紙への愛
金澤ひろあき
京都市の隣、向日市に寿岳文章・しづ夫妻が住んでおられました。英文学者で文章先生はブレイク研究や『神曲』全訳などをされました。しづ先生は『若草物語』を『四人の少女』というタイトルで訳し、岩波文庫より出されています。
お二人の展覧会が、向日市文化資料館で開催されています。
お二人は和紙の蒐集と研究でも有名です。日本中の和紙作りの人を訪ね、作り方や紙の印象を『旅日記』として書きとめられています。
例えば富山県の本高熊(今の八尾町)の記録に、
「雪が深いので楮皮(こうぞがわ)を雪に埋めておくと天然に晒され、人工だけでは到底得られぬ美しい紙が出来る。雪がこの村の紙を美しくするとも言へる。」
一文一文、紙への愛がこめられています。
それ故に、効率化して味気なくなったものに対しては、厳しい批判をされています。
栃木県の彦間紙八寸の記事に、二~三十年前に作った紙と、新しい技術で作った今の紙を比較した後、
「その六枚分の大きさの新式のはパルプの混入もあり、不思議と紙に力がない。大きく漉くのがいけないのではなく、能率万能に凡てを帰著させようとする近代精神がいけないのである。」
蒐集された多くの紙を見ながら、美しさとは何かを考えさせられました。
あったかい顔つきをする紙がある ひろあき
金澤ひろあき
京都市の隣、向日市に寿岳文章・しづ夫妻が住んでおられました。英文学者で文章先生はブレイク研究や『神曲』全訳などをされました。しづ先生は『若草物語』を『四人の少女』というタイトルで訳し、岩波文庫より出されています。
お二人の展覧会が、向日市文化資料館で開催されています。
お二人は和紙の蒐集と研究でも有名です。日本中の和紙作りの人を訪ね、作り方や紙の印象を『旅日記』として書きとめられています。
例えば富山県の本高熊(今の八尾町)の記録に、
「雪が深いので楮皮(こうぞがわ)を雪に埋めておくと天然に晒され、人工だけでは到底得られぬ美しい紙が出来る。雪がこの村の紙を美しくするとも言へる。」
一文一文、紙への愛がこめられています。
それ故に、効率化して味気なくなったものに対しては、厳しい批判をされています。
栃木県の彦間紙八寸の記事に、二~三十年前に作った紙と、新しい技術で作った今の紙を比較した後、
「その六枚分の大きさの新式のはパルプの混入もあり、不思議と紙に力がない。大きく漉くのがいけないのではなく、能率万能に凡てを帰著させようとする近代精神がいけないのである。」
蒐集された多くの紙を見ながら、美しさとは何かを考えさせられました。
あったかい顔つきをする紙がある ひろあき