日経新聞に「東電よさらば 会津の造り酒屋が挑む電力自立 会津電力社長に聞く」(編集委員 滝順一 2014/7/7 7:00 記事保存)という記事があります。無責任な政府や東電に対して、地方の造り酒屋の社長が立ち上がっています。一人一人が立ち上がり、意思表示をすることによって、企業や官僚の責任を問わなければならませんね。
記事を転載します。
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原子力に頼らない、再生可能エネルギーによる地域の自立を目指して昨年発足した会津電力(福島県喜多方市)。5月末に喜多方市内で、最初のメガソーラー発電所を起工した。社長の佐藤弥右衛門氏は、同市で220年以上続く造り酒屋の9代目社長でもある。機会があれば「東京電力から猪苗代湖などの水利権を買い取って、会津をエネルギー面で自立させたい」と話す。
■「小水力発電所を20カ所ほど設けたい」
――発足1年でメガソーラーの起工に至った。これからの事業の展望は。
「起工した雄国(おぐに)発電所は喜多方市東部の山の斜面、約2万7千平方メートルに3740枚の太陽光パネルを設置する。発電容量は1メガ(1千キロ)ワットだ。経済産業省の市民交流型再生可能エネルギー導入推進事業の補助を得て、子どもたちが再生可能エネルギーについて学べる体験学習施設を併設する。今年10月には完成させたい」
「このあと、会津地域で小水力発電所を20カ所ほど設けたい。適地は調査中だが、分散型のシステムとして通常は固定価格買い取り制度に基づき売電しつつ、停電時などはコミュニティーの電気を送る非常電源に使えるものを目指す」
「その次はバイオマスだ。会津は森林が豊かだ。戦後の植林の後、間伐などが進まず、森は問題を抱えている。再生可能エネルギーによる地域振興を目指す一般社団法人会津自然エネルギー機構(五十嵐乃里枝理事長)が森林資源を活用したバイオマス発電の実現を考えており、連携していきたい。バイオマスは雇用を生み地域振興に直結する」
「東邦銀行(福島市)など地域の金融機関も出資してくれた。さらに会津ソーラー市民ファンドを設けて、一般の人たちから資金を集めている。会津から日本のエネルギーの仕組みを変えたいと考える人たちから多く出資してもらっている」
――東日本大震災と福島第1原子力発電所事故が転機だったのか。
佐藤弥右衛門・会津電力社長
「震災が起きて、被災地では水があれば助かるだろうと、水を浜通りや中通りの取引先に運んだ。7代目(祖父)も関東大震災のときに水を一升瓶に入れて送った。酒屋には長年くみ上げてきた井戸水がある。7代目は孫の私に『心して生きろ』と言っていた。生きている間には戦争や天変地異、大恐慌があるぞと。先代はすべて経験していた」
「飯舘村とは村おこしの酒をつくるのに協力してきた縁があった。菅野典雄村長から依頼され『までい大使』にも任命されていた。までいとは『真心をこめて』といった意味だ。(被災地に)水を届けて帰ってくるとき、西へ向かう道路は避難する人々の車で大渋滞で、赤いテールランプがどこまでも長くつながって見えたのを覚えている。後から知ったのだが、あのころ原発から出た放射性物質が飯舘村の方に流れて雪で地面に落ちていた。ひどい話だ
「そのときは、会津もこれからたいへんだと思った。土壌が傷めば農業はできないからだ。幸いにも会津の放射性物質による汚染は極めて限定的だった」
「その後、飯舘村の『までいの会』や福島再生を話し合う『ふくしま会議』などで、民俗学者の赤坂憲雄さん(福島県立博物館館長)やクアルコムジャパンの山田純特別顧問らと話し合ううちに、会津はエネルギーの自立ができると改めて気がついた」
