京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

2023年9月 京都童心の会 通信句会結果 前半

2023-10-03 08:02:50 | 俳句
2023年9月 京都童心の会 通信句会結果
【選評】 前半
○中野硯池特選
57 介護犬冷房室で過ごす日々 三村須美子
 介護を要する人に付き添うて日々過ごす介護犬は、おおむね大型犬です。介護者と生活を共にする介護犬の様子がよく伺えます。
○金澤ひろあき
特選 天 21 ちんからかん処理水放出 野谷真治
 人類は自分でコントロールできないものを、多く作ってしまったのではないかと切実に思います。
 福島原発事故直後、放射性物質を含んだ水は永久的に冷凍するから大丈夫だと断言され、記録にも残っています。それが一転して海に放出。かっての約束は何だったのでしょうか。
 処理しているので科学的には安全だと言えるそうですが、人間を含めた地球全体の生態系、長期的にみて大丈夫なのかという不安は残ります。プランクトンを魚が食べ、魚を他の生き物や人間が食べるという食物連鎖は続くのでから。そして現に漁業関係者は納得していないのです。
 この句の鐘の音が、不吉な未来を告げるものでないことを祈ります。
地 5 しりとりの糸結べずに黙り込む 青島巡紅
 言葉のキャッチボールでしょうか。心の交流でしょうか。それが噛み合わない時の感じを「しりとりの糸」で表現しているように感じます。表現に惹かれました。
人 48 耐えてまで百日咲くか萌える紅水分取りや無理しやな 遠藤修司
 今年の暑さ、世界中が大変でした。この歌の中に「百日紅」を詠み込んでいますね。さらに、「水分取りや」「無理しやな」と声かけする心づかいが見えます。
他、印象に残る句です。
28 入道雲来年見たし手を振りて 野原加代子
 生きようという意志と希望が見えます。私の場合は、送り火であったり、あるお寺巡りであったりですが。「来年も必ず」という感じです。
53 ビフテキよりすき焼きよりかき氷 蔭山辰子
 これも今年の暑さを伝える句です。格好をつけない本音が出ています。格好つけない本音は印象に残ります。
63 いちじくや暑さ超えた褒美とす 三村須美子
 いちじくをこんな形のご褒美とするというユニークな発想。ちょっとしたことで、生活や心が潤うことがありますね。
71 コスモスに園児のバスの着きにけり 中野硯池
 童話のような何ともかわいらしい光景が思い浮かびます。また、言葉で描かれないもの、例えば、迎えに来ている親の表情なども思い浮かぶのです。言葉が描かなかった世界が思い浮かんで来るのが、短詩の世界の良さですね。
○野原加代子特選
52 小さな秋待ちにまてども気配なし  蔭山辰子
 10月も近いのにまだこの暑さが続いています。小さな秋でいいので秋が来ないかなーと待ちに待っている今日この頃です。四季折々に思いふける事ができる句だと思いました。
○蔭山辰子特選
35 吾輩のなわばり巡る残暑かな   金澤ひろあき
 本当に酷暑の夏です。以前住んでいた時、九月十日の神社のお祭りに長袖をはおってお参りしたことを思い出しました。地球全体が温暖化でしょうか。春、秋のなわばりもがんばってください。
○白松いちろう特選
39 二人暮らしの長いあくびだ   金澤ひろあき
 老夫婦がそろって元気であることが一番幸せです。二人が信頼し合っている故に長いあくびができるのでしょう。
49 35度上か下かで命がけ    蔭山辰子
 今年の暑さには閉口しました。熱中症による死がこれ程近くに迫ってくるとは思いませんでした。秋冷が待ち遠い今日今頃です。
○野谷真治特選
39 二人暮らしの長いあくびだ   金澤ひろあき
「長いあくび」が印象に残ります。二人の日々の暮らしがわかるようです。
※写真は神泉苑の名月祭の様子です。