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けど、そんな意に反して、僕の口は掠れていても震えていても、止まらなかった。
「……じゃあ、あなたはあの日……あの蒼い月の夜、一体何をしにこの《世界》に来て、僕と出会ったんですか?」
「この、夢見る世界で目覚め、英雄となる人を求めて。ここまで来てくれた君は、きっとそれに足る資格を持っている」
僕が今まで見たどんなものよりも美しい微笑みを、ナイトウォーカーは浮かべていた。それがいっそう僕には絶望的だった。心のどこかで予感していたそれを聞いてしまって、僕は船の上でうずくまった。ただ力なく、言葉が口からこぼれるに任せていた。
「……そんな話なら、あのコスモス色の女の子のほうがふさわしかったのに。あの子はイルミナリスに反抗した一族の末裔だったんだ。だから世界の真実を知っていた。それを知らしめようとして、消されてしまった」
「そう、君はそんな子とも出会っていたのね。あの山から出てきてたなんて驚きだわ。彼らは《世界》一の危険分子、悪魔でさえ関わればただではすまないのに」
「……アスキリオさんのひいひいおじいさんだってそうだ。世界の果てはそのまま、《世界》の秘密だった。ならきっと、コスモス色の女の子と同じように」