みたり*よんだり*きいたり*ぼぉっとしたり

映画のこと、本のこと、おもったこと。

吉田修一とアニー・エルノー

2007-10-10 01:20:02 | よむ
小池真理子の対談集を読んでいて、
興味を持った二人。
吉田修一は写真に写っていた姿かたちが良かった。
アニー・エルノーはお話が非常に面白かった。

吉田修一の『悪人』を読みたかったけどその前に『女たちは二度遊ぶ』を読み、
続けて、アニーエルノー『シンプルな情熱』を読んだ。

アニー・エルノーは対談でもそうだったけど発言のひとつひとつに爆弾並みの破壊力があるのにいっさい力みが感じられず、なんともスマートにさらりとした印象。それは『シンプルな情熱』の印象にそのまま通じる。”PASSION SIMPLE”・・PASSIONに囚われた人間がどうなるか、あまりに個人的な告白の文体をとりながら、(おそらく誰もが少なくともわたしは)共感というレベルを超えて我が身に覚えがありすぎて客観的に読めなくなるところに恐るべし作家の客観性がある。

「その人を待つ時間」を味わいきることだけを選択する生活、脆弱なわたしはそんな苦しくて怖い状態には持ちこたえられるわけがなくて、針がそちらに傾きそうになると慌てて気持ちを逸らすことばかりに専念する。
みっともなくて馬鹿げていてどうしようもなくて不毛なことだらけにうつつを抜かしきれるって、なんて強くて豊かなんだろうと思いはするけれど。ど。ど。ど。ど。

『シンプルな情熱』アニー・エルノー 堀茂樹訳 早川書房

『女たちは二度遊ぶ』は短編集。
腹を空かせて俺を待つ女に自分の存在価値を見出して、そしてこれでもかとそれを確認したがるから大事なものを大事にできなかった俺を描いた『どしゃぶりの女』が良かった。ちょっと”説明”が多すぎる気がしたけど。