海外協力隊への応援歌

青年海外協力隊はじめJICAボランティアを心から応援しています。
2010年1月帰国、イエメン、青少年活動隊員より

青年海外協力隊 派遣前訓練 (生活編)

2013-03-25 | Weblog
<修論番外編(草稿より)>
第2章 JICAの制度と体制
~ 企業は安心して社員を派遣できるか ~

2.1.2 訓練生活

 派遣前訓練は男女比がどの班も同じ程度になるよう苗字50音順で生活班10班にわけられた。
 班には指導員が主、副2名配置され、訓練所からの連絡事項は彼らを通して週に1度の班の連絡会で伝えられる。二本松訓練所の場合、居室は何棟かある訓練棟が男性棟、女性棟にわけられ、1つの階に1つの生活班が配されていた。居室は個室で、机、ベッド、棚と小さいクローゼットが備えられている。居室は各フロアL字型に配され、中央は畳敷きの共有スペースで、奥には小さな流しと冷蔵庫、ガスコンロ、電子レンジ等があった。毎日の点呼や毎週の連絡会等はここで行われた。手洗い所は各フロア居室スペースを出た廊下にある。浴室は大浴場が1ヶ所で、二本松訓練所の場合は数棟先まで行っていた。民間企業の入社時集合研修や、学生で言えば林間学校のような感じである。筆者の勤務先の入社時導入研修の期間は1ヶ月であった。65日間という長期にわたる集団生活は、学生時代に寄宿舎や寮にでも入っていない限り経験しないだろう。訓練所には体育館とグランド、テニスコートの設備があった。いずれも職種の実技練習等に使うものであるが、あいている時間には利用規程を守れば自由に利用できた。

 毎朝「朝の集い」という朝礼がある。以前はここでランニングなども行われていたとのことだが、現在はラジオ体操と国旗掲揚が行われている。国旗は、日本国国旗、JICA旗、JOCV旗は雨天を除き毎日掲揚され、平日はこれに加えて派遣国の国旗が日替わりで掲げられる。BGMは掲揚される国旗の国の国歌である。国旗を掲揚するのは当番の候補生のため、その国の国旗を知っているとは限らず、上下を間違えないような工夫もされていた。アフリカの国歌が非常に類似していることに気が付くのだが、これは、アフリカ各国は国歌の前半に独立を記念する同じ曲を使っているとのことであった。

 食事は毎日決められた時間に食堂でとる。片付けは生活班ごとに1週間交替の当番制だった。食事の片付けのほか、朝の国旗掲揚当番や図書委員、講座委員等の委員があり、語学クラス、任国にはそれぞれリーダーを決めて連絡係を務める。候補生全員がなにかひとつは役割分担があった。洗濯室は1箇所で、十分な数とは言えなかったが、訓練生130人あまりが時間や曜日をずらしたりして、1週間に1~2回洗濯をするぐらいの設備はあった。ベッドリネンは毎週1回、所定の位置へ出して新しいものを受け取った。自分で洗濯をする必要はなかった。

表 訓練運営上各生活班に置かれる9の係
① 班長   (生活班毎に1名)
② 副班長  ( 〃 1名)
③ 図書委員 ( 〃 2名)
④ 講座委員 ( 〃 1名)
⑤ 自衛消防隊( 〃 6名)
⑥ 全体日直 (生活班ごとに輪番制)
⑦ 食事当番 ( 〃 )
⑧ 語学クラスリーダー(クラス毎に1名)
⑨ 国別リーダー(派遣国毎に1名)
(平成19年度3次隊訓練資料より筆者抜粋)

 必要物資の補給については、二本松訓練所は山の中腹にあり、一番近い商店のある岳温泉(だけおんせん)まで山道を徒歩約30分かかる。文房具や教材等は週に1回、出張販売があり、そこで購入したり、次週までの注文をしたりした。平日の食事は3食出るが、土日の食糧や、メニューによって不足する栄養は自分で補給する必要がある。食堂メニューはご飯のおかわりもできるなど青年でも量的には十分満足する量が準備されているが、果物がほとんど提供されないなど、予算の限界が見えていた。また菓子等の嗜好食品は訓練所内では入手できない。週末は買出しに出るか、買出しに出るほかの候補生に依頼した。時折、面会にくる家族等からのさしいれのおすそわけに預かったり友人たちが救援物資を送ってくれたりした。手紙は班のポストに届けられて連絡係の候補生が毎日班員分をフロアの共有スペースまで届けてくれるが、小包などは掲示板に貼り出され、守衛室まで受け取りにいった。荷物が届いていることを他の候補生から教えられることもあった。