「会津には猪苗代湖があり阿賀野川、只見川がある。本来は会津の電気を賄って十分のはずだが、いつの間にか東京の電力会社に水利権をおさえられ、電気は東京にもっていかれる。東電はお金をばらまいて原発をつくったうえ、事故を起こしてもだれも責任をとらない。建設を認めた政府もほっかむりだ。原発がなくても自分たちで電気を生み出す資源も資力も会津にはある」
■水力だけでも会津地域の電気を賄えるはずだ
――東京電力の水力発電所を買い取る考えもあるとか。
「猪苗代湖や阿賀野川の水系で、東電はいくつもの水力発電所を保有する。政府出資で存続する東京電力が今後、水利権などを売ると言い出す事態がありうると思っている。そのときに私たちが買いとれる企業規模と態勢をつくっておきたい」
「水力だけでも会津地域の電気を賄うことができるはずだ。エネルギーの自立を果たし安価な電力を地域に提供できれば、データセンターや電気自動車などの産業を持ってこれる。喜多方には昭和電工から続く素材産業の基盤があり、金属加工の本田金属(埼玉県川越市)が研究開発拠点を川越から喜多方へ移してくる予定だ。電気自動車を地域内で普及させ交通インフラを変えて、化石燃料を使わない地域にもできる。エネルギーで地域の再生ができると信じている」
■取材を終えて
佐藤さんが社長を務める大和川酒造店は、寛政2年(1790年)創業という。どの地域でも故郷を誇りに思う気持ちはあるが、会津ではとりわけ強いように思える。佐藤さんのように200年続く造り酒屋の当主とあれば、なおさらだ。原発事故で自然環境を汚されたことに加え、郷土の水資源の恩恵が東京に持ち出され消費されてきた歴史を振り返り、東電や政府に対する強い異議申し立ての意思が会津電力を立ち上げた底流にある。
福島県の資料によれば、猪苗代湖や阿賀野川水系などにある東電の水力発電の容量は約35万キロワット、Jパワーや東北電力を合わせれば300万キロワットを超える。会津は「水力発電王国」と呼んでもおかしくない潜在力を備えている。
地域自立のエネルギーづくりを目指す動きは全国各地にあり、5月には地域間の連絡を強め活動を広げる目的で「全国ご当地エネルギー協会」が発足した。佐藤さんは協会の代表幹事も務めている。
記事を転載します。
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原子力に頼らない、再生可能エネルギーによる地域の自立を目指して昨年発足した会津電力(福島県喜多方市)。5月末に喜多方市内で、最初のメガソーラー発電所を起工した。社長の佐藤弥右衛門氏は、同市で220年以上続く造り酒屋の9代目社長でもある。機会があれば「東京電力から猪苗代湖などの水利権を買い取って、会津をエネルギー面で自立させたい」と話す。
■「小水力発電所を20カ所ほど設けたい」
――発足1年でメガソーラーの起工に至った。これからの事業の展望は。
「起工した雄国(おぐに)発電所は喜多方市東部の山の斜面、約2万7千平方メートルに3740枚の太陽光パネルを設置する。発電容量は1メガ(1千キロ)ワットだ。経済産業省の市民交流型再生可能エネルギー導入推進事業の補助を得て、子どもたちが再生可能エネルギーについて学べる体験学習施設を併設する。今年10月には完成させたい」
「このあと、会津地域で小水力発電所を20カ所ほど設けたい。適地は調査中だが、分散型のシステムとして通常は固定価格買い取り制度に基づき売電しつつ、停電時などはコミュニティーの電気を送る非常電源に使えるものを目指す」
「その次はバイオマスだ。会津は森林が豊かだ。戦後の植林の後、間伐などが進まず、森は問題を抱えている。再生可能エネルギーによる地域振興を目指す一般社団法人会津自然エネルギー機構(五十嵐乃里枝理事長)が森林資源を活用したバイオマス発電の実現を考えており、連携していきたい。バイオマスは雇用を生み地域振興に直結する」
「東邦銀行(福島市)など地域の金融機関も出資してくれた。さらに会津ソーラー市民ファンドを設けて、一般の人たちから資金を集めている。会津から日本のエネルギーの仕組みを変えたいと考える人たちから多く出資してもらっている」
