『DQXエンドレス・ラブ』①
前回
『エンドレス・ラブ』衝突⑮
<エンドレス⑯>
「デヴィッド?」
「本当なんだ…」
「バス停むかう途中なんだけど、話しがあるから寄ったの…入っていい?」
「兄と揉めたんですってね?聞いたわ」
「だけど、あなたは悪くない」
「僕を嫌ってるって、本当なの?」
「嫌ってなんかないわ。なぜ来たの?保護観察中でしょ。私のせいで問題起こさないで」
「どうしても会いたくて」
「僕は変わらない。今でも君を愛している」
「愛される資格がない。手紙も電話も連絡ひとつしなかった」
「どうせ君には届かなかったよ」
「とめられてた手紙、やっと私に届いた。全部読んだわ、私が苦しめていたのね」
「その話はいいよ。また次の機会に…」
「私たちにもう未来はないわ。遠く過ぎ去ってしまった時間なのよ」
「もう戻れない。あのころ私たちは若すぎて、暴走してしまった。まわりに迷惑を…やっぱり無理だったのよ」
「ジェイド」
「パパにお別れしたわ…こんなことになるなんて…もう行くわ」
「どこへ?」
「学校へ戻るの。バーリントンよバーモント州。バスで行けるわ…」
「行くな、頼む。次いつ会えるかわからない…」
「無理よ。行かなくちゃ…さようなら。私のことは忘れて。シカゴに戻って自分を大切にして…さよならと言って?」
「おねがい、言って?」
「ダメだ、行くな!」
「ジェイド!頼む、行かないでくれ!」
「だめよ!やめてデヴィッド!」
「僕は何があっても構わない。君を愛してる。君を行かせないぞ!」
「だめよ!」
「そうだと言って!」
「ねぇ、もう終わったのよ!」
「僕を見て、まだ終わってない。終わってないと言ってくれ!」
「だめよ…」
「君の愛を感じるんだ…」
「デヴィッド、デヴィッド?私をみて」
「あなたの言うとおりよ。愛してるわ!」
「またシカゴに住めるのね。前の家の近く?」
「どこでもいいよ」
「ふたりで戻れて嬉しいわ。なんだか夢みたい。一時は忘れようとしたのに…」
「実わ…」
「何?」
「何でもない」
「来て…」
デヴィッドアクセルロッドの部屋を、デヴィッドアクセルロッドです。
「デヴィッド?キースだ。今、ロビーにいるからちょっと降りてきてくれないか?…ジェイドも一緒に…」
「デヴィッド…」
「でも事故だったんだ」
「ジェイド、聞いてくれ…」
「近づくな!この野郎!」
「放してくれ!ジェイド!ジェイド!」
「よく思い出すのは、パパがフルートを吹いてた、あのパーティーの夜」
「デヴィッドも一緒で、私はまだ子供だった。その時から彼に夢中になって…なぜだか、片時も彼と離れたくなくて、バカみたい。おかしい?」
「いいえ」
「あの時、何かが変わったの。パパのお人形だった私がパパのお人形ではなくて、自分自身をみつけた」
「月日と共に人も変わるわ」
「でもつらいの、とても苦しいの」
「だいじょぶよ…」
「一度にいろんなことがあり過ぎたのね。でもいつか癒える日がくるわ」
「彼は私を愛してくれた。あんな人はいない」
「新しい愛が、きっとみつかるわ」
「あんなに愛してくれる人はいないと思うわ」
「言葉で癒すのは難しいけど…」
「私がアドバイスできるのはこれだけよ。いい?つかみとるの」
「何を?」
「何でもよ。どんなことでもね、それを探すのが人生よ」
デヴィッドは幻影の肖像をみつけ、それを手にして家に帰りました。
「ただいま、母さん」
「デヴィッド、どこ行ってたの?ママの引き出しにしまっておいたメモ。そのメモからニューヨークへ行ったでしょ?あなたは保護観察中なんだからね…」
「僕たちにもう未来はない。遠く過ぎ去ってしまった時間さ」
「もう戻れない。あのころ僕たちは若すぎて、暴走してしまった。まわりに迷惑を…やっぱり無理だった」
デヴィッドは自分の部屋に行きました。
それから幻影の肖像画を見つめて、デヴィッドは一日一日を過ごしました。
やがてアンが書いた小説が出され、デヴィッドはそれを読んであのころの時を思い出していました。
ある日、デヴィッドの家のベルが鳴りました。
「デヴィッド」
「ジェイド!」
ジェイドが訪ねて来たのです。
「ジェイド…」
以上をもちましてステージは終了いたしました。
完
『DQXエンドレス・ラブ』まとめ
『DQXエンドレス・ラブ』①
前回
『エンドレス・ラブ』幻影⑭
<衝突⑮>
「えーと実際は…デヴィッドが朝食を食べた後に…」
「事故をおこしすんだっちゃ」
「こら!静かに。ごめんねー続けて」
「で、・・・」
「アンが書いた小説?」
「う、うん…」
「今日ヒューが、交通事故に遭ったの」
「今日の午後、あのひと、死んだわ。即死ですって!一瞬の出来事だったわ」
「ん!」
「え!」
「デヴィッド!」
「!!」
「くそ!まて!」
バン!