 3次隊の訓練機関は10月から12月にかけて行われ、季節は秋から冬へ向かう。防寒には十分な準備をしていったつもりの衣類だったが福島県の山の中腹の冷え込みは予想以上で、追加を送ってもらったり、バスで30分以上かかる二本松の市街まで買出しに出かけるなどした。訓練所内は、当時、外気温が14度以下にならないと暖房が入らないこととされていた。居室の暖房は切ることはできても入れることはできなかった。風邪などで体調を崩す候補生も出て、その基準は見直されたようだったが、体調を崩した候補生も医療隊員などがよく面倒を見ていた。もちろん訓練所内には保健室があり、予防接種等の手配もあるため保健師は日勤していた。

 訓練所内は禁酒で、飲酒が発見された場合、その候補生は即訓練打ち切り、隊員候補からはずれて退所となる。退所は遅くても決定の翌日で猶予はない。訓練期間中に健康状態が悪化したり、辞退などの理由で退所する候補生もいる。外出は、決められた時間内なら可能で、基本的に土曜の午後から日曜は休みであったため、隊員候補生たちは岳温泉へ繰り出しよく酒を飲んでいた。女性候補生は温泉めぐりをするなどしてストレスをコントロールしていた。

 訓練所がどれだけ厳しくても、任地はもっと厳しいはずだということ、65日間いっしょにすごす候補生たちが途上国でのボランティアという同じ志を持って集まっていること、訓練所を出たあと一同に会することはもうないのだということを、どこかで候補生たちは認識していた。

青年海外協力隊の人物像

2013-03-25 | Weblog
<修論番外編(草稿より)>
(◆~◇部分は引用)

第2章 JICAの制度と体制
~ 企業は安心して社員を派遣できるか ~

1.1. 協力隊員の人物像

 2011年(平成23年)1月末現在、8分野、世界5地域 、76カ国で活動している平均年齢約28歳、2725名の青年海外協力隊隊員たち は、どのような人材だろうか。
 協力隊員に求められている人物像を概観するために、募集要項に記載されている応募にあたっての心構え、隊員に配布されるガイドに記載されている隊員適性、そして、協力隊事業創設の際に提示された協力隊員の人物像という3つの資料を見ておく。

 まず、青年海外協力隊の募集要項の記載である。協力隊に参加するための心構えとして応募の前に考えるよう、次のように示されている。
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◆ 青年海外協力隊に参加した多くの方々が高い充実感を味わって帰国されます。しかしその充実感は現地で漫然と生活しているだけでは決して得ることはできません。次に掲げる2つの重要な心構えを自分自身の中で理解し、覚悟・納得し、青年海外協力隊員としての自覚と覚悟を持ち、自立的に行動できる方々に応募していただきたいと思います。
(青年海外協力隊、日系社会青年ボランティア 平成23年度秋募集 募集要項)◇
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 2つの重要な心構えとは、「現地の人々と共に」「チャレンジ精神」としている。日本の高い技術力に対し途上国からの協力隊員派遣の要請があるが、その技術を活かすには、開発途上国の現場で、現地の人々の生活や考え方、行動様式を学び、現地の人々と同じ目線に立って活動し、信頼関係を築くことが必要であり、その上で本当に価値ある活動を始めることができる。また、現地での活動は日本と全く条件が違い、予想できない問題が次々に現れ、日本の常識も一切通用しないと考えておいたほうがよいような環境の下で、自ら発想し、行動を起こし、困難に立ち向かう勇気と忍耐力、強いチャレンジ精神が求められている、とも記載されている。

