋賀》呼びかけ人のひとり:池田 進

〒520-0812
大津市木下町17-41 
電話/FAX:077-522-5415
メールアドレス:ssmcatch@nifty.ne.jp

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