みたり*よんだり*きいたり*ぼぉっとしたり

映画のこと、本のこと、おもったこと。

新宿末広亭

2007-10-05 12:45:12 | きく
久しぶりに落語。
ついこの前だと思っていたのに、
前回、寄席に行ったのは去年の11月、浅草演芸ホール。こぶ平時代のお話を聞いた時に鳥肌がたった記憶が今だ鮮烈な襲名後の正蔵さんのお話と聞くたびに何となく色気があって鮮やかで見事と思える小朝さんの出演を目当てに出かけたのだ。ところが、この日の舞台は進行にひどく緊迫感があり落語に疎いわたしは事情がよく飲み込めないでいたが、実は林家こん平さんの舞台挨拶があり何というかその会場全体を「人情」というようなものが濃い空気になって満たしていたような稀な場面に遭遇することができたのだった。

それで、久しぶりの末広亭。
ここは小沢昭一さんのお話が聞きたくて、ヒールからスニーカーに履き替えて駆けつけて以来。
なんだか、ぼぉ~っとしながら笑いたかった。
桂歌春さん(だったと思うたしか・・・)の自殺作家ネタのお話は印象的だったな。

「ある人の中のある言葉の意味の了解は、その人が生れ落ちてからその言葉に接してきたタッチポイントの総体で決まっている。」(茂木健一郎著『脳と仮想』新潮文庫P.196 L11)

三島由紀夫自決の報道に接したのはその事件性を理解できるには程遠い年頃だったが、その時の親の反応の大きさに尋常ではないものを感じたのだった。かろうじてそういう下地を持って後年三島由紀夫という固有名詞が私の中に定着した。
この日の末広亭は、お客さんの年齢の幅が広がり若い層が増えていて、会場内はなやかな笑い声が響く。
噺家の発した例えば三島由紀夫という名前を私はほぼその固有名詞として受け取っているのかしら・・?固有名詞はいとも簡単に各人の中で普通名詞に変換されうる。
ある共通の前提がなければ、話して聞いて笑うということすら成立しないんだ・・・。