 訓練所に入所してから配布される隊員ガイド(ハンドブック)の中で、隊員の適性は次のように示されている。
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◆ 現地で現地の人々の間に入っていき活動する「民衆指向」「草の根(グラス・ルーツ)指向」の隊員として、
●持続する情熱: 協力活動の途中で種々の困難に遭ったとしても、最後までやりぬく情熱を持続させること
●健康管理: 日本とは異なる自然・生活条件の下でも健康を維持する自己管理能力を持つこと
●文化的素養: 異民族社会における人間集団の中で行動様式を観察し、理解しようとする態度
●柔軟な思考力: その中にあって様々な手法を考えることのできる思考の柔軟性
●表現力・説得力: 事実を説明し自己の考え方を理解させうる表現力・説得力
(JICAボランティア・ハンドブック【長期派遣】2007年(平成19年)10月, p9, 「1-3-1 隊員とは?」)◇
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 そして、昭和40年、協力隊の創設時にさかのぼると、協力隊員の「あるべき人間像」は次のように示されている。
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①私利私欲を超越して日本青年海外協力隊計画を推進するに必要な、ときにはいやな仕事、愉快でない仕事にもすすんでたずさわる人。
②生活の不便は勿論、孤独感におそわれ、身近に危険を感じるような状況下でも、適切な判断のもとに終始仕事に従事する情熱を持っている人。
③自分とともに仕事をする相手国の人達を理解し、融和し、他の隊員とも仲よく働くことの出来る人
④肉体的に過重な労働を必要とする、またその活動分野を広く応用し、判断を誤らず積極的に関心を以て行動できる人。
⑤宗教、文化、民族的に異なった背景をもつ国の人たちの見解、偏見に対処する態度、また、それらの国々の直面する問題の理解につとめようとする、豊かな人であること。
⑥わが国をよく理解し、わが国の正しい理解を他の国の人々にすすめていける人。
(青年海外協力隊20世紀の軌跡, p7, 「協力隊の人間像」)◇
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 これらから浮かび上がってくる自発性、民衆志向、バイタリティーと謙虚さ、基礎知識と経験、心身の健康、周囲の理解等 といった人物像は、青年海外協力隊隊員にだけ特別に要求される適性だろうか。自ら考え創意工夫し、あるものを活用し、相手を理解しようと努め、時には困難な過程を乗り越えて信頼関係を築き、協働して事業目標、業務目標を達成していくことは、民間企業で日々行われている事業活動の中で求められている人物像も同じではないだろうか。協力隊の活動先が途上国であるという違いはあり、生活環境として途上国のほうが厳しいかもしれないが、企業での業務には生活環境とは違ったストレスもあるであろうし、昨今、企業もグローバル化の波の中で勤務地が日本とは限らない。BOPビジネス の積極的な展開を計画する企業等もあり、強く、たくましく、精神的にも肉体的にも知的にもタフで柔軟な人材であることを求められる協力隊の隊員像は、企業人のそれとかわらない。このように見てくると、人材について、隊員像と社員像に顕著な齟齬はなく、自社社内で鍛える2年と、協力隊活動の2年の間で期待できる、あるいは要求される隊員、社員の人間的な成長については、どちらで過ごしても遜色ないと考えられる。

 隊員が活動を実行するにあたって必要な能力として、堀江新子によれば(注:堀江新子, 平成20年9月, 『青年海外協力隊の国際協力活動に関する研究』p50)、「隊員自身の現場における洞察力、調整力、想像力」「周囲の人々を巻き込む熱意」「これらの能力を発揮するための、言語運用能力」「周囲の人を納得させる技術力、教養」が挙げられている 。

 それでは、隊員たちはすべてがこの隊員像を満たす人材なのだろうか。ここで、隊員の選考について把握しておきたい。

 青年海外協力隊の隊員は、原則公募制であり、一次試験、二次試験を受けて合格した志望者が隊員候補生となって訓練所への入所資格を得、派遣前訓練を修了して合意書を提出して協力隊員となる。一次試験、二次試験を通じて人物と技術レベルが測られる。

 青年海外協力隊の応募の要件は、応募期間の最終日の満年齢が20歳以上39歳の日本国籍を持つ青年である。募集は年2回で、4~5月に行われる春募集と10~11月に行われる秋募集で募集される。活動任期は2年、派遣は年4回あり、それぞれの派遣時期にあわせて派遣前訓練が実施される。派遣時期については要請ごとに記載されている。協力隊参加希望者は、この募集期間に応募書類を提出する。応募書類は全員が提出必要な書類として応募者調書、応募用紙、健康診断書があり 、該当者のみ提出する書類として職種別試験解答用紙、語学力申告台紙がある。応募者調書は履歴書に該当し、応募職種に加え、希望要請を記入する欄もある。応募用紙で応募の動機や応募職種の選択理由、どのような活動が可能か、などを記述する。

