夢見心地の三宅の気持ちは分からなくもない…。
当時…まだ二十歳そこそこだった西沢が年上の麗香にてきと~に遊ばれた夜の記憶は、その後のどの火遊びよりも鮮烈…。
…て言うか…他のをあんまり覚えてないんだよね…ほとんど成り行きだから…。
どうも…迫られると断りづらくってさ…特にタイプだったりすると…。
勿論…やばい相手は回避しますよ…人間的に嫌な奴ともやらない…後々面倒なのはご免だし…。
まあ…ばばさまは別格だったけどな…。
渡された原稿を持って会社に帰ってきたまでは良かったが、その後溜息の吐きっ放しで周りからばばさまの毒気に当てられたと冷やかされた。
三宅としては先輩社員の代わりにたまたま原稿取りに行っただけだから、ばばさまが奇妙な勧誘をしたとは言っても、暇つぶしの冗談だったのだろうくらいに考えていた。
ところが…西沢と午後に会う約束をしていた今朝になって、突然、ばばさまから呼び出しがかかった。
ご丁寧にも今日が指定休だということまで調べてあったようで…。
約束の時間までに送らせるわ…というばばさまの申し出を断り切れず、再び悩ましい勧誘を受けたのだった。
三宅は玄関を抜けて居間に着くまで心ここに在らずの状態だったが…そこで待っていた人々の声にようやく我に返った。
遅くなって申し訳ありません…。 お待たせしました…。
型通りの挨拶をしたあと、いつもの生真面目な顔に戻って、その場の話の輪の中へ入っていった。
「ばばさまから誘いがかかったということは…きみも一人前の業使いに認められたってことさ…。
きみがそうしたければ…ばばさまの手助けをするのも悪くはない。
少なくともHISTORIANのようにきみを使い捨てにするようなことはしないだろう。 」
迷う三宅に西沢はそう言った。
三宅の周りには何代も前に枝分かれした親類の須藤の他に同族の業使いがいないから、特殊能力者の世界のことはまったく分からない。
須藤自身も呪文に関すること以外には詳しい教育を受けていないから教えようがないのだ。
「この世界のことは…相庭や木之内の実父が教えてくれたこと以外は僕もあまり知らないよ。
それも最近になってやっと覚えたんだ。
天爵ばばさまについては…そうだね…付き合っている間に…弟…妹のスミレちゃんに教えて貰ったかな…。
ばばさまと出逢ったのは…僕の初期の作品を買ってくれた時だったから…何にも分からないまま付き合い始めたというか…強引に引っ張り込まれたというか…。
最初から遊びのつもりだから…自然発生・自然消滅だったけどね。
まあ…悪く言えば…ばばさまに摘み食いされたってことなんだけど…さ。
僕は楽しかったよ…。 」
西沢や滝川のような能力者の家系とも、倉橋や三宅のような呪文使いの家系とも異なり、庭田は御託宣を受けることができるという神官や巫女的な力を持つ家系である。
非常に古い家柄で代々同じ魂を引き継いでいると言われ、その魂はおよそ一万年以上も前の初代ばばさまのものと言われている。
天爵ばばさまの位は男女どちらが継いでも良いが、必ず、初代ばばさまの記憶を持つ子どもに限るとされている。
庭田麗香は西沢と出逢う少し前にばばさまの位についたばかり。
先代が早世だったので若くして重責を担うことになったが、さすがに魂を引き継いでいると言われるだけあってどっしりと落ち着いた風格のある女性だった。
スミレちゃんこと智明はその頃からずっと姉の麗香のために働いている。
心優しいこの男…女は…まだ若い姉だけに苦労を負わせるなんてことはできなかったのだ。
「ふたりとも厳しい人ではあるけれど…理由もなく簡単に仲間を見捨てるような人たちではない。
けれど…彼等の目的や考え方ときみ自身の目指すところが一致しなければ…感情だけで付き合っていけるような相手でもないんだ。
そこのところをよく考えて答えを出さないと…後悔することになるよ。 」
麗香への思いだけで決心しそうな三宅に西沢は少しだけ釘を差しておいた。
