中野笑理子のブログ

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

それでも手と手は固く握られていた

2017年09月06日 | 日記

会社の帰り道、電車が駅に着いてホームに降りると、ホームの端のエレベーターの裏に、中学生とおぼしき二人の男女学生が、向き合う形で立っていた。
ホームから降りる階段はエレベーターの向こうなので、私は二人に向かって歩き出したのだけれど、ちょっと目を惹く光景だったので、視線を外さずゆっくり歩きながら見るともなしに見ていた。

二人とも黙ったままで、女の子は口を真一文字にキッと結んで自分よりも背の高い男の子を上目遣いに見つめていて、男の子は屈託ありげな暗い表情で俯いていた。
女の子の目は精一杯見開かれていて、真一文字に結んだ口元が少しでも緩んだら泣き出しそうな感じだった。
それでも男の子は女の子と目を合わせず俯いたままで、ちょっとただならぬ感じがした。

もし私が船宿の女将だったら、二人を宿に案内して、一番上等の部屋へあげて、静かに襖を閉めるのになぁ。
そんな事を思いつつ、心の中でゴンドラの唄を口ずさみながら通り過ぎると、二人とも微動だにせず、ずっと同じ姿勢のまま、ただ突っ立っているのだけれど、ふと視線を落とすと二人の手と手は固く強く、しっかりと握られていたのでした。
コメント