徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

朝の月、世界と舞台の隙間にて 13、14

2020-05-04 11:00:08 | 小説










 本文詳細↓



 「……なら、アダムが僕と一緒にいてくれたのは、僕がその『英雄』だと思ったからか?」
 ぐっと握る手にさらに力がこもった。爪が食い込んでいるのが分かる。きっとくっきり痕が残っているだろう。
 「さて、それはおぬしが決めることだ」
 「ぐっ!」
 いきなり後頭部を蹴りつけられて、固い甲板とぶつかった額がジンジンと痛んだ。何をするんだと、抗議するためほぼ反射的に顔を上げて、僕は初めてアダムと同じ高さで顔を突き合わせた。
 「おぬしが英雄になるというのであれば、今も言った通り手助けしてやろう。だが逆を選んだからといって、べつにおぬしに失望したりはせぬ。我は存外、トルヴェール・アルシャラールという男を気に入っているのでな。それこそ、おぬしが我を釣り上げ、母上殿が作った握り飯を譲ってくれたときからな」
 そこで持ってくるエピソードがそれか。なんだかとてもアダムらしくて、少し肩の力が抜けた。
 「お前、それ自分が餌付けされただけだって言ってるようなもんだけど、いいのか?」
 「美味いは正義だからかまわぬ!」
 久しぶりに声に出して笑って、僕は体を起こした。












「僕は、英雄にはなりません」
















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