恋は盲目というから…釘なんぞ何の役に立たないかも知れないけれど…。
西沢が三宅に話をしている間に智哉は三宅をじっくりと観察した。
完全体のサンプルは三宅しかいないから対比するものがないのだけれど、取り敢えず今の段階では西沢たちと三宅の差異を捉えられるかどうかを調べてみた。
気配の個体差はそれぞれにあるものだから気配だけでは判別できない。
ふと…智哉はついこの間まで三宅やノエルたちに襲いかかっていた不完全体のことを思い浮かべた。
彼等は潜在記憶によって操られる状態にあった。
不完全体でさえはっきりした記憶を持っているのなら…完全体にも隠された記憶があるのでは…と考えた。
三宅がワクチン・プログラムの完全体なら…おそらくオリジナルを追跡し倒せというような記憶を持っているのではないか…と。
智哉は西沢に三宅の額に触れていいかと訊ねた。
西沢が三宅の方を窺うと三宅はいいですよ…と頷いた。
智哉のごつい手が三宅の額にそっと触れた。
何かを探るように智哉の眼が忙しなく動いた。
「玲人さん…あなたとはそんなに面識がないから先入観が入りにくい。
ここへ来てください。 」
智哉に言われて玲人は急いで三宅の近くへ来て腰を下ろした。
玲人の額にも智哉の手が当てられた。
智哉は三宅と玲人の額に同時に触れながら眉間にしわ寄せてしばらくじっと考えていた。
「不完全体の…特に発症しないスイッチの壊れた者の記憶は実に出鱈目で…命令としてはまったく意味を成さない…。
或いは…本人が潜在記憶自体をキャッチできない…勿論…我々にもね。
キャッチできて…これを夢で繰り返し見たとしても…洗脳されて暴れたり人を襲ったりすることはまず考えられない…。
完全体の記憶は理論的で筋が通っている。
この夢を繰り返し見ることによって洗脳されることは十分有り得る。
不完全体でもスイッチが壊れていない場合には、ある程度正確な夢を見ている可能性があるから刷り込みが起きる畏れは否めない。 」
ふたりから手を放すと智哉は西沢に向かってそう話した。
なるほど…潜在記憶がどういう状態になっているか、その在り方を探ればいいんですね…?
「大まかにはそうだよ。 多少…私自身の把握の仕方とは異なるがね。
他の人にも探りやすい方法となるとそれが一番だね。
ただ…潜在記憶を確認するには今現在の記憶よりも深いところを探らなければいけないから…少しコツが要る。
同じ能力者でも得手不得手があるから普通の記憶が読めても潜在記憶は読めなかったりする場合もある。
前以て確認能力の有無を調べておいた方がいいね…。 」
夢を見始めた頃ならわりと確認しやすいだろう…と智哉は付け加えた。
ああ…潜在記憶が表面化し始めているからですね…? 遅れると症状が出てしまうけれど…その前に手が打てるかも知れないな。
西沢はそう言って頷いた。
「でも…僕はすでに呪文を解いてしまったんですから…この先は誰も発症しないのでは…? 」
三宅が不思議そうに訊いた。
「何がきっかけで発症するかは分からない。 きっかけは呪文だけ…とは限らないんだ。
用心にこしたことはないってことさ…。 」
滝川が答えた。
「具体的には…夢の中でどんな命令が繰り返されているんですか…? 」
智哉に向かって玲人が訊ねた。
「きみの場合はスイッチが壊れているのでよくは分からない支離滅裂なものだ。
だから…三宅くんの…つまりワクチンの完全体だけを例にあげると…殲滅せよ…造反者たちを殲滅せよ…国家の安寧のために…みたいなことを言っている。 」
おや…っと西沢は思った。
添田の話にそっくりだ…。
「邪魔者たちを殲滅せよ…我等の主の新しき国家を建設せよ…。
添田が聞いたという文言はこうです。
邪魔者…造反者…安寧…建設…そんな単語でどちら側かを区別できますね…。
これまででも発症者は二通り居たってことだな…。 」
三宅以外のワクチンを見ていないから…あんまり拘ってなかったけど…。
そう考えると…ノエルもワクチンなんだ…多分な…。
