
2011年3月16日
東日本大震災の影響で、東京電力福島第一原発(福島県)では、爆発や高濃度の放射性物質が外部に漏れる大事故が起きている。国の原発から半径20キロ圏内の避難指示に、島根原発がある松江市と県は「想定外の事態」として情報収集に追われている。県内では1月19日、島根原発2号機での事故を想定した防災訓練を実施した。送電線事故が起き、原子炉が自動停止。炉心の残留熱を除去するために原子炉に注水するポンプが故障で動かず、炉内圧力が上昇した。放射性物質が外部に放出される危険が高まったことから、松江市と県は付近住民らを原発から約10キロ離れた場所に避難させる。松江市民ら約6700人が参加した大がかりなものだった。
福島第一原発の事故と酷似した内容だったが、市原子力安全対策室の小川真室長は「最悪の事態を想定した訓練だったが、今回はそれ以上のことが起きた」と驚きを隠さない。想定を超えていたのは、事故の大きさだけでなく、避難の範囲だという。
市と県が想定している避難区域は、最大で島根原発から半径10キロ圏内で約8万人。国が防災指針で避難範囲を「最大8~10キロ」と設定しているためだ。毎年の訓練もその想定で実施してきた。
今回の事故で出された半径20キロ圏内の避難指示を、県内に当てはめると、松江市のほぼ全域のほか、出雲、雲南両市と斐川、東出雲両町が含まれる。鳥取県側は境港市の一部が対象になる。避難が必要な対象者数は「想定外でデータがない」という。
小川室長は「半径20キロ圏内の避難だと、松江市から全員出ていくことになる。考えたこともなかった事態で、今後検証が必要だ」と話し、防災計画の見直しの必要性も示唆した。県原子力安全対策室の細田晃室長は「国がなぜ、指針の想定を超えた20キロ圏内という数字を出したのかを聞きたい」と話す。
◇
県は、島根原発から半径10キロ圏内の住宅地など11カ所にモニタリングポストを設置している。24時間体制で大気中の放射線量を計測し、2分ごとにホームページ上で公表している。15日の最高値は、松江市鹿島町上講武(かみこうぶ)で午後3時半に計測した1時間あたり0.066マイクロシーベルト。平常の変動幅内にあり、福島第一原発の影響はないという。
またモニタリングポストとは別に、大気中のちりを集めて放射能が含まれているかどうかの測定をしている。1カ月に1回の実施だったが、今回の事故を受けて12日からは毎日測定している。異常は見られないという。(大野正智)
」