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そのひとを初めて見かけたのは…大学に通い始めてから三回目の春を迎えた頃だった…。
昼日中のバス停でぼんやりとひとり…所在無くバスを待っていた時…坂の上から不意に姿を現した。
坂の上から来るということは…同じ団地の住人に違いない。
団地に住んで一年になるけれど、それまで一度も見かけたことはなかった…。
少し年下か…と思われるその人は、少し距離をおいて立ち止まり、バスを待っていた…。
その年頃の女性には珍しく、化粧らしい化粧は何ひとつしていなかった。
それがかえって新鮮で…幼さの残る古風な横顔を…とても魅力的だと思った…。
何よりも目を惹いたのは…後ろで束ねられた長い髪…。
膝下までは届こうかという…長い長い黒髪だった…。
すごいなぁ…一度も切ったこと…ないんだろうかな…?
その髪の謂れに興味はあれども…いつまでも…じろじろ見ているのは失礼なので…バスが来たのを幸いに…それきり見ずにおいた…。
何日か経って、母親らしき女性と一緒に居るそのひとを、またバス停で見かけた…。
先の方まで真っ直ぐな長い髪…。
さぞかし…手入れが大変だろうなぁ…。
バレッタを外せば…全身が隠れてしまいそうな髪…。
豊かな…髪…。
綺麗な髪ですね…。
…そのひとこと…が言えず…ただ…見つめていた…。
それから何度も…バス停で一緒になったのに…。
木枯らしが吹く頃…坂の上から降りてきたそのひとの髪は…小さな旋風と一緒に舞い上がっていた…。
落ち葉をふいてくるくると回転する風…。
煽られた髪が…舞うように閃く…。
風と…髪と…落ち葉と…。
大変ですね…。
…そのひとことが…言えず…そっと…眼を伏せた…。
綺麗ですね…その髪…。
ずっと…切らずにいるのですか…?
手入れ…大変でしょうね…。
おひとりでなさるんですか…?
そのひとを見かけるたびに…心の中で話しかけた…。
卒業後…バスの時間が違うためか…そのひとに会うことはなくなった…。
時々…坂の上から降りてくる髪の長いそのひとを思い出した…。
休日…昼中のバス停は静かだった…。
何気なく…振り返ると…坂の上から女性がひとり下ってくるところだった…。
見慣れた顔の…相変わらず…楚々とした美しいひと…。
あっ…と思った…。
ばっさりと切られた髪…。
それも…顎の下辺りの長さで…。
胸がきゅん…と音を立てた…。
何故か…悲しかった…。
綺麗な…髪ですね…。
…二度と伝えることのできないひとことを…心が呟いた…。
そのひとを見たのは…それが最後だった…。
ひょっとしたらすぐ後ろに…並んでいたのかもしれないけれど…。
言えなかったひとことも…できなかった善意も…みんな心のどこかに小さな陰を落とします。
消えてしまうこともあれば…ずっと残ることもあるんですね…。
電車の中で、目の前じゃなくて、ちょっと声を掛けにくい所に立っていたおばぁちゃんに席を譲ってあげられなかった朝など、一日中、すっきりしない日を過ごしてしまいます。
…美しい詩と観点が少しズレてしまってすみません。
現実的な理由か…ロマンチックな理由か…。
想像すると…また…何か書けそうだな…。
書けそうだけど…このひとの話はこれでおしまいにする…。
…清楚なひとだった…。
髪の毛は女性の命、財産っていうけど・・・
なんか心に変化あったんやろかね~
髪の長い方は大勢いらっしゃいますが…あの方の幼いままの自然な姿に惹かれたのです。
自然体…というのは簡単なようで難しい。
なかなかお目にかかれません…。
それはさっぱりしてよかったでしょうね。
男前上がりましたか…?
不思議ですね…。
男の髪は…切った方が気持ちいい。
女の髪は…切ない…。
そんなイメージがあるんですね。
これは長年の慣習の刷り込みによるものでしょうね。
見知らぬ人から手紙をもらうようで・・
気持ち悪いですよね
本当に 想像が膨らんで なんだか 引き込まれていくような お話で いいですね
私も昔 そんな 長い髪の方みた事あります
でも きれいなストレ-トではなく
インディアンの女性が束ねている髪をほどいた感じ風のちょっと ごわついた感じ??でした
悲しんでくれる人、いただろうか?
ゴメンよ~
こちらここそヨロシクです
やっぱり少しは気になりますよね
首に巻きつけていたのかと想像しますが・・・?
見た目も妖怪ですな…きっと…。
ゴーゴンとかいうやつ…。
言われてみれば…そうですね。
どうしてたのでしょう…。
う~ん…想像…したくないような…。
くせっ毛のmekomekoもきっと見とれただろうな。。。
にしても・・
思わずふきだしてしまいましたよ。
気になりますよ・・・ね
その長い髪、おトイレ入った時はどうしているの?
聞いてみたくありませんか?
ないですよね
本当に綺麗だった…。
がっくりしたよ…。
短くなってた時には…。
全然知らないひとなのにね…。
「髪」って「神」と同じ音だけあって
なんか「神秘」を感じさせるよね!
これも…実際にあったことではあるのですが…。
短篇として書いてみました。
季節感と移ろい、こういったセンチな美文は大好きなんです。