亮が未だ襲われてないのは…スイッチ切れで判別不能だからか…。
西沢はぶつぶつとそんなことを呟いた。
「西沢さん…実はこの前…天爵ばばさまがオリジナルの完全体かも知れないという話を聞きました。
本人には確認できないらしいのですが…HISTORIANが眼をつけているとか言ってました…。
でも…なぜか…ばばさまは僕を攻撃するようなことはしなかったけれど…。 」
三宅が思い出したように言った。
「さっきの話じゃ…ばばさまは自分と跡取りのふたつの魂を持っているようだ。
初代ばばさまの魂が今のばばさまの潜在記憶を遮断しているか…或いは消したのだろう。 」
智哉がそう答えると…西沢はそうでしょうね…と同意した。
「ま…とにかく…恭介…玲人…三宅くんの潜在記憶だけでも読み取れるようにしとこうぜ…。
僕等三人が何とか判別できたら…仲間うちに方法を伝えよう。
三宅くん…お疲れのとこ…悪いけどしばらく実験台になってくれ…。 」
西沢がそう頼むと三宅は快く承知した。
お義父さん…申し訳ないですけどご指導お願いします…。
西沢のひと言で智哉を中心に潜在記憶を判別する修練が始まった。
すごい…とノエルは眼を見張った。
亮のところの大型クッションの倍はあろうかと思われるサンドビーズのデカクッション…恐る恐る乗ってみる。
う~ん…この感じが最高…気持ち悪~い…けど気持ちい~。
「どうしたの…これ? 」
ノエルが嬉しそうに訊いた。
元カノたちからの結婚祝いです…と西沢は笑った。
え~針入ってんじゃない? カミソリとか~?
大丈夫…あの人たちはそんなに無粋じゃないよ…。
懐かしげな眼をして西沢が言った。
楽しそうに遊ぶノエルの様子を見ながら西沢は遠い過去に思いを馳せた。
また…関わることになろうとは思わなかったよ…ばばさま…。
もう…会うこともないだろう…と…覚悟して別れたはずだったのにね…。
次回へ
当時…まだ二十歳そこそこだった西沢が年上の麗香にてきと~に遊ばれた夜の記憶は、その後のどの火遊びよりも鮮烈…。
…て言うか…他のをあんまり覚えてないんだよね…ほとんど成り行きだから…。
どうも…迫られると断りづらくってさ…特にタイプだったりすると…。
勿論…やばい相手は回避しますよ…人間的に嫌な奴ともやらない…後々面倒なのはご免だし…。
まあ…ばばさまは別格だったけどな…。
渡された原稿を持って会社に帰ってきたまでは良かったが、その後溜息の吐きっ放しで周りからばばさまの毒気に当てられたと冷やかされた。
三宅としては先輩社員の代わりにたまたま原稿取りに行っただけだから、ばばさまが奇妙な勧誘をしたとは言っても、暇つぶしの冗談だったのだろうくらいに考えていた。
ところが…西沢と午後に会う約束をしていた今朝になって、突然、ばばさまから呼び出しがかかった。
ご丁寧にも今日が指定休だということまで調べてあったようで…。
約束の時間までに送らせるわ…というばばさまの申し出を断り切れず、再び悩ましい勧誘を受けたのだった。
三宅は玄関を抜けて居間に着くまで心ここに在らずの状態だったが…そこで待っていた人々の声にようやく我に返った。
遅くなって申し訳ありません…。 お待たせしました…。
型通りの挨拶をしたあと、いつもの生真面目な顔に戻って、その場の話の輪の中へ入っていった。
「ばばさまから誘いがかかったということは…きみも一人前の業使いに認められたってことさ…。
きみがそうしたければ…ばばさまの手助けをするのも悪くはない。
少なくともHISTORIANのようにきみを使い捨てにするようなことはしないだろう。 」
迷う三宅に西沢はそう言った。
三宅の周りには何代も前に枝分かれした親類の須藤の他に同族の業使いがいないから、特殊能力者の世界のことはまったく分からない。
須藤自身も呪文に関すること以外には詳しい教育を受けていないから教えようがないのだ。
「この世界のことは…相庭や木之内の実父が教えてくれたこと以外は僕もあまり知らないよ。