「キャー!!!!!!!!!」
「ヒュー!しっかりして!ねー誰か助けて?なんとかして!!」
「誰か助けてお願い?誰かお願いよ!あなた助けて?」
「・・・・」
「きゃああ!!!!!」
「ううーんう、う、う、うー」
「うーん、う、う、うーあー」
「バーモント行き発射しまーす…」
「う、う、うー」
「サミーなの?」
「どなた?」
「こちら、友人のデヴィッドよ。デヴィッド?こちらはイングリッド、ヒューの友人よ」
「いったい、なにしに来た!」
「滞在中で、寄ってくれたの」
「腑に落ちないね。親父の事故、誰に聞いた?」
「キース、話しがある。親友だったろ?」
「そんなこと、今は関係ないだろ、あとにしてくれないか。だいたいおまえは親父を嫌ってたはずだ!」
「それは違う。君のお父さんは命の恩人だ」
「どうせ目当ては妹だろ?ジェイドは会いたくないそうだ」
「やめて、キース!」
「おまえを憎んでる!だからいいかげん付き纏うのはやめろ!おまえは捨てられたんだ!」
「デヴィッド?シカゴにはもどらないで、ホテルで待ってて。ジェイドには話しておく…」
「急に飛び出すなんて変よ」
「また、その話し!あの人の気性を知ってるでしょう?」
「カッとなったら、赤信号でも飛び出す愚か者よ!ごめん、ちょっと言い過ぎた。でも、これは事実なのよ」
「納得できないわ。わたしは、ほんとの原因を知りたいの」
「またその話?ウンザリよ」
「こめんなさい、あの人と話すとついイライラしちゃって」
「これをジェイドに渡して…」
「いたの?」
「いなかった。どこにもいない…」
「メモには日曜には戻ると書いてあったのよ。心配だわ、トラブルにでも巻き込まれたに違いないわ」
「そうだな…」
「すぐに来るよ。僕に話したことをそのままジェイドにも話すんだ」
「でも確信はないのよ。こんなのイヤ」
「待てよ。つじつまが合うんだ、あいつに決まってる」
「わたしだって真実は知りたいけど、騙すのはイヤなのよ!」
「イングリッド?」
「彼だわ、現場にいた」
「あそこで、あなたに触ったわ」
「ジェイド、偶然だと思うか?」
「いったい何の話なの?」
「奴が町にいて親父が死んだ」
「そうだけど」
「それが偶然だと思うか?」
「ジェイド、この人は事故現場にいたの」
「イングリッドが証人だ!親父はおまえをみつけて、逆上して飛び出した!」
「違うわ!」
「デヴィッド?」
「本当なんだ…」
次回
『エンドレス・ラブ』エンドレス⑯
『DQXエンドレス・ラブ』①
前回
『エンドレス・ラブ』接触⑬
幻影⑭
「ジェイド・・・・」
「デヴィッド、ちょっとまって」
「ジェイドはバーモント州のバーリントンにいるの。そこから学校に通ってるわ」
「これをジェイドに渡して」
「なんなの?」
「もう会えないかもしれないから」
「どういう意味?」
「必ず渡してください」
「これ、病院が留めてた」
「デヴィッド!…」
その後、デヴィッドはホテルに泊まり、翌日は街を歩きました。
オープンテラスで朝食を食べていると、鐘の音が響いていました。
デヴィッドは誘われるままに街を歩き、その周辺を見てまわりました。
1件1件、お店を覗いて見ると、そこには、ジェイドの面影と似ている人物がいました。
デヴィッドはその都度、ジェイドとの思い出を浮かべ、街を歩いていました。
やがて、あるショップに飾ってあった肖像に目が留まりました。
デヴィッドは肖像を見て、吸い込まれるようにショップの中へ入って行きました。
中に入ると、さらに引き付けられるような思いを感じました。
それはデヴィッドにとって幻影でした。
そして、ためらうことなく、恥じらうことなく、その目で見つめ返していました。
次回
『エンドレス・ラブ』衝突⑮
『DQXエンドレス・ラブ』①
前回
『エンドレス・ラブ』二年⑫
<接触⑬>
療養所から退院したデヴィッドは、しばらくしてニューヨークへ外出しました。
両親がしまっていた書類の中から住所をみつけ
その場所へと尋ね入ることにしたのです。
「ビーーーーーーー」