――東日本大震災と福島第1原子力発電所事故が転機だったのか。
佐藤弥右衛門・会津電力社長
「震災が起きて、被災地では水があれば助かるだろうと、水を浜通りや中通りの取引先に運んだ。7代目(祖父)も関東大震災のときに水を一升瓶に入れて送った。酒屋には長年くみ上げてきた井戸水がある。7代目は孫の私に『心して生きろ』と言っていた。生きている間には戦争や天変地異、大恐慌があるぞと。先代はすべて経験していた」
「飯舘村とは村おこしの酒をつくるのに協力してきた縁があった。菅野典雄村長から依頼され『までい大使』にも任命されていた。までいとは『真心をこめて』といった意味だ。(被災地に)水を届けて帰ってくるとき、西へ向かう道路は避難する人々の車で大渋滞で、赤いテールランプがどこまでも長くつながって見えたのを覚えている。後から知ったのだが、あのころ原発から出た放射性物質が飯舘村の方に流れて雪で地面に落ちていた。ひどい話だ
「そのときは、会津もこれからたいへんだと思った。土壌が傷めば農業はできないからだ。幸いにも会津の放射性物質による汚染は極めて限定的だった」
「その後、飯舘村の『までいの会』や福島再生を話し合う『ふくしま会議』などで、民俗学者の赤坂憲雄さん(福島県立博物館館長)やクアルコムジャパンの山田純特別顧問らと話し合ううちに、会津はエネルギーの自立ができると改めて気がついた」
「会津には猪苗代湖があり阿賀野川、只見川がある。本来は会津の電気を賄って十分のはずだが、いつの間にか東京の電力会社に水利権をおさえられ、電気は東京にもっていかれる。東電はお金をばらまいて原発をつくったうえ、事故を起こしてもだれも責任をとらない。建設を認めた政府もほっかむりだ。原発がなくても自分たちで電気を生み出す資源も資力も会津にはある」
■水力だけでも会津地域の電気を賄えるはずだ
――東京電力の水力発電所を買い取る考えもあるとか。
「猪苗代湖や阿賀野川の水系で、東電はいくつもの水力発電所を保有する。政府出資で存続する東京電力が今後、水利権などを売ると言い出す事態がありうると思っている。そのときに私たちが買いとれる企業規模と態勢をつくっておきたい」
「水力だけでも会津地域の電気を賄うことができるはずだ。エネルギーの自立を果たし安価な電力を地域に提供できれば、データセンターや電気自動車などの産業を持ってこれる。喜多方には昭和電工から続く素材産業の基盤があり、金属加工の本田金属(埼玉県川越市)が研究開発拠点を川越から喜多方へ移してくる予定だ。電気自動車を地域内で普及させ交通インフラを変えて、化石燃料を使わない地域にもできる。エネルギーで地域の再生ができると信じている」
■取材を終えて
佐藤さんが社長を務める大和川酒造店は、寛政2年(1790年)創業という。どの地域でも故郷を誇りに思う気持ちはあるが、会津ではとりわけ強いように思える。佐藤さんのように200年続く造り酒屋の当主とあれば、なおさらだ。原発事故で自然環境を汚されたことに加え、郷土の水資源の恩恵が東京に持ち出され消費されてきた歴史を振り返り、東電や政府に対する強い異議申し立ての意思が会津電力を立ち上げた底流にある。
福島県の資料によれば、猪苗代湖や阿賀野川水系などにある東電の水力発電の容量は約35万キロワット、Jパワーや東北電力を合わせれば300万キロワットを超える。会津は「水力発電王国」と呼んでもおかしくない潜在力を備えている。
地域自立のエネルギーづくりを目指す動きは全国各地にあり、5月には地域間の連絡を強め活動を広げる目的で「全国ご当地エネルギー協会」が発足した。佐藤さんは協会の代表幹事も務めている。
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