それも最近になってやっと覚えたんだ。
天爵ばばさまについては…そうだね…付き合っている間に…弟…妹のスミレちゃんに教えて貰ったかな…。
ばばさまと出逢ったのは…僕の初期の作品を買ってくれた時だったから…何にも分からないまま付き合い始めたというか…強引に引っ張り込まれたというか…。
最初から遊びのつもりだから…自然発生・自然消滅だったけどね。
まあ…悪く言えば…ばばさまに摘み食いされたってことなんだけど…さ。
僕は楽しかったよ…。 」
西沢や滝川のような能力者の家系とも、倉橋や三宅のような呪文使いの家系とも異なり、庭田は御託宣を受けることができるという神官や巫女的な力を持つ家系である。
非常に古い家柄で代々同じ魂を引き継いでいると言われ、その魂はおよそ一万年以上も前の初代ばばさまのものと言われている。
天爵ばばさまの位は男女どちらが継いでも良いが、必ず、初代ばばさまの記憶を持つ子どもに限るとされている。
庭田麗香は西沢と出逢う少し前にばばさまの位についたばかり。
先代が早世だったので若くして重責を担うことになったが、さすがに魂を引き継いでいると言われるだけあってどっしりと落ち着いた風格のある女性だった。
スミレちゃんこと智明はその頃からずっと姉の麗香のために働いている。
心優しいこの男…女は…まだ若い姉だけに苦労を負わせるなんてことはできなかったのだ。
「ふたりとも厳しい人ではあるけれど…理由もなく簡単に仲間を見捨てるような人たちではない。
けれど…彼等の目的や考え方ときみ自身の目指すところが一致しなければ…感情だけで付き合っていけるような相手でもないんだ。
そこのところをよく考えて答えを出さないと…後悔することになるよ。 」
麗香への思いだけで決心しそうな三宅に西沢は少しだけ釘を差しておいた。
恋は盲目というから…釘なんぞ何の役に立たないかも知れないけれど…。
西沢が三宅に話をしている間に智哉は三宅をじっくりと観察した。
完全体のサンプルは三宅しかいないから対比するものがないのだけれど、取り敢えず今の段階では西沢たちと三宅の差異を捉えられるかどうかを調べてみた。
気配の個体差はそれぞれにあるものだから気配だけでは判別できない。
ふと…智哉はついこの間まで三宅やノエルたちに襲いかかっていた不完全体のことを思い浮かべた。
彼等は潜在記憶によって操られる状態にあった。
不完全体でさえはっきりした記憶を持っているのなら…完全体にも隠された記憶があるのでは…と考えた。
三宅がワクチン・プログラムの完全体なら…おそらくオリジナルを追跡し倒せというような記憶を持っているのではないか…と。
智哉は西沢に三宅の額に触れていいかと訊ねた。
西沢が三宅の方を窺うと三宅はいいですよ…と頷いた。
智哉のごつい手が三宅の額にそっと触れた。
何かを探るように智哉の眼が忙しなく動いた。
「玲人さん…あなたとはそんなに面識がないから先入観が入りにくい。
ここへ来てください。 」
智哉に言われて玲人は急いで三宅の近くへ来て腰を下ろした。
玲人の額にも智哉の手が当てられた。
智哉は三宅と玲人の額に同時に触れながら眉間にしわ寄せてしばらくじっと考えていた。
「不完全体の…特に発症しないスイッチの壊れた者の記憶は実に出鱈目で…命令としてはまったく意味を成さない…。
或いは…本人が潜在記憶自体をキャッチできない…勿論…我々にもね。
キャッチできて…これを夢で繰り返し見たとしても…洗脳されて暴れたり人を襲ったりすることはまず考えられない…。
完全体の記憶は理論的で筋が通っている。
この夢を繰り返し見ることによって洗脳されることは十分有り得る。
不完全体でもスイッチが壊れていない場合には、ある程度正確な夢を見ている可能性があるから刷り込みが起きる畏れは否めない。 」
ふたりから手を放すと智哉は西沢に向かってそう話した。
なるほど…潜在記憶がどういう状態になっているか、その在り方を探ればいいんですね…?
