前回
⑥ニートクリスマス番外編 恋のハッピーデート
「今度出るゲーム、生産とかも出来るんだって」
「生産もあるのかー」
「でも、ゲーム機のだろ?」
「うん」
「俺、まだそのメーカーの持ってないや」
彼女は今度新しくオンラインゲームが発売されることを俺に話して来た。私的なことは俺のほうから話すことが多く、ゲーム上の悩み、特にオンラインゲームの人間関係の悩みを俺は彼女に話していた。彼女は俺の私的なことに「気にしない」「気にしない」となだめる日々が続いていた。
「今より金額も安いみたい」
「へえー」
「キッズタイムもあってその時間は無料でできるみたい」
「そんなのもあるんだ」
彼女は今度発売されるオンラインゲームのことを楽しそうに話していた。彼女が私的なことを俺に話すのは初めてのことだった。
石野真子 フォギーレイン
俺はその後、両親が経営する仕事を手伝うことで収入を手に入れることを考えた。しかし、父親も母親が営む経費を工場のバイト収入で補っていることもあり、俺の分の手当はないと考え、まず先に俺が加わることで融資してもらうことを考えた。
赤旗を配達していた友人の中卒野郎から、中小個人経営者向けの商工組合があると聞き、そこから融資してもらえるか?相談に行った。
「家族で運営してるんですね」
「はい」
「父親はもう時期、年金生活になります」
「その後は、年金を貰いながら運営は続けるんですか?」
「おそらくそうなると思いますが」
「経営状況はどうなのですか?」
「父親が工場でバイトをしながら母親と運営しています」
「そこにあなた、息子さんが加わるんですか?」
「はい」
「それで、その前に融資していただけないかと思いまして」
「どうしてです?」
「両親の負担もありますから」
「うーん」
「まずは、書類にあなたのご両親が経営している売り上げ等、収支の状況を明記して見せてもらえますか?」
「はい」
「その報告書を見て、こちらでご融資いたします」
俺は家に帰り、両親から経営状況を教えてもらい、文書に書き、再び商工組合を訪ねた。
「仕入れ代のほとんどがお父様のバイト収入からの金額になってますね」
「売り上げと利益の一部でご生活なされてるんですか?」
「これを見るとそうですね」
「お父様が年金受給されても今の状態は続きそうですね」
「なんか、それがあたりまえのように進んでて」
「あなたが入ることで売り上げを増やそうと思ってるんですか?」
「はい」
「この状況で融資もできますが」
「それから返済がなされたとしても、返済額であなたの生活収入がない形になりそうですね」
俺はその場でしばらく考え、融資は保留することにした。
「へえー」
「商工組合から融資しなかったんだ」
「商品売って手当にするよ」
「融資はそれからでもいいだろ」
「アララギに車返さなきゃ」
「弟がカノの車に乗ってるんだろ?」
「弟は軽トラでもいいよ」
「弟も軽トラで走ってるより普通車のほうがいいだろ」
「若いんだから」
「弟の気持ちもわかるぜ、若いのに軽トラで通勤とか」
カノの家は農家で、農業作業用の軽トラックが置いてあった。
「別に俺んちも営業車があるから」
「それでセールスして歩けばいいし」
「そのまま使っててもいいぜ」
「いいの?」
「いいよ、どうせちょくちょく来るんだろ?」
「その時はどっかに遊びに行こうぜ」
「ありがと」
その後、両親が営む職場から出された商品をセールスをする日雇い労働を始めた。日雇い労働の暮らしの最中、営業車で走行中に赤信号を無視した車両と衝突し、俺は病院に送られてしまった。
病室にクドウとカノが見舞いに来てくれた。
「大丈夫?」
「見ての通りだ」
その後もカノはちょくちょく病室に現れ。
カノは俺の車を運転し、俺のところに見舞いに来る日々が続いた。
続く
次回
⑧ニートクリスマス番外編 彼が初恋