 直近の平成23年度秋募集の応募用紙の質問項目の内容は次の通りで、これらの質問がA4サイズの応募用紙表裏に印刷されており、応募者は記述式で記入する。
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・ ボランティア活動に参加する動機、抱負
・ 応募者の考えるボランティア活動の意義、目的
・ 応募する職種や要請の選択理由、経験や技術適合性、セールスポイント、弱点
・ 自己PR、応募する職種に関係する経験以外で特筆すべき経験
・ 実際に派遣された場合、活動内容、日常生活も含めどのようなボランティア活動を行うか
・ 帰国後、参加経験をどのように生かしたいか ◇
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 質問の内容と記入欄の量から、青年海外協力隊への参加を考え、質問に対する自分なりの思考をまとめて記述することができれば、一次試験は合格できるだろう。この一次試験の応募用紙で応募の動機や職種選択理由、経験等曖昧な点があれば、二次試験の面接で問われる。民間企業の社員は技術系といえども業務の中で社内文書や報告書等を書くことは必須であり、論理一貫性や説得性、簡潔にまとめて理解しやすく提示することなど日々協力隊試験の訓練をしているようなものであるから、応募書類の記入にはさほど困ることはないと考えられるが、それでも合格できるとは限らない。協力隊の試験は、落とすための試験ではないと言われているが、合格者は苛酷な途上国での活動に耐えうるであろう初志と動機と体力を持ち、それを論理的に説明できる志望者であり、国家事業として派遣されるに適格な人材であると言える。

青年海外協力隊 派遣前訓練

2013-03-25 | Weblog
【修士論文「民間企業の青年海外協力隊現職参加について-希望する社員への対応に関する一考察」(Copyright: 吉備国際大学大学院(通信制)連合国際協力研究科 国際協力専攻 学生番号:M931003 All rights reserved.)】

第2章 企業が支援する理由
- 企業の社会的責任からの考察 -

2. 企業の捉え方
(略)
◆ 訓練から派遣まで

青年海外協力隊の試験に合格した隊員は、派遣前に65日間の合宿訓練を受ける。この派遣前訓練は、隊員に提供される非常に貴重な経験のひとつである。この訓練は、独立行政法人国際協力機構法に基づいて実施される 。訓練も選考の一過程と位置付けられており、隊員になるためには訓練修了が要件となる。いっしょに訓練した隊員候補生は、いわば同期隊員で、訓練後約2週間後を目処に任国へ出発する。訓練は年に4回、主に長野県にある駒ヶ根訓練所と福島県にある二本松訓練所で行われている。4月に訓練が開始される隊次は1次隊、7月開始は2次隊、10月開始は3次隊、1月開始は4次隊と呼ばれる。この両訓練所でそれぞれ100名から250名程度の候補生が同時に訓練を受ける。訓練所は派遣国によって指定されるため、各々の訓練所には、隊員の職種8分野、さまざまな職種の隊員候補生がいる。平成19年度3次隊からはそれまで別々に実施されていた青年海外協力隊とシニア海外ボランティアの合同訓練が開始されたため、年齢的にも20歳から70歳前後までの隊員候補生がいっしょに訓練を受けている。

訓練所での隊員の構成は、平成19年度3次隊二本松訓練所の例では職種は7分野、58職種、男性62名、女性69名、計131名であった。内、青年海外協力隊隊員候補生は男性39名、女性62名、計101名、それ以外がシニア海外ボランティアである。候補生全員の平均年齢は男性40.6歳、女性30.4歳、総平均年齢35.2歳、このうち青年海外協力隊隊員候補生は男性28.3歳、女性27.7歳、総平均27.9歳であった。派遣予定国は3地域28ヵ国であった。