「大まかにはそうだよ。 多少…私自身の把握の仕方とは異なるがね。
他の人にも探りやすい方法となるとそれが一番だね。
ただ…潜在記憶を確認するには今現在の記憶よりも深いところを探らなければいけないから…少しコツが要る。
同じ能力者でも得手不得手があるから普通の記憶が読めても潜在記憶は読めなかったりする場合もある。
前以て確認能力の有無を調べておいた方がいいね…。 」
夢を見始めた頃ならわりと確認しやすいだろう…と智哉は付け加えた。
ああ…潜在記憶が表面化し始めているからですね…? 遅れると症状が出てしまうけれど…その前に手が打てるかも知れないな。
西沢はそう言って頷いた。
「でも…僕はすでに呪文を解いてしまったんですから…この先は誰も発症しないのでは…? 」
三宅が不思議そうに訊いた。
「何がきっかけで発症するかは分からない。 きっかけは呪文だけ…とは限らないんだ。
用心にこしたことはないってことさ…。 」
滝川が答えた。
「具体的には…夢の中でどんな命令が繰り返されているんですか…? 」
智哉に向かって玲人が訊ねた。
「きみの場合はスイッチが壊れているのでよくは分からない支離滅裂なものだ。
だから…三宅くんの…つまりワクチンの完全体だけを例にあげると…殲滅せよ…造反者たちを殲滅せよ…国家の安寧のために…みたいなことを言っている。 」
おや…っと西沢は思った。
添田の話にそっくりだ…。
「邪魔者たちを殲滅せよ…我等の主の新しき国家を建設せよ…。
添田が聞いたという文言はこうです。
邪魔者…造反者…安寧…建設…そんな単語でどちら側かを区別できますね…。
これまででも発症者は二通り居たってことだな…。 」
三宅以外のワクチンを見ていないから…あんまり拘ってなかったけど…。
そう考えると…ノエルもワクチンなんだ…多分な…。
亮が未だ襲われてないのは…スイッチ切れで判別不能だからか…。
西沢はぶつぶつとそんなことを呟いた。
「西沢さん…実はこの前…天爵ばばさまがオリジナルの完全体かも知れないという話を聞きました。
本人には確認できないらしいのですが…HISTORIANが眼をつけているとか言ってました…。
でも…なぜか…ばばさまは僕を攻撃するようなことはしなかったけれど…。 」
三宅が思い出したように言った。
「さっきの話じゃ…ばばさまは自分と跡取りのふたつの魂を持っているようだ。
初代ばばさまの魂が今のばばさまの潜在記憶を遮断しているか…或いは消したのだろう。 」
智哉がそう答えると…西沢はそうでしょうね…と同意した。
「ま…とにかく…恭介…玲人…三宅くんの潜在記憶だけでも読み取れるようにしとこうぜ…。
僕等三人が何とか判別できたら…仲間うちに方法を伝えよう。
三宅くん…お疲れのとこ…悪いけどしばらく実験台になってくれ…。 」
西沢がそう頼むと三宅は快く承知した。
お義父さん…申し訳ないですけどご指導お願いします…。
西沢のひと言で智哉を中心に潜在記憶を判別する修練が始まった。
すごい…とノエルは眼を見張った。
亮のところの大型クッションの倍はあろうかと思われるサンドビーズのデカクッション…恐る恐る乗ってみる。
う~ん…この感じが最高…気持ち悪~い…けど気持ちい~。
「どうしたの…これ? 」
ノエルが嬉しそうに訊いた。
元カノたちからの結婚祝いです…と西沢は笑った。
え~針入ってんじゃない? カミソリとか~?
大丈夫…あの人たちはそんなに無粋じゃないよ…。
懐かしげな眼をして西沢が言った。
楽しそうに遊ぶノエルの様子を見ながら西沢は遠い過去に思いを馳せた。
また…関わることになろうとは思わなかったよ…ばばさま…。
もう…会うこともないだろう…と…覚悟して別れたはずだったのにね…。
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