2022年12月 京都童心の会 通信句会
【選評】
○中野硯池特選
46 浮く沈む胸くすぐりて柚子の風呂 三村須美子
季寄せでは、冬至の日に、柚子を風呂に入れて温まる習慣があると出ている。柚子が黄色く熟れてくる頃は、寒くなった冬である。
柚子風呂に入ると、湯冷めしにくく、温い体でいることができる。水尾の柚子風呂は有名である。
○青島巡紅選
特選 19 寒月の立ち止まる白い水音 野谷真治
読んですぐ自分が橋の上から川面に浮かぶ寒月を撮った瞬間を思い浮かべました。「白い水音」が生きています。水音は変化します。川の流れで揺れては戻ろうとするが、波の凹凸がふわふわと幻惑して満月が一緒に流れていくような様が目に浮かぶようです。
①4 こんな国にしてしまった冬が来る 金澤ひろあき
抽象的だけど、コロナが始まったのも、ウクライナ紛争がはじまったのも、経済状態が悪化したのも、確かに冬。2022年の冬だから言えることですね。そして、そうだよねと言えること。
②5 マクベスの独白長し寒の月 金澤ひろあき
マクベスの独白と寒の月を並べたところが面白い。満月が雲間からかなりの時間自己主張している感じが、共通している。どちらもじっと見ていたいが、忍耐力がついていかない。気力負けしてしまう。
③6 じじとばば競馬の予想日向ぼこ 金澤ひろあき
縁側か公園のベンチで楽しそうにあーでもないこーでもないと言って言われて、笑い合っている、そんなほっこりするような場面です。たまに二人して真剣にというか熱中している姿も見かけます。
④11 花嫁や時雨の中を赤和傘 金澤ひろあき
前撮りの写真でしょうか。綺麗な光景です。ネットによると、赤 =火、光り輝く炎、南 、朱雀、仁。結婚する二人の門出にぴったりのもの。祇園の新橋にある巽神社の前や白川を背にして撮っている光景を見かけます。番傘なら「降り注ぐ困難から守ってくれる」という意味もあるそうです。
⑤12 朴の葉のぱらぱら落ちてきて謀反 金澤ひろあき
大きな葉が輪生状につき、枝先に大きな白い花が上向きに咲いて萎れ、 今度は大きな葉が色褪せて乱舞する、そんな様を「謀反」と詠んだところが面白いですね。
⑦23 老人と子犬いつまでも冬銀河 青島巡紅
「いつまでも」が気になる言葉。読み手を切なくさせる。冬空の下ベンチから動かない影がふたつ。早く帰って暖かくしないと風邪ひきますよと声をかけたくなる光景ですね。逆の読み方も出来るかもしれません。刹那を切り取って「いつまでも」見ていたい光景となる場合もあるかもです。「銀河鉄道の夜」の一挿話のようなイメージがありますよね。
⑧40 一人暮らしもう5年になるがんばった? 蔭山辰子
連れ合いを亡くされて頑張ってきたご自分を褒めてあげて下さい。若い人の場合だと早く自活してそろそろ結婚相手が欲しいとなるのでしょうか。
⑨49 餅つきを断念するとじじの言 三村須美子
恒例行事を急遽中止しなければならなくなった。自分も楽しみにしていた家族もびっくりし、残念に思うことになりますね。「51 年迫る突然起こる目の異常」と関連づけて読んでしまいます。
⑩ 54 りんごむぐ下で構える犬の口 三村須美子
子供の頃飼っていた犬を思い出しました。芯も種も食べさせてしましたが、平気な様子でしたが、芯は喉に詰まらせる危険が、種には微量ながら毒が含まれていて嘔吐や痙攣を起こすこともあるとか後年の知識です。愛らしい犬の鳴き声も想像できます。
「むく」の方言が「むぐ」とネットで出てきました。「むいで」も同様。
⑪ 55 老骨の湯舟に遊ぶ柚二つ 中野硯池
「老骨」と「柚二つ」の並びが良いですね。無口で無骨な老人に笑みを添える柚二つの浮き沈み或いはあっち行きこっち行きするところが目に浮かびます。
⑫ 62 顔見世の桟敷を埋めし芸舞子 中野硯池
京の独特な華やかさのある雰囲気が伝わってきます。
○金澤ひろあき選
特選 35 火が消える自分を抱いて星を見る 青島巡紅
俳諧よりも「詩」を感じました。命と宇宙のつながりのようなものを感じます。同時に、切なさも。読んでいる内に、ピカソの「青の時代」の絵も連想しました。言葉がさまざまな世界を連想させてくれる体験をすることができました。
49 餅つきを断念するとじじの言 三村須美子
年齢を加えて、出来ないことが増えて行く実感。準備から後片付けまでが大変な餅つき。こんな形で現れます。私も今、同じです。
40 一人暮らしもう5年になるがんばった? 蔭山辰子
「がんばった?」が、問いかけでもあるし、自分へのはげましでもあるような。このひとことで明るい世界になっています。ひとことの力はすごい!
