最上川舟下り。船着き場と対岸の仙人堂。山形県戸沢村古口。JR高屋駅前。
2024年9月10日(火)。
新庄市本合海の「芭蕉乗船の地」の見学後、最上川に沿って最上川舟下り乗船場へ向かった。旅行前に旅行雑誌を見ると、最上川舟下りには2社があり、内容が異なっていた。ネットで調べると、最上峡芭蕉ライン観光は、最上川を下るだけの舟下り約2500円で、仙人堂には行かない。自分の車を置いている所まで取りに行かなければならず、バス代や時間も要する。最上川舟下り「義経ロマン観光」は、仙人堂周辺のみの舟の周遊と仙人堂見学が約2500円、仙人堂に渡って帰るだけだと1000円だと書いてあった。
舟下りには関心がなく、一番興味があったのは、仙人堂だった。1000円なら安いので、これを予定した。
対岸に仙人堂がある地点に9時40分ごろに来たが、途中で見た最上峡芭蕉ライン観光のような営業所は見当たらない。国道横の空き地に駐車して、草刈りをしている男性に尋ねると、「義経ロマン観光」の営業所はJR高屋駅近くの高台にある、と教えてくれた。南側の高台へ登ると、下の国道からは見えなかったが、たしかにコンテナ小屋の営業所があり、1組の夫婦が舟下りを待っている様子だった。中に入り、仙人堂へ行きたい、と言うと、1時間近く何もやることがない、クマが出る、と言われて10時発の船旅に半ば強制的に参加させられ、2500円を支払わされた。
10時になると、4人で車に乗り、先ほどの空き地に着いた。車を下りると、川岸へ下る道があり、舟が2隻並んでいた。
さきほどの男性は社長兼ガイド兼船頭だった。そういえば、救命胴衣の着用も説明もなかった。話は自分の自慢話が多くて閉口したが、拍手を強制された。兼高かおるは何度もこの人の舟に乗船し、仙人堂を3度訪ねたという。兼高かおるから褒められたといっても、1959年12月から1990年9月まで放送していた「兼高かおるの世界の旅」というテレビ番組を見たことがある人は年代的に少ない。私は海外旅行が趣味だったので、80年代はよく見ていたが、その頃はすでに視聴率は低下していただろう。
本人もそれを分かっているので、最近、感銘を受けたディズニーランドのジャングルクルーズの真似に移行している。それで、現在の舟下りは「最上川トークライブクルーズで巡る最上峡ワールド」という名称になり、岸辺の岩はジャングルクルーズらしいようにワニの形をしているとか案内している。
最上川水運や仙人堂の歴史などの基本はガイドをしないので困ってしまう。このあと、清川番所の資料館を尋ねたら、職員が、新選組の源流を築いた清河八郎の本名は齋藤正明で、その父親である齋藤治兵衛が仙人堂に常夜灯を寄進したが、ご覧になりましたかという。実は、常夜灯に齋藤治兵衛と刻んであるのを見て気になっていたのだが、一気に氷解した。こういう話をしてほしいものだ。
といっても、歴史に興味がない観光客がほとんどなので、特に説明はしないのだろうが。では何を売り物にするかというのも難しいことだが。
舟下りは仙人堂の対岸から始まる。
仙人堂。木が茂っているので国道や岸からは鳥居しか見えない。
仙人堂上流にあたる対岸地区にはかつて集落があったので支流にかかる橋が残っている。
仙人堂・外川(とがわ)神社。戸沢村古口字外川。
日本武尊(やまとたけるのみこと)を主祭神として祀っている。源義経一行が兄頼朝から追われて奥州平泉に落ちのびる途中、この地に立ち寄ったのち、義経の従者・常陸坊海尊が建立したといわれる。芭蕉の紀行文「奥の細道」にも登場する。古くから舟旅の守り神として信仰され、現在は縁結び神社としても知られている。
右側の常夜燈には、「天保13年(1842)5月庄内清川 齋藤治兵衛」と刻まれている。齋藤治兵衛豪寿(ひでとし)は、清河八郎の父で、庄内藩領清川村(現庄内町)の郷士であり、庄内一の醸造石数を誇る酒屋を営む富豪であった。
nii.ac.jp「外川仙人堂信仰の展開 - 國學院大學学術情報リポジトリ」佐藤優2018によれば、
齋藤治兵衛は最上川の舟運と関わる人物とされる。仙人堂周辺は舟の難所で、隠れ岩が無数にあるため破船することが多く、山から吹き下りる突風は、舟の帆を折ることもある。舟の遭難は、人命だけでなく紅花の運送にも大きな損失をもたらした。
仙人堂は、舟の災難除け及び疳の虫除け(小児の疳封じ)が特異な利益として人口に膾炙していた。近世の出羽三山参詣とも密接につながって重要な位置を占めており、関東地方からの参詣者が記した道中記の中で、この社を参拝所及び「羽黒道者錫杖振りはじめの社」と記している。
仙人堂近くの湧き水と手洗い水盤。
仙人堂の脇には休憩所兼売店があり、湧き水で入れたホットコーヒー、アイスコーヒーを味わうこともできる。仙人堂わき水コーヒー(チュロス付)500円。出川哲朗も飲んだというので飲まざるをえない。
約60分の舟下りを終えて、営業所に戻ると、6人ほどの団体が待っていた。
このあと、西に進み、もう一つの名所「白糸の滝」の眺望箇所へ向かった。
日本の滝百選・白糸の滝。戸沢村草薙。
白糸の滝ドライブイン内から眺められる。草薙温泉の対岸にあり、日本の滝百選のひとつ。最上峡の滝群で最大であり、落差約120m。最上川に流れる水が白い糸のように見えるので、白糸の滝と名付けられた。
このあと、西に進み、芭蕉の下船地である清川関所へ向かった。