民間企業の実施する異業種交流会や各種セミナーでも、これほどバラエティに富んだ職種や年齢層が集まる交流会は見あたらないだろう。そこに参集している隊員候補生は、途上国での技術移転を志向して試験を受け合格した専門家たちである。訓練所を出たあとは、単独で見知らぬ途上国での活動がはじまるという緊張感のもと、同期の隊員候補生たちと65日間、寝食を共にし、語学と技術、知識に最後の磨きをかけ、派遣に備える。民間企業の社員もこの訓練所で同期の人材には大きな刺激を受ける。企業の中で大切に育てられ、企業名に守られてきた社員は、自分と同世代にこれほど多様な職種の専門家がおり、すべてが途上国での技術協力を志向したボランティアであることを目の当たりにし、それまで経験したことのない広い世界を垣間見ることになるのである。

語学修得もまた、隊員候補生となった社員に提供されるメニューのひとつである。派遣前訓練のメインは語学修得である。全387時間の講座の中で、語学が258時間、総時間の約2/3を占める。平成19年度3次隊二本松訓練所では英語を含めて13ヶ国語の訓練が実施された 。訓練所を出ると通常約2週間後にはその言葉しか通じない可能性のある国へ1人、もしくは多くても数名で赴くことになる。訓練が始まって1ヶ月になる頃から同じ語学クラスの隊員候補生とは現地語で話すように指示され、65日間の訓練を終えるころには、ある程度日常会話はできるようになる。現地へ行って相手の言うことがわからない可能性はあるが、こちらの伝えたいことは、少ない語彙でも初歩の文法を駆使すれば言える程度になる。

派遣前訓練では、語学のほかに、国際協力、ボランティア事業、安全管理・健康管理等の各種講座が提供され、隊員候補生が受講する。平成19年3次隊の訓練は目的別に6つの分野で構成されていた。語学講座、ボランティア講座、任国事情・異文化適応講座、安全管理講座、自主企画、その他行事やオリエンテーション等である。日本から国の事業として派遣されるボランティアとして必要最低限の知識は網羅されている。ボランティア講座の内容は、民間企業では企業側から提供されることはまずない内容であり、企業のグローバル化もすすむ中、最低限の国際関係、国際協力の知識は、企業人としても知っておいたほうがよい内容である。「国際関係と日本の国際協力」「人間の安全保障」のほか、JICAの事業内容や処遇、制度に関する講座、「青年海外協力隊事業の理念」といった講座が必修であった。異文化適応についての講座についても、「コミュニケーション手法」「異文化の理解と適応」「異文化体験シミュレーション」といった異文化に関する必修講座に加え、「生活技法講座」「イスラム教とは何か」「日本の近・現代史」といった講座も提供された。安全管理講座は派遣先が途上国であるという特徴を表し、感染症や狂犬病、交通安全に関する知識や初歩の救急法を習得する内容となっている 。

このほか、訓練所では隊員による自主活動として時間外に各分野の専門家たちが、途上国に行ったときにすぐに役立つ知識などを提供しあう。例えば日本語教師による超初級用日本語ワンポイントレッスンの仕方講座などがあった。また、特別行事として皇室接見もあった。予防接種は毎週火曜、講堂で該当感染症やそのワクチンについての副作用等を含めた説明を受けた後、A型肝炎2回、B型肝炎2回、狂犬病3回、破傷風1回のワクチン接種が行われた 。

(中略)

訓練所の最終日には修了式と壮行会が行われる。家族が迎えに来る隊員もいて会は盛り上がる。どこかにこれから任地で一人で活動することへの緊張感を持ちながら、65日間をいっしょにすごした候補生たちと交わす旅発ちの言葉は「ありがとう」と「生きて帰ってこようね」である。平成19年度3次隊二本松訓練所で訓練を受けた隊員たちは訓練修了数週間後、自治体の表敬訪問を経てそれぞれの任地、28カ国へ向かった。

◆ (中略)

平均年齢27~28歳、入社3年~10年目、民間企業の貴重な戦力であり、企業人としても育ち盛りである社員を2年余りもの間、青年海外協力隊活動に参加させるのであるから、企業としては、社員自身が自己実現のために企業を休職してボランティア活動に参加するとはいえ、自社でその社員にその2年余りで提供できるものと、少なくとも同等か、できればそれ以上の価値のある経験を得てきてほしいと考える。企業の勤務の中では出会えない人と出会い、社員の人生を豊かにするような活動ができることを望みながら派遣する。他人の釜の飯を食べ、たくましくなって戻ってこい、という、いわば武者修行に出すような心持であろう。海外協力隊事業は、企業のこの思いに応えることが可能な事業である。