57 喪の部屋の明かりの届く花八手 中野硯池
光の描写を通して悲しみがじんわりと。八手の花の白さも、悲しみを静かに深めているかのようです。
13 神と呼ばれた若者に野球の女神の気まぐれ 岡畠真理子
ヤクルトの村上選手のことですね。一時期、ホームラン60本確実と言われていましたが、止まってしまい・・・。また、日本シリーズでもオリックスに封じられていました。気まぐれな女神様をじっとその気にさせるのは、超一流でも難しい。そんなことを実感します。
23 老人と子犬いつまでも冬銀河 野谷真治
老人と子犬がずっと冬銀河を見上げている。童話の世界のヒトコマが、絵のように立ち上がって来ました。孤独とか寂しさを超えるものがあるような気がします。
○野谷真治特選
51 年迫る突然起こる目の異常 三村須美子
去年(二〇二一年)から眼科医者へと通っている。一時は目薬三種類毎日さしていた。
突然起こる目の異常は、怖くなる。
○蔭山辰子特選
14 最終日最終打席で女神微笑む 岡畠真理子
令和4年のことばにも選ばれた村神(上)様。55、56。トラは負けました。神(上)様にはかないません。何もかも悲しいニュースばかりでしたが、スポーツは楽しかったです。アビメッシ エムバペ 森保カントク。
4 こんな国にしてしまった冬が来る 金澤ひろあき
日本も地球も平凡な日々が来ますように。
33 葉の陰に真紅に光る青木の実 青島巡紅
自然は黙って生きて行きます。
○岡畠真理子特選
23 老人と子犬いつまでも冬銀河 野谷真治
「冬銀河」とは雪の積もった散歩道のことでしょうか?光景が目に浮かぶ絵画のような句だと感じました。
6 じじとばば競馬の予想日向ぼこ 金澤ひろあき
夫婦共通の趣味があるのはいいことですね。
41 FiFAサポーターのつもりが寝てしまい 蔭山辰子
夜型人間向きの放映時間でしたから仕方ないかと。でも普段はあまりサッカーは観ない私でも楽しめたワールドカップでした。
48 冬越しの鳥へささげる柿づくし 三村須美子
そういえば「柿の実は全部採らずに鳥たちに残しておく」という話を聞いたことがあります。
○遠藤修司特選
48 冬越しの鳥へささげる柿づくし 三村須美子
鳥のことを思い、取りつくさない心づかい、共生の心が、すてき。日本人のやさしさです。
そんなことを考えさせてくれた良い句だと思います。
○三村須美子特選
4 こんな国にしてしまった冬が来る 金澤ひろあき
この一年、コロナ感染、ウクライナ戦争、宗教と政治家の関わり、五輪疑惑、円安、日本経済の低迷等マイナス面の方が多かったように思います。今、冬の只中です。
「冬来たりなば春遠からじ」いつかは春がやって来る。希望持って日々を送りたいものです。世の中のマイナス面と冬が来るがよく噛み合っていると思いました。
○白松いちろう特選
55 老骨の湯舟に遊ぶ柚二つ 中野硯池
長年、命の洗濯をしてきた湯舟に今年も柚を二つ浮かべ平和なひと時を迎えています。普通がイチバンですね。
【お知らせ】
新年おめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
一月句会
日時 1月15日(日)午後2時より
場所 阪急長岡天神駅東口出てすぐ 喫茶 アーバンにて
※通信句会で参加の方は、作品に84円切手三枚同封下さい。
【選評】
○中野硯池特選
46 浮く沈む胸くすぐりて柚子の風呂 三村須美子
季寄せでは、冬至の日に、柚子を風呂に入れて温まる習慣があると出ている。柚子が黄色く熟れてくる頃は、寒くなった冬である。
柚子風呂に入ると、湯冷めしにくく、温い体でいることができる。水尾の柚子風呂は有名である。
○青島巡紅選
特選 19 寒月の立ち止まる白い水音 野谷真治
読んですぐ自分が橋の上から川面に浮かぶ寒月を撮った瞬間を思い浮かべました。「白い水音」が生きています。水音は変化します。川の流れで揺れては戻ろうとするが、波の凹凸がふわふわと幻惑して満月が一緒に流れていくような様が目に浮かぶようです。