デヴィッドは探していた住所に訪れ、ドアにあるチャイムを鳴らして待ちました。
「デヴィッド!」
「私は驚かせるのが嫌いなのに、あなたはいつも突然ね」
「来客が多いのよ。夕べはサミーがこのソファーに寝たの、今朝、学校に戻ったわ」
「学校に通ってるんですね、あの頃は小さかったのに…」
「あの頃はね…」
「素敵な部屋ですね」
「私の新しい城」
「座っても?」
「要件は何?」
「迷惑だったら、帰ります」
「あいかわらずね、人の顔色を気にして許可がでるまで安心できない」
「なぜニューヨークにきたの?」
「あなたに…もう一度会いたくて…久しぶりだったから、2年ぶりに…」
「ヒューが、いつかあなたが私を探して訪ねてくるってその通りだったわ。彼の予言って時々怖いほど当たるんだから…」
「私たち一度は、やり直そうともしたんだけど、ダメだった」
「おなじことの繰り返しだったから、ケンカばかり…もう一本おごるわ」
「お気に召しませんだっちゃか?」
「おいしかったわ」
「今日はクリームシチューを召し上がるとスープが付くんだっちゃ」
「何の話しだったかしら?」
「離婚の話し…」
「あ、離婚ね、人生の門出。ヒューはニュージャージーで恋人と暮らしてるわ…あたしのアパートにもよく連れてくるの…きっと気が合いそうだからって」
「でも彼女にとってあたしはヒューを不幸にした張本人だから嫌われてるの…結婚式に行くべきかしら?」
「結婚するの?」
「さあ?ね。でも、イングリッドが結婚を切望している。子供たちも彼女を歓迎しているわ。特にキースとは、大の仲良し」
「名前はイングリッド?」
「イングリッド・オンチェスター・木星人なの。車が好きで占星術が好きで、なんでも星占いで決めてるわ、星とともに生きてる…」
「今でも宇宙飛行士になりたいの?」
「ええ、はい」
「彼女の言う通り。運命って存在するわ…」
「また小説を書いてるんですね、よかった。僕をモデルした小説ってここにあります?ぜひ読んでみたいんだけど」
「モデルは3人よ。あなたとジェイドと私が登場するの」
「二人が愛し合うのを私が見たときの話し…」
「見てたの?」
「物音がして、泥棒かと思った。階段を下りる途中で、暖炉の火に浮かびあがるふたりを見て…あまりに素敵で、身動きができなかった。ぜんぜん気づいてなかった?」
「ちっとも…」
「それで、あれ以来、考え方が変わったの…今まで私たちが信じていた愛や結婚にたいしても…」
「ごめんなさい」
「私なに言ってるのかしら、でも素敵な気分…こっちに座って私の隣に…ひとりじゃ寂しいから」
「あの夜、あなたたちが抱き合うのを見た後、ヒューと愛し合ったのよ…あなたを思いながら…」
「レストランで恋人同士に見られたわ…」
「そう?」
「ほんとに、あなたと愛し合いたいと思ってた」
「ここへ来てよかった。ずっと会いたいと思ってた」
「人には行きたい場所や触れたいものがあるわ」
「何もせずに、後悔したくないの…」
「怒ったほうがいい?」
「どうかわかってください、ジェイド以外とは愛し合えません」
「どうしようもないんです…帰ります」
「ホテルは?」
「まだ」
「これから探すのは大変よ」
「バス停の近くにホテルがあった」
「あらあら、この周辺は物騒なのよ。ここに泊まった方がいいわ、そのかわりソファーに寝てもらうけど」
「帰ります」
「明日には電話して、間違ってもここに来ちゃだめよ。毎週土曜日はヒューとイングリッドが来る日なの…」
やがてデヴィッドはアンの部屋から出て行きました。
ドアを閉め、アンを背中に感じたとき、裁判所で聞かされた日のことを思いだしました。
「第2級放火罪に問われています。これは通常最低禁固20年の罪に相当します」
「今後、被告が刑務所での服役を望まない場合は、他人に危害を加えないと担当医師が判断するまで、入院と治療が義務づけられます。また被告には今後、バターフィールド家との一切の接触を禁止します」
「ジェイド・・・・」
デヴィッドは肩を落とし、その場を後にしました。
次回
『エンドレス・ラブ』幻影⑭