我が家の周りは、2世代3世代同居か、高齢夫婦二人でもすぐ隣に子供一家がいるかで、高齢者一人暮らしというのはほとんどない。
近所同士の立ち話はあまり見かけないし、隣人であっても姿を見かけることがほとんどない。3代替わってようやく地元民なんてことを聞いたことがあるが、ここに来て22年の私など論外、夫の死後「いつ東京へ帰るの?」とさえ尋ねられた始末。
そんな環境もあるのか、1人暮らしになった私を、近所の方々がなにかと気遣ってくれているなんて考えたこともなく、周りが畑とはいえ隣家もそこそこあるから、夕方になっても電気がつかない、雨戸が開かない、姿が見えない…と、心配をかけていたことなど知るすべもなく、今頃になってようやく知ることとなった。
思い返せば、今までは目礼だけで通り過ぎていた人たちが、立ち止まって二言三言と話していってくれたり、狭い狭い交流の中で、ライン友達が2人も増えている。
2枚の畑を挟んだ向こうに、新築の立派な家が建ってから15~16年経つ。
我が家側から見える2階は子供部屋のようで、左側にはピンクのカーテン、右はグリーンのカーテンがかけられているが、その部屋に明かりが付いたことはない。
毎年5月には鯉のぼりが立てられ、鯉や子供の名前が書かれた幟旗が風にたなびく。それから察するに女の子がいるのは分かっていたから、他に男の子二人がいるお宅かと思われた。
昨年秋頃からピンクの部屋に明かりがつくようにり、お姉ちゃんが成長して自分の部屋に居るようになったんだと、他所のお子ながらその成長を感じた。
先月あたりからは、グリーンの部屋にも明かりがつくようになり、そして数日前には、そのお宅の末っ子君らしき男の子から「こんにちは!」と大きな声で挨拶される。
居間の真正面に見える、向こうの家の窓の明かりが優しい。
カーテンの向こうの、少女と少年の成長を透かし見る明かりが嬉しい。
あの明かりが成長の証なら、我が家の明かりは「変わりないですよ」の証。
きちんと生活して心配をかけないようにしなくては……そんなことを思いながら、朝から雨降りのうす暗い今日は、早めに居間の明かりをつけた。