①4 こんな国にしてしまった冬が来る 金澤ひろあき
抽象的だけど、コロナが始まったのも、ウクライナ紛争がはじまったのも、経済状態が悪化したのも、確かに冬。2022年の冬だから言えることですね。そして、そうだよねと言えること。
②5 マクベスの独白長し寒の月 金澤ひろあき
マクベスの独白と寒の月を並べたところが面白い。満月が雲間からかなりの時間自己主張している感じが、共通している。どちらもじっと見ていたいが、忍耐力がついていかない。気力負けしてしまう。
③6 じじとばば競馬の予想日向ぼこ 金澤ひろあき
縁側か公園のベンチで楽しそうにあーでもないこーでもないと言って言われて、笑い合っている、そんなほっこりするような場面です。たまに二人して真剣にというか熱中している姿も見かけます。
④11 花嫁や時雨の中を赤和傘 金澤ひろあき
前撮りの写真でしょうか。綺麗な光景です。ネットによると、赤 =火、光り輝く炎、南 、朱雀、仁。結婚する二人の門出にぴったりのもの。祇園の新橋にある巽神社の前や白川を背にして撮っている光景を見かけます。番傘なら「降り注ぐ困難から守ってくれる」という意味もあるそうです。
⑤12 朴の葉のぱらぱら落ちてきて謀反 金澤ひろあき
大きな葉が輪生状につき、枝先に大きな白い花が上向きに咲いて萎れ、 今度は大きな葉が色褪せて乱舞する、そんな様を「謀反」と詠んだところが面白いですね。
⑦23 老人と子犬いつまでも冬銀河 青島巡紅
「いつまでも」が気になる言葉。読み手を切なくさせる。冬空の下ベンチから動かない影がふたつ。早く帰って暖かくしないと風邪ひきますよと声をかけたくなる光景ですね。逆の読み方も出来るかもしれません。刹那を切り取って「いつまでも」見ていたい光景となる場合もあるかもです。「銀河鉄道の夜」の一挿話のようなイメージがありますよね。
⑧40 一人暮らしもう5年になるがんばった? 蔭山辰子
連れ合いを亡くされて頑張ってきたご自分を褒めてあげて下さい。若い人の場合だと早く自活してそろそろ結婚相手が欲しいとなるのでしょうか。
⑨49 餅つきを断念するとじじの言 三村須美子
恒例行事を急遽中止しなければならなくなった。自分も楽しみにしていた家族もびっくりし、残念に思うことになりますね。「51 年迫る突然起こる目の異常」と関連づけて読んでしまいます。
⑩ 54 りんごむぐ下で構える犬の口 三村須美子
子供の頃飼っていた犬を思い出しました。芯も種も食べさせてしましたが、平気な様子でしたが、芯は喉に詰まらせる危険が、種には微量ながら毒が含まれていて嘔吐や痙攣を起こすこともあるとか後年の知識です。愛らしい犬の鳴き声も想像できます。
「むく」の方言が「むぐ」とネットで出てきました。「むいで」も同様。
⑪ 55 老骨の湯舟に遊ぶ柚二つ 中野硯池
「老骨」と「柚二つ」の並びが良いですね。無口で無骨な老人に笑みを添える柚二つの浮き沈み或いはあっち行きこっち行きするところが目に浮かびます。
⑫ 62 顔見世の桟敷を埋めし芸舞子 中野硯池
京の独特な華やかさのある雰囲気が伝わってきます。
○金澤ひろあき選
特選 35 火が消える自分を抱いて星を見る 青島巡紅
俳諧よりも「詩」を感じました。命と宇宙のつながりのようなものを感じます。同時に、切なさも。読んでいる内に、ピカソの「青の時代」の絵も連想しました。言葉がさまざまな世界を連想させてくれる体験をすることができました。
49 餅つきを断念するとじじの言 三村須美子
年齢を加えて、出来ないことが増えて行く実感。準備から後片付けまでが大変な餅つき。こんな形で現れます。私も今、同じです。
40 一人暮らしもう5年になるがんばった? 蔭山辰子
「がんばった?」が、問いかけでもあるし、自分へのはげましでもあるような。このひとことで明るい世界になっています。ひとことの力はすごい!
