
2011年3月15日11時4分
東日本大震災で被害を受けた東京電力福島第一原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)の2号機で15日午前6時14分ごろ、爆発音があった。経済産業省原子力安全・保安院に、東京電力が報告した。格納容器につながる圧力抑制室(サプレッションプール)が損傷した可能性があり、濃度の高い放射性物質が外部に漏れ出たおそれがある。2号機周辺の放射線量にも一時、上昇が見られた。東電は、注水作業に直接関わらない作業員や社員を、原発の外に退避させることを明らかにした。第一原発全体で50人の作業員が残るという。
経済産業省原子力安全・保安院によれば、圧力抑制室は格納容器の下部にあり、冷却水が張られた設備。原子炉圧力容器内の蒸気を送り込んで冷やし、水に戻すことで、圧力容器内の圧力上昇を抑える。また、緊急炉心冷却システム(ECCS)の水源にもなる。
爆発後、圧力抑制室の気圧が通常の3気圧から、大気圧とほぼ同じ1気圧まで急激に低くなった。このため、穴が開き、外気と通じるようになった可能性が高いという。圧力抑制室内にある、放射性物質が高い濃度で含まれる水や蒸気が外気に漏れ出した可能性がある。
2号機の西南西にあるモニタリングポストの放射線量は15日午前6時に毎時73.2マイクロシーベルトだったが、爆発音の後の午前6時50分に毎時583.7マイクロシーベルト、さらに午前7時には毎時965.5マイクロシーベルトまで上昇。正門前では午前8時31分に毎時8217マイクロシーベルトまで上昇。その後、下がっている。
午前8時31分現在の第一原発正門での風向きは北東から南西に向け1.5メートル。
保安院はこれまで、原発から半径20キロ圏内の住民に避難を指示していた。
2号機では14日になって炉心を冷やす水を循環させる仕組みが働かなくなった。原子炉内の水位が下がり、燃料棒全体がすべて露出。14日夕に2時間20分間、さらに14日深夜から6時間半にわたり空だき状態が続き、炉心溶融が否定できない状態になっていた。爆発音の後、水位はやや回復したが、燃料の一部が露出した状態が続いている。
爆発音の原因は不明で、1、3号機と同様に原子炉内で発生した水素が爆発した可能性もある。また、溶けた燃料が下部の水に落ち、水蒸気爆発を起こした可能性も否定できないという。炉心が溶融して圧力容器や格納容器に大きな損傷ができれば、大量の放射性物質が大気中に拡散する可能性がある。
放射性物質を内部に閉じこめる機能が失われたとすれば、1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故に匹敵する事故になるおそれがある。また、周囲に大量の放射性物質が飛び散れば、爆発を起こして冷却作業が続いている1、3号機などほかの作業にも支障が出る可能性がある。
ただし、圧力抑制室と通じる格納容器の圧力には変化がなく、大きく破損していない可能性も残るという。圧力抑制室が破損していたとしても、破損部分が上部であれば、これまでに実施した蒸気の放出と同じ状態にとどまる。下部が破損していると、放射性物質を含む水が漏れ出すおそれがある。
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