ほんの数年間だけだが志賀直哉と同じ時代をわたしは生きていたことに、その年譜を見ながら気づいた。意外な気がした。この高名な作家の作品をついにわたしは読まずに今まで来てしまい、その存在も時間も遠いと思い込んでいた。数年前に観た入江泰吉の作品展に、須田剋太、杉本健吉の作品、そして海雲の書「いつか死ぬことを知りつつ生きており」が展示されていたことも、今この文庫本に挿入されている昭和21年、志賀が東大寺海雲宅を訪れた際の写真をみて、改めて思い出し「天平の会」ということで、なるほどつながったのだ。茶論の方で休憩することはあっても高畑に今も残る志賀直哉邸にはついに訪れることがなかったのが、作品を初めて読んで今更に悔やまれる。
ふとしたことで『清兵衛と瓢箪』のお話を紹介していただいた。それがきっかけで、もしかしたら出会うことがないままに過ぎたかもしれない志賀直哉の本を手に取ることができた。
『清兵衛と瓢箪 小僧の神様』(志賀直哉著・新潮文庫)
ふとしたことで『清兵衛と瓢箪』のお話を紹介していただいた。それがきっかけで、もしかしたら出会うことがないままに過ぎたかもしれない志賀直哉の本を手に取ることができた。

