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映画のこと、本のこと、おもったこと。

中吊り広告

2006-08-20 05:00:12 | よむ
隣に座る人の新聞を横目読みするのも好きだけど、
電車の中で、雑誌の中吊り広告を見るのが好きだ。
ほぅと興味をひかれたり、ふぅんと興味をひかれなかったり、まさか!と思うものは、たいてい苦笑させられたりして、楽しい時間だけれど購買行動に直結させられるものは、そうは無い。

ところが珍しいことに、
そういえば芥川賞かと、ふぅん、の部類に入るはずだったのに、文芸春秋の今月の広告が目に留まった電車を降りて、すぐ、この雑誌を購入してしまっていた。
今更ながらだけど、キャッチコピーというのは、実に上手く出来ていると感心してしまう。

受賞作『八月の路上に捨てる』は
「格差社会」「底辺」「離婚」「フリーター文学」というキーワードによって広告されていて、そのキーワードは、振り返ってみればほぼ10年毎にに2,3作しか芥川賞作品を読んでこない私に、購買行動を促す力があった。

まんまと、といえば、まぁまんまとだけど、
読まない、買わない人が、つい、読んじゃった、こうてしまった、というように、人に変化を起こさせる言葉というのは、見事だ。

ところで、このように、
読んで即、行動化につながるという即効性を小説に求めることは、あたりまえに無い。
そんな限定された時代の最大公約数的なキーワードなど凌駕するもの、日常は何も変わらないかもしれない、けれど、あたりまえだったものが、ぐらり、と崩される世界が言葉で構成されているから、小説なのだとわたしは思っていた。