57 喪の部屋の明かりの届く花八手 中野硯池
光の描写を通して悲しみがじんわりと。八手の花の白さも、悲しみを静かに深めているかのようです。
13 神と呼ばれた若者に野球の女神の気まぐれ 岡畠真理子
ヤクルトの村上選手のことですね。一時期、ホームラン60本確実と言われていましたが、止まってしまい・・・。また、日本シリーズでもオリックスに封じられていました。気まぐれな女神様をじっとその気にさせるのは、超一流でも難しい。そんなことを実感します。
23 老人と子犬いつまでも冬銀河 野谷真治
老人と子犬がずっと冬銀河を見上げている。童話の世界のヒトコマが、絵のように立ち上がって来ました。孤独とか寂しさを超えるものがあるような気がします。
○野谷真治特選
51 年迫る突然起こる目の異常 三村須美子
去年(二〇二一年)から眼科医者へと通っている。一時は目薬三種類毎日さしていた。
突然起こる目の異常は、怖くなる。
○蔭山辰子特選
14 最終日最終打席で女神微笑む 岡畠真理子
令和4年のことばにも選ばれた村神(上)様。55、56。トラは負けました。神(上)様にはかないません。何もかも悲しいニュースばかりでしたが、スポーツは楽しかったです。アビメッシ エムバペ 森保カントク。
4 こんな国にしてしまった冬が来る 金澤ひろあき
日本も地球も平凡な日々が来ますように。
33 葉の陰に真紅に光る青木の実 青島巡紅
自然は黙って生きて行きます。
○岡畠真理子特選
23 老人と子犬いつまでも冬銀河 野谷真治
「冬銀河」とは雪の積もった散歩道のことでしょうか?光景が目に浮かぶ絵画のような句だと感じました。
6 じじとばば競馬の予想日向ぼこ 金澤ひろあき
夫婦共通の趣味があるのはいいことですね。
41 FiFAサポーターのつもりが寝てしまい 蔭山辰子
夜型人間向きの放映時間でしたから仕方ないかと。でも普段はあまりサッカーは観ない私でも楽しめたワールドカップでした。
48 冬越しの鳥へささげる柿づくし 三村須美子
そういえば「柿の実は全部採らずに鳥たちに残しておく」という話を聞いたことがあります。
○遠藤修司特選
48 冬越しの鳥へささげる柿づくし 三村須美子
鳥のことを思い、取りつくさない心づかい、共生の心が、すてき。日本人のやさしさです。
そんなことを考えさせてくれた良い句だと思います。
○三村須美子特選
4 こんな国にしてしまった冬が来る 金澤ひろあき
この一年、コロナ感染、ウクライナ戦争、宗教と政治家の関わり、五輪疑惑、円安、日本経済の低迷等マイナス面の方が多かったように思います。今、冬の只中です。
「冬来たりなば春遠からじ」いつかは春がやって来る。希望持って日々を送りたいものです。世の中のマイナス面と冬が来るがよく噛み合っていると思いました。
○白松いちろう特選
55 老骨の湯舟に遊ぶ柚二つ 中野硯池
長年、命の洗濯をしてきた湯舟に今年も柚を二つ浮かべ平和なひと時を迎えています。普通がイチバンですね。
【お知らせ】
新年おめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
一月句会
日時 1月15日(日)午後2時より
場所 阪急長岡天神駅東口出てすぐ 喫茶 アーバンにて
※通信句会で参加の方は、作品に84円切手